ユーベを凌駕したバルサのプレースピード MSNが試合を決めて3冠対決を制す
イタリア王者のウイークポイントを突く先制点
両チームとも3冠の懸かった試合は3−1でバルセロナが勝利。4季ぶり5度目のCL制覇を成し遂げた 【写真:ロイター/アフロ】
ユベントスのシステムは、トップ下にビダルを置き、中盤がひし形となる「4−4−2」。中盤の横幅を、ひし形の3列でカバーするため、対戦相手の両サイドバック(SB)がフリーになりやすい。今回のバルセロナでいえば、右のアウベスと、左のアルバだ。
前半4分の先制ゴールは、まさにこのポジションが起点となった。右サイドでボールを持ったリオネル・メッシが、ピッチを斜めに横切るサイドチェンジのパスを通すと、フリーで走り込んだのは、左サイドバックのアルバだ。対峙(たいじ)したユベントスのSB、ステファン・リヒトシュタイナーに対しては、ネイマールとともに2対1でサイドに数的優位がある。イタリア王者のウイークポイントだった。
それをカバーするために、DFアンドレア・バルザーリ、MFクラウディオ・マルキージオがサイドへ引き出されたことで、今度は中央がガラガラになり、そのスペースを素早く察知したアンドレス・イニエスタの侵入から、最後はイバン・ラキティッチがゴールを挙げた。
可変システムで重要なビダルの役割
ユベントスの鍵を握ったビダル(左)。豊富な運動量で攻守に躍動した 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】
そこで鍵を握るのが、トップ下のビダルだ。守備時にはポジションがかみ合うセルヒオ・ブスケッツをマークしつつ、自陣に引く際には、ボランチのラインに下がる。それにより、ポール・ポグバ、アンドレア・ピルロ、ビダル、マルキージオのMF4人が並び、中盤がフラットの「4−4−2」へ変形。横幅を3列で守っていたのが、4列になるため、ポグバやマルキージオは、両サイドのスペースに対応できる。ビダル個人にかなりの運動量が求められるが、ユベントスはこのチリ代表MFをシステムの鍵として、柔軟に状況に合わせる「4−4−2」をすでに完成させていた。
この守備方法から、高い位置へ出てきたアウベスやアルバの裏を、2トップのカルロス・テベスやアルバロ・モラタが突き、ビダル、マルキージオ、ポグバが豊富な運動量でサポートし、カウンターを仕掛ける。前半8分、19分には、まさにその形からチャンスメーク。ユベントスのゲームプランは明確であり、よく設計されていた。
あらゆる“スピード”で一歩先へ行く
ラキティッチ(中央)が先制点を挙げた場面では、バルセロナのあらゆるスピードがユベントスの可変システムを上回った 【写真:ロイター/アフロ】
ところが、ここでネックになったのは、ビダルの変形にかかる、わずかな時間だった。本来ならば、イニエスタの侵入に対しては、ボランチのラインに下がるビダルが対応できるのだが、この場面では、当初ブスケッツをマークしていたビダルのプレスバックが遅れている。つまり、ビダルのポジション修正にかかる時間を、バルセロナのプレースピードが凌駕(りょうが)しているのだ。
コンパクトなキックモーションで繰り出される、メッシのサイドチェンジ。それをワンタッチで折り返すアルバ。バルザーリが空けたスペースを、いち早く察知するイニエスタの認知スピード。ありとあらゆる“スピード”が、ユベントスの可変システムを凌駕した。開始早々であったため、ユベントスがバルセロナのプレースピードに慣れていなかったことも、大きな要因に違いない。
スペイン王者とイタリア王者の頂上決戦は、世界最高峰のプレースピードを見せつけたバルセロナが、一歩先へ行く。