ユーベを凌駕したバルサのプレースピード MSNが試合を決めて3冠対決を制す

清水英斗

守備の連係不足を突いた同点ゴール

守備の連係不足を突き、リヒトシュタイナー(左)がボールを奪うと、最後はモラタが同点ゴールを挙げた 【写真:ロイター/アフロ】

 バルセロナのプレースピードにも徐々に慣れてきたユベントスは、先制ゴールという手痛い授業料を払いつつも、0−1のままで後半を迎えることができた。そして間もなく、狙っていたカウンターが結実することに。

 後半10分、敵陣のスローインに高い位置からプレッシャーをかけ、アウベスにクリア気味のボールを蹴らせると、リヒトシュタイナーがネイマールからボールを奪う。すぐに前方へ飛び出すと、マルキージオのヒールパスから、アルバの背後を陥れた。そして、この折り返しをテベスが反転シュート、さらにこぼれ球をモラタが押し込み、ユベントスは1−1の同点に追いつく。

 MSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)が守備をしている、と言っても、それは前向きにボールを追う場面がほとんど。たとえば受け身に回った自陣の2対2で、MSNがどれだけ働いてくれるかといえば、それはアリバイ程度にしかならない。局面的には、ネイマールとアルバは、マルキージオとリヒトシュタイナーに対して2対2になっていたが、連係した守備ができなかった。MSNと後方の守備連係不足を突くユベントスの攻撃が、功を奏した格好だ。

MSNが見せたカウンターの破壊力

試合を決めたのはやはりMSNの3人(左からスアレス、メッシ、ネイマール)だった 【写真:ロイター/アフロ】

 しかし……。最終的に試合を決めたのも、MSNだった。後半23分、徐々に試合のリズムをつかんでいたことが仇(あだ)になったのか、4人が攻め残ったユベントスは、バルセロナのカウンターを浴びる。ボールを拾ったラキティッチから、メッシがボールを受けると、ペナルティーエリア手前から、切れ味鋭いドリブルシュート。そこへ予測して詰めたスアレスがこぼれ球を押し込む。このカウンターの破壊力が、今季のバルセロナの恐ろしいところだ。組織的なオリジナリティーは乏しいが、バランスが良くて、戦い方に幅があるので研究しづらい。

 見事な決勝点を挙げたバルセロナは、最終的に3−1で勝利し、3冠を成し遂げた。

 終わってみれば、驚きの少ない決勝戦ではあった。試合の終盤、バルセロナは追加点を取るよりも、時間を稼いで、そのまま1点差で試合をクローズさせる意識が強かった。たとえば、08−09(2−0)、10−11(3−1)シーズンのバルセロナのCL決勝は、2試合とも対戦したマンチェスター・ユナイテッドに対して、もっと余裕のパス回しで優雅に試合を終わらせ、鼻につくほどの“圧倒感”を残したものだが、今回はそのような決勝とは異なる。

 それもこれも、ドリームチームを、やや普通のリアルチームに変えた、ルイス・エンリケ監督の性格が表れているのか。あるいは、どんな相手にも必ず接戦を演じてみせるのは、イタリア王者たる所以(ゆえん)なのか。

 いずれにせよ、勝ちたいという双方の熱がひしひしと伝わる試合だった。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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