ワウリンカが見せた冷静な戦術展開 “日陰の存在”だった30歳が全仏初V
ワウリンカが全仏初優勝。2014年の全豪に続きグランドスラム2度目のタイトルを手にした 【写真:ロイター/アフロ】
決勝にふさわしい見応えある戦い
ジョコビッチは左右どちらの守りも鉄壁で粘り強く、即座に攻守を切り替える機敏さを持っている。一方のワウリンカは同じスイス出身のフェデラーと同じ片手打ちバックハンドで多彩なショットを持っているが、フェデラーの緻密さに対して豪快さが特徴。
そんなワウリンカを相手に、ジョコビッチはフォアに比べてパワーの劣るバックサイドを執拗(しつよう)に攻めた。対するワウリンカはクロスコートでじっくりと応戦し、長いラリーから相手を前におびき出して得意のダウンザラインに切り返していく。
第2セットに入ってウイナー数がジョコビッチの6に対しワウリンカは16とエンジンが掛かり、窮地に陥っても平均時速189キロのファーストサーブでクリアした。圧巻は第7、第8ゲームの攻防。第7ゲームはジョコビッチが40−0からデュースに持ち込み、第8ゲームには連続ドロップショットを沈めて追い詰めた。ワウリンカが必死にそこを押し戻し、逆に第10ゲーム、勝負に出た。0−30からバックハンドのパス、フォアハンドの深いショットをダウンザラインにたたきこんでブレークに成功、セットを奪い返した。
落ち着きがあったワウリンカ
第3セットを終わった段階で、ワウリンカのウイナーが43に対し、ジョコビッチは半分以下の20。勢いは確かにワウリンカのものだったが、ジョコビッチは5セットの長丁場で24勝8敗の高い勝率を持っており、まして今シーズン、クレーコートでは16勝の負けなし。グランドスラムの決勝は16度目、全仏は昨年に続いて3度目の舞台で慣れもある。
ジョコビッチはわずかな隙を突いて第4セットの第2ゲームをブレークし、ゲームカウントを3−0としたが、ワウリンカには落ち着きがあった。強打の応酬にバックハンドのスライスをうまく混ぜ、ペースを変えながらチャンスを引き寄せる冷静さで第5ゲームをブレークバック。たびたび繰り出すドロップショットにうまく反応されるようになると、さすがのジョコビッチも動揺したのだろう。第9ゲームにセカンドサーブからサーブ&ボレーに出て墓穴を掘り、バックハンド・パスを打ち込まれてブレークされた。
それにしても、最後まで勝敗の行方が分からなかった。ワウリンカがゲームカウント5−4とリードし、サーブに立った第10ゲーム、最初のマッチポイントでのファーストサーブがセンターを突き抜けた。フォルトのジャッジを、主審が確認する際どい一打。直後、ジョコビッチがセカンドサーブからポイントを奪った時、再逆転を予感したファンは多いだろう。実際に、そこからブレークポイントもあったが、2度目のマッチポイントで勝利を決めた。最後もバックハンドの深いウイナーだった。
円熟の大会に相応しい、味のある幕切れ
熱戦を見せたジョコビッチ(右)にも観客から温かい拍手が送られた 【写真:ロイター/アフロ】
フェデラーのいるスイスで、ワウリンカは長いこと日陰の存在だった。トップ10に入って全豪オープンで優勝したのは28歳。そして30歳でフェデラー、ジョコビッチを倒して、全仏のタイトルをつかんだ。心に秘めてきた決意が冷静な戦術展開を呼んだのだろう。30代プレーヤーの多かった円熟の大会にふさわしい、味のある幕切れだった。
(文:武田薫)
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