カシージャスとメッシを追いつめたもの 理不尽な批判と失って気付くその偉大さ
レアル・マドリーに別れを告げたカシージャス
カシージャスは15年間もゴールマウスを守り続けてきたレアル・マドリーに別れを告げた 【写真:ロイター/アフロ】
彼らが置かれている状況はいずれも理不尽なものだ。カシージャスが退団を決意するに至った要因は、プレーの善し悪し以上にピッチの外にあった。一方、メッシのそれはアルゼンチンフットボール協会(AFA)の強化方針の欠如や代表チームのプレーシステムに対する不満が何年も蓄積されてきた結果であり、その大半はフットボールの内容に関わるものだ。
すべてを勝ち獲るも、近年は批判が続く
退団セレモニーではこれまで勝ち獲ってきた多くのトロフィーに囲まれた 【写真:ロイター/アフロ】
だが彼が築いてきた輝かしいキャリアも、これまで実現してきた偉大なるセーブの数々もすべて、一部のマドリディスタ(レアル・マドリーのサポーター)たちにとっては永遠の記憶とはなり得なかった。ジョゼ・モウリーニョがサンティアゴ・ベルナベウのロッカールームにやって来たというだけで、それらの功績はすべて人々の脳裏から消えてしまったのだ。そして自身の好守によってレアル・マドリーに無数の勝利をもたらしてきたカシージャスは、まるで経験が浅い役立たずの選手であるかのように、不当な批判を浴びる対象に成り下がってしまった。
有名なテレビレポーターを恋人に持つこともあり、カシージャスはチームの内情をメディアにリークする“スパイ”であるとモウリーニョから疑われていた。その影響により、彼はボールを持つたびにモウリーニョ支持派の一部ファンからブーイングを受けるようになった。その状況は2年前にモウリーニョがクラブを去った後も変わることなく、遂には何人かのチームメートとの関係まで悪化させる事態までもたらした。
2、3年前から退団のうわさが絶えなかったカシージャスは、この夏とうとう移籍することを決意した(それにしても、新天地がモウリーニョの古巣であるポルトになるとは皮肉な話である)。同時にレアル・マドリーは、2000年以降初めてゴールマウスの守護者を変えることになる。だが新たに正GKを務める選手にとって、これだけの功績を残してきた前任者の後を継ぐのは簡単ではない。一方、クラブを去ったイケルは今後ようやく相応しい評価を受けることになるだろう。