FC東京U−14がベルリンで得た財産 CL決勝の地で行われた国際親善イベント

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3回目となるフットボールフォーフレンドシップ

ドイツ・ベルリンで行われたフットボールフォーフレンドシップの開会式に臨むFC東京の選手たち 【スポーツナビ】

 6月5日から7日にかけて、ドイツ・ベルリンで国際親善青少年サッカーイベント「フットボールフォーフレンドシップ」が開催され、日本からはFC東京U−15の「深川」と「むさし」の2つのチームから選抜された11名の特別編成チーム、FC東京U−14が大会に臨み、24チーム中ベスト4の成績を残した。

 今年で3年目を迎える「フットボールフォーフレンドシップ」はチャンピオンズリーグ(CL)のオフィシャルスポンサーである世界最大のガス事業会社であるガスプロム社が主催し、毎年CL決勝の地を回る国際サッカーイベント。今年は欧州とアジアの12〜14歳のチームを対象に実施し、サッカーの振興、スポーツと健康的なライフスタイルの普及、忍耐力の向上、世界中の子どもたちの友情を深めることを目的としている。そのため、このイベントは通常の国際サッカー大会とは一線を画している。その理由は、選手・スタッフたちに向けたイベントの多様さが物語っている。サッカー大会に加え、都市(今回はベルリン)の歴史的名所を巡るバスツアーや、他国チームとの交流プログラム、CL決勝の観戦や、有名サッカー選手や元選手のトークイベントなども含まれており、さまざまな角度から“世界”を身近に感じられる体験が多く用意されているのだ。

 ガスプロムのこの大会への力の入れようはものすごい。2013年に8カ国からスタートしたイベントは3年で3倍の24カ国が参加するまでにスケールアップ。今回はドイツ、スペイン、イングランドなどをはじめとするUEFA加盟諸国のみならず、アジアからも日本と中国を招待した。大会に招待された全24チームの選手・スタッフの渡航費、現地での交通費、食事から宿泊に及ぶすべての面をサポート。さらにCLオフィシャルスポンサーということもあり、CLファイナルのオリジナルノベルティーを全選手・スタッフへプレゼント。オリジナルのロゴが入った、大きなボストンバックやキーホルダー、CL決勝観戦用のマフラーまで全員に配布したというから驚きだ。試合会場ではドリンクや軽食だけではなく、エネルギー補充のためにバナナや洋梨、エネルギー系飲料も用意されていた。

FC東京の本気度

グループリーグで同じ組になった選手たちと笑顔で記念撮影を行った 【スポーツナビ】

 イベントに招待されたFC東京のメンバーは海外でのプレーどころか、飛行機すら初めての選手が大半を占めた。さらに、大会の規定には12歳〜14歳の選手であることが定められており、必然的に中学2年生以下の選手が対象となる。「(ジュニアユースの)トップチームで中心核として活躍している選手は関東リーグ真っ最中のため呼ばなかった。2年生と1年生の有望選手と、大会がハードであることを考えて、体格的に勝る選手をバランスを見ながら選んだ」とFC東京の福井哲育成部長。1年生と2年生が混成の11名で大会へと臨んだ。

 イベント初日に行われたストリートサッカートーナメントには、シャルケ04(ドイツ)やラツィオ(イタリア)、アトレティコ・マドリー(スペイン)、チェルシー(イングランド)といった欧州の強豪チームや、アジアからは中国の特別編成チームが出場。7人制の16分1本勝負で争われ、1日目には予選リーグと準決勝までの決勝トーナメントが行われた。当日の朝に行われた抽選会でFC東京はブダペストFC(ハンガリー)とアトレティコ・マドリー(スペイン)のグループに入る。すると選手たちは皆一様にうれしそうな顔で「アトレティコとやれる! うれしい!」と興奮していた。しかし、そこに意外な情報が飛び込んできた。それは初戦の相手、ブダペストFCが優勝候補であるということ。福井部長が選手たちにその情報を伝えると、一気に顔が引き締まる。選手たちのこの大会に臨む“本気度”がうかがえたシーンであった。

欧州でのイメージを払拭した“TOKYO”

FC東京は多くのギャラリーに囲まれながら勝利を重ねていった 【スポーツナビ】

 そんなFC東京の結果は前記したようにベスト4。優勝候補ということで警戒して臨んだブダペストFCとの初戦は、立ち上がりこそ少し硬くボールが落ち着かない試合展開だったものの、6分に須藤和希が大会初ゴールを挙げるとマイボールの時間が増えていく。そこからはセカンドボールの奪い合いでも激しくファイトしながら追加点を重ね、危なげなく4−0で勝利を収めた。続くアトレティコ・マドリー戦も2−1の逆転勝利を収めると、決勝トーナメント1回戦ではスロバキアのFCスロバンを相手に延長戦の末5−2で粘り勝ち。準決勝進出を決めた。

 決勝進出を争う相手はオーストリアのラピード・ウィーン。ラツィオやロシアの強豪FCゼニトを下して勝ち進んできており、帯同していた福井部長が「よくトレーニングされた良いチーム」と舌を巻いていたチーム。選手一人ひとりの個の力に加え、オーガナイズされたスピード感溢れるゲーム展開を見せつけられ、開始10分までに5ゴールを奪われた。FC東京も試合終盤に須藤が連続ゴールを挙げ3−5と詰め寄るも時すでに遅し。ベスト4で大会を終えた。

 この結果は、欧州の名だたるチーム関係者たちにとって少なからぬ驚きを与えたようだった。“TOKYO”を名乗るチームが勝利を重ねるたびに、コートの周りにはギャラリーが増えていく。アトレティコ・マドリーのジュリアン監督が「正直言ってここまでやるとは思っていなかった」と話したことからも分かるように、FC東京は完全に大会のダークホースとなった。

「日本のチームはテクニックにおいてももっと幼稚だと思っていた。しかし、FC東京はテクニックがあり、非常に落ち着いたプレーを見せる。ハードワークもするし、集中力もある。組織としてもオーガナイズされていて驚かされたよ。悪いところが見当たらない」(ジュリアン監督)

 FC東京が勝利を重ねることによって、良い意味で欧州における日本のイメージが払拭されていったことは間違いなかった。

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