小林可夢偉が感じたモナコGPとの違い=ル・マンの風 現地レポートVol.5
「ファンの立場を考えた素晴らしいレース」
朝食時にコメントしてくれた小林可夢偉。今回はトヨタのリザーブドライバーとしてチームに帯同する 【田口浩次】
予選2日目は、2回目の予選が赤旗によって途中で時間を短縮して終了し、予選3回目が2時間半へと30分延長する形で開始されるなど波乱もあったが、最終的に予選2日目でのタイムを上位陣がさらに縮めることはなく、ポルシェは予選トップ3を独占。アウディの3台が続き、日本勢ではトヨタが7位と8位につけ、日産は12位、13位、そして15位につけた。この後、12日はドライバーズパレードがフランスのル・マン市内で開催され、レースは13日午後3時(日本時間午後10時)に決勝スタートを迎える。
さて、そんなル・マン24時間レースに、ドライバーはどのような印象を持っているのだろうか。今年、トヨタのリザーブドライバーとしてチームに帯同し、自身は13年にイタリア・フェラーリのチームからGTEクラスで参戦していた小林可夢偉が興味深いコメントをしてくれた。
「やはりすごい大きなイベントで、1年に1回、チームやドライバーの多くが、このレースに懸けているところがあると思います。同じ伝統あるレースのF1モナコGPよりも、正直価値があるんじゃないかと思う部分があります。なんて言えばいいのか、観客の立場として、モナコGPは少しミーハーというか、見栄をはってまで見に来ている人がいる雰囲気がありますが、ル・マンはそうした部分じゃなく、少しのお金でも十分楽しめる。ドライバーとしては、僕は13年にGTEクラスで出場して、成績もたいしたことなかったですが、24時間を走りきって本当にうれしかった。良い成績じゃなくても、走りきったことを楽しめたのは初めての経験でした。そういう伝統がル・マンには根付いていて、僕はモナコGPより価値があるんじゃないかな、と感じました。
そして、このレースを見に来ている観客の皆さんも、レースが本当に好きで、先ほども言いましたが、モナコGPのようにお金をかけなくても、少しのお金でこんなに楽しめて、こんなにドライバーの近くまで来ることはF1では考えられない。F1がこの先つぶれるようなことがあっても、ル・マンがつぶれることはないでしょう。そう思えるほど、ファンの立場をしっかりと考えた素晴らしいレースだと思います」
“おもてなしの精神”を感じる運営姿勢
同じ学校の友人同士という男性ファン。キャンプを選択したのは「深夜に帰る苦労より、キャンプ場で喋って飲んで寝た方が楽しいから」と力説してくれた 【田口浩次】
2日目の予選開始前、サーキットの外へ出ると、メインゲートに向かうファンが続々と歩いていた 【田口浩次】
また、老人やハンディキャップを持つ方にも楽しんでもらえるよう、敷地内にはそうした方のための移動手段としてカートが走っていて、それを待つ停留所が数多くある。まさに、日本が東京五輪で目指している“おもてなしの精神”が随所に感じられ、それが押し付けではなく、あくまでも個人の自由をサポートする形で成り立っている。小林可夢偉が例えた「F1がこの先つぶれるようなことがあっても、ル・マンがつぶれることはないでしょう」という言葉の意味が感じられる素晴らしい運営姿勢だ。
さて、現地は12日金曜日のドライバーズパレードを迎える。再びル・マン市内に戻り、お祭り本番を迎える雰囲気を伝えていきたい。
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