ACLで7勝、柏はなぜ韓国勢に強いのか ベスト8進出も喜べないJでの悔しい現実

大島和人

Jリーグでは暫定14位と苦戦

Jリーグでは苦戦が続く。連戦でコンディション調整に追われ、吉田達磨監督(左)の新スタイルを植え付ける時間がなかった 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 実は柏からすると韓国勢といい戦いができていることを、あまり喜んでもいられない。主戦場であるJリーグで十分な成績を残せていないという、悔しい現実があるからだ。ただそれは単純にJリーグがACLと同様か、それ以上に厳しい舞台であるということ。振り返ればACLの序盤戦で浦和、ガンバ大阪、鹿島アントラーズが韓国勢に苦戦したことを証拠に“Jはレベルが低い”と嘆く方もいた。しかし、Jリーグは決して甘い舞台でない。

 大谷はJリーグの守備を攻略する難しさをこう説明する。

「ボールへのアプローチに関していえばJリーグの方が緩いかもしれないですけど、その後に自分たちが狙いたいスペースはカバーされている。ACLの方はボールへのアプローチが強いけれど、自分たちが次に狙いたいところは結構空いている」

 全員が狙いとするスペースを共有して次の次、その次を意識してボールを動かすのが吉田新監督のスタイルだ。しかしJリーグを見れば、その“スペースの読み合い”で、柏はまだ十分な優位を確保できていない。26日の水原戦でもそこは柏が苦しんだ部分で、大谷は試合後に反省を口にしている。

「自分と(小林)祐介に相手のボランチが常に来ていた。ここが来たら他のところが空くというところ(の準備)をやっていた中で、落ち着いてその先を見られなかったというのはチームとして反省しなければいけない」

 相手がどれだけ激しくプレスに来ても、ピッチのサイズは変わらず、必ずどこかにはスペースがある。正確な技術と判断、イメージの共有でそこを活用することができる。柏にとって目下の課題は皆が空いているスペースを察知し、そこを的確に使うという“サッカーの基本”そのものだ。

 とはいえ柏がJリーグで極端に悪い戦いをしているわけではないし、質と連携を高めていけば結果も伴っていくだろう。現実としてチームは始動してまだ4カ月足らず。連戦でコンディション調整に追われ、新スタイルを植え付けるための十分な時間がなかった。

 ACLの準々決勝は8月下旬(25日か26日)に第1戦が予定されている。3カ月という時間を経れば、良いにせよ悪いにせよチームは変化しているはずだ。負傷で戦線を離れたDF近藤直也も間もなく復帰する見込みだし、MF大津祐樹のコンディションも上がっているだろう。

 より進化した太陽王の戦いが、今から楽しみだ。

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著者プロフィール

1976年生まれ。生まれが横浜で育ちは埼玉。現在は東京都(神奈川県に非ず)町田市に在住している。サッカーは親にやらされたが好きになれず、Jリーグ開幕後に観戦者として魅力へ目覚めた。学生時代は渋谷の某放送局で海外スポーツのリサーチを担当し、留年するほどのめり込む。卒業後は堅気転向を志して某外資系損保などに勤務するも足を洗いきれず、2010年より球技ライターとしてメジャー活動を開始。

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