カップ麺をほんの少し健康的に食べる方法 管理栄養士おすすめ!コンビニ飯の選び方

田中夕子

【Getty Images】

 金欠時のランチや、時間がない時の晩ご飯。さまざまな場面でつい手が伸びてしまうカップ麺。中には「お酒を飲んだ後の締め」として活用している人もいるのではないでしょうか? 安価でお湯を入れればすぐに食べられる、とても手軽な食品ですが、あまり知られていない危険が潜んでいるのをご存じですか?

 管理栄養士の川端理香さんに聞く「管理栄養士おすすめ!コンビニ飯の選び方」。シリーズ8回目は「カップ麺はそのまま食べず、ちょっとの工夫でこんなに変わる!」をご紹介します。お湯を注いだらすぐ食べる、ではなく、ほんのひと手間加えるだけで得られる栄養素も大きく変わる。知っておくときっと得をする、カップ麺の食べ方をご紹介します。

1番の問題は「リンの取り過ぎ」

■リンの過剰摂取は、カルシウム吸収の妨げに!
 カップ麺は体に良くない。そんなイメージを持つ方は少なくないはずです。とはいえ一方では、値段も手ごろで、お湯を入れて数分待てば簡単に食べられることができるので、仕事の合間や時間がない時、1人暮らしで自炊の習慣がない人には重宝する食品です。

 そんなカップ麺愛好家の方々に知っておいてほしいこと。カップ麺が体に良くない、と言われる理由はいくつかあるのですが、その中でも一番の問題はリンの取り過ぎです。
 リンとは、レトルト食品や加工食品に食品添加物として使用されることが多く、糖質の代謝を高める一方で、摂取し過ぎるとカルシウムが吸収されなくなってしまうという問題点があります。日本人にとってカルシウム不足は永年の課題。ただでさえ普段の食事で十分な量を取れているとは言い難いカルシウムが、リンを過剰摂取することによって、より一層カルシウム不足を招く事態になります。

■最初のお湯は捨てましょう! 過剰摂取の防止策
 それでもカップ麺が食べたい、という人はどうすればいいのか。それは、極力リンを取らないように意識し、工夫することです。
 リンはインスタント麺に使用されているので、お湯を入れ、そのままスープを入れるのではなく、麺がほぐれたら一度そのお湯を捨てるだけでリンも一緒に流れていきます。カップの中に元からスープが入っていて、注いで食べるしか手段のないものは仕方がありませんが、麺とスープや具材が別包装されているものは、一度お湯を注いで、麺をほぐしてお湯を捨て、もう一度お湯とスープを足して食べる、というだけでリンの過剰摂取を防ぐことができるのです。

栄養素はほとんど摂取できません

■カップ麺には、多量の塩分、カロリー、脂質が……

 さらにカップ麺が「体に良くない」と言われる要素は、スープに含まれる多量の塩分と、カロリーと脂質の高さです。

 カップ麺の成分表を見てみれば、それは一目瞭然。中にはカップ麺1つで600kcalというものもあります。例えば1日の理想の摂取カロリーが1200kcalの女性の場合、想像するだけでも十分なほどのカロリーを取ってしまうのです。カップ麺はコンパクトなので、1個食べてもそれほどカロリーを摂取していないように思われますが、インスタント麺の中には一度油で揚げているものもあり、さらに、調味油を追加するものもあります。

 最近は具材に野菜を使うものも増えてきましたが、それでもまだ少なく、ほとんどのカップ麺が乾燥させたシーフード類や肉類、刻みねぎなどが少量入っているだけですので、エネルギー以外の栄養素はほとんど摂取できません。少し大げさに言うならば、太るためだけに食べる食品、と言っても過言ではないのです。

■選ぶならノンフライ麺、生麺タイプを

 もうすぐ夏。少しでも体を絞りたい、という人にはカップ麺は大敵。どうしても食べたいという時は、同じ味のものでもインスタント麺がノンフライのものや、生麺タイプのもの、さらには春雨が入ったスープ形式のものを代用するとカロリーはグッとセーブできます。

塩分、脂質の取り過ぎにも注意

■むくみや疲労感に関係する、塩分の取り過ぎ

 カロリー超過と同様に、取り過ぎが心配されるのは脂質と塩分です。普段からスポーツをする方々は、運動で汗をかくので多少の塩分は必要ですが、とはいえ取り過ぎるのはよくありません。カップ麺のスープを飲むならば、半分で十分過ぎる量の塩分が含まれています。塩分を取り過ぎると、腎臓に負担がかかり、むくみや疲労感が生じます。腎臓は水分を代謝する臓器です。ナトリウムと同時にカリウムを同じぐらい摂取すれば、余分なナトリウムを体外に排出してくれるのですが、野菜や海草類に含まれるカリウムをカップ麺だけで取るのは難しいです。

■「野菜」や「インスタントわかめ」を入れて改善を

 家でインスタント麺を食べる時には、具材に野菜をたくさん入れたり、カップ麺に少しインスタントのわかめなど海藻類を加えたりしてお湯をやや多めにする。こういったひと手間を加えるだけで、余分なものが外に出て、体内の流れはスムーズになるのです。

■花粉症、肥満の要因となる脂質量 体臭に影響説も

 体脂肪を気にする人は、カロリーだけでなく脂質の量も意識する必要があります。カップ麺の中に天ぷらやカレーが用いられているものは脂質が高い。加えてカップ麺の具材に使用されているものは酸化され、古くなっているため、あまり良い質とは言い難いです。酸化された油を摂取しすぎると、花粉症や肥満を招くだけでなく、体臭にも影響があるという報告もあります。カロリーだけでなく、脂質が高いものは選ばない習慣づけが大切です。

食べたい時は、“ほんのひと手間”を試してみて

 食べるな、食べないほうがいいと言われても、食べてしまう日もあるし、食べたい人もいる。それならば、「食べない」ではなく、「体に悪影響を及ぼすものは取らない」「過剰な分は排出する」という意識に変えること。

 カップ麺を食べる時はお湯を捨て、具材に野菜や海草を足し、野菜ジュースやヨーグルトと一緒に食べる。その“ほんのひと手間”が、大きな違いとなることを覚えておくとよいでしょう。

川端理香プロフィール

管理栄養士。元日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフ。スポーツ栄養Watsonia代表(http://kawabatarika.com/index.php)。Jリーグチームや選手、プロ野球、ゴルフ、柔道選手などのサポートをし、日本オリンピック委員会強化スタッフとして、全日本男子バレーボールチームなどを担当。トップアスリートからスポーツ愛好家まで、スポーツをする人の競技力アップのためのサポートに務めている。著書に『スポーツ選手の完全食事メニュー』『10代スポーツ選手の栄養と食事』『子供の身長を伸ばす栄養と食事』など
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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