FC東京U−14がベルリンで得た財産 CL決勝の地で行われた国際親善イベント
群を抜く実力で優勝したオーストリア
CL決勝のイベント会場に特設されたコートではラピード・ウィーン対FCチューリッヒによる決勝戦が行われた 【スポーツナビ】
試合は準決勝でFC東京を破ったオーストリアのラピード・ウィーンが5−2の圧勝。準優勝のFCチューリッヒ(スイス)は、女性のGKが好守を連発するも、組織力と個の力を兼ね備えたラピード・ウィーンの敵ではなかったようだ。
観戦後、選手たちはベルリン・オリンピアシュタディオンへ移動。バルセロナとユベントスによるCL決勝を目の当たりにし、興奮冷めやらぬまま翌日帰国の途についた。
日本に欠ける考える力
「考える力が少し幼い」と海外選手との違いを話した福井部長 【スポーツナビ】
しかし、大会を通したチームの戦いぶりは福井部長の目にこう映ったと言う。
「客観的に言うと、海外の同じ年代の子どもたちに比べて幼い。それはプレー面でも人間性の面でも。一言で言うと自立していない。日本を引きずるから、団体であるがゆえに安心感がある。常に団体であっても一人で行動しているような状況判断だったり、考える力が少し幼い。それはサッカーにも通じてくる。
今回の7対7もミニゲームではなくて、サッカーのゴール前のアタッキングサードを切り抜いたゲーム。GKがシュートを打っても入るような距離なんだから、ボールを持った瞬間にシュートを打てる時間とスペースがあったらためらいなく打たなければいけない。このゲームのオーガナイズがどういうルールでできているのか、というのを考えた上で試合をスタートできるかというのが重要なんです。そういう考える力というのはちょっと足りないと思います。
それが欧州の選手は違ってくる。欧州のトレーニングはウォーミングアップの次にだいたいシュート練習があって、7対7などでの今回の大会のようなゴール前の攻防があって、ポゼッションの練習がある。でも日本は一番最初にポゼッションの練習があって、次にゴール前の練習があって、一番最後にシュート練習。日本の練習はサッカーの本質からちょっと遠ざかっている。ボールをつなぐことが目的ではなくて、ゴールを奪うことが目的なんです。それはうちだけでなく、日本全体に言えることだと思います」
この上なく貴重な気付きの場
FC東京U−14は試合のみならずさまざまな経験をフットボールフォーフレンドシップで積んだ 【スポーツナビ】
しかし、通用する部分があったことも確か。福井部長が「精神的な幼さもあるが、身体的な幼さもある。今回の大会でも圧倒的に体格や体力はわれわれよりも上回っていた」と話したとおり、明らかに日本の選手たちは身体的に劣っていた。だが、ベスト4の結果である。小林里駆も「日本とは違う体格の選手がいっぱいいて、自分は体がそこまで大きくないのでつぶされるか心配だったのですが、うまく体を使ってボールを運んだりできたので良かったと思います」と振り返ると、森田慎吾も「海外の選手はフィジカルやスピードの部分では僕たちを上回っていたけれど、チームの団結力は日本のチームのほうが良かった」とコメント。自分たちの弱点と武器を改めて知ることができる気付きの機会となったことは、大会に出場した一番の収穫と言えるのではないだろうか。
こういった気付きの場がまだまだ少ないことが島国日本の課題の一つ。それを福井部長に尋ねると、日本の育成年代の成長に欠かせない需要な要素をもう一つ教えてくれた。それは“親”の姿勢について。
「この子たちはFC東京に入ることが目的になっている。それは親も含めてです。『もっと競争させてほしい』というのはよく選手たちの親御さんに言わせてもらっています。スタートラインは一緒ではない。競争が考える力を高めていくんです」
大会のグローバルアンバサダーであるベッケンバウアーはフットボールフォーフレンドシップの意義をこう語っていた。「大会に参加した少年少女たちはお互いを尊敬する心、平等、健康な生活を普及させていく」と。ピッチ内外でのさまざまな国際交流は、「競争意識」を生み出し、「考える力」を与えてくれるきっかけとなった。FC東京の若き選手たちに多くの貴重な経験を与えたフットボールフォーフレンドシップ。今後彼らにとって大きな財産となる遠征であったに間違いない。
(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)