ジャパンOPで見えた競泳代表の現在地 世界選手権に向けたそれぞれの収穫と課題

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渡部に芽生えた代表の自覚

日本代表への思いを新たにした渡部香生子は世界選手権で「日本新を出してメダルを取る」と宣言 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 渡部は、専門外の種目に挑んだ2日目の100メートル自由形こそ3位に終わったものの、得意とする100メートルと200メートルの平泳ぎでは貫禄を見せて2冠を果たした。

 結果を残すことができた要因には、日本代表への思いがある。以前は思ったこともなかったが、代表での活動に注目が集まる中で自覚が芽生えた。

「疲れもありますが、日の丸のジャージを着て大会に出るときはしっかりとやらなければと思うし、国内では負けたくない。かっこいいところを見せたいと思うので、みんなのために頑張ります」

 この夏に世界の舞台で戦うために、厳しい状況の試合でも勝負にこだわった。大会中、「タフになりたい」という言葉を繰り返していた渡部は、スタミナ強化を今後の課題に挙げる。大会後に行われた世界選手権の壮行会では「日本新を出してメダルを取る」と宣言し、笑顔で3日間を締めくくった。

萩野と小関はコンディション調整を優先

萩野公介(手前)は熱を出して体調を崩したこともあり、今大会は結果を残せなかった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 一方、萩野と小関の問題はコンディション調整だ。2人ともオーストラリアから帰国後、熱を出して体調を崩している。萩野は大会中にも熱があり、棄権を検討するほどの状況で大会に臨んでいた。小関も最高39度まで熱が上がり、まともに戦える状況ではなかったという。まずは2人とも体調を整えることが先決となる。大学でも萩野を指導する平井監督は、萩野の来週以降のスケジュールをこれから調整する意向だ。

 とはいえ、6月上旬からは両選手とも欧州グランプリに参加する予定となっており、モナコ、フランス、スペインを転戦する。ゆっくりしている時間はない。特に小関は、4月の日本選手権とは別人と感じるほど、今大会での泳ぎがしっくりときていない。「残り1カ月くらいしか泳ぎ込める時間はないので、しっかりとやるしかない」と語り、危機感を募らせる。

 平井監督は欧州の大会中、各選手の体調と相談しながら出場するレースを決めていく方針だという。小関に関して実力のある選手と評価しており、欧州できっかけをつかんでくれることを期待する。

約2カ月後の世界選手権に向けて

 国内最後の大会と壮行会を終え、世界選手権まで残すところ約2カ月。多くの選手が欧州グランプリに出場するが、塩浦慎理(イトマン東進)はイタリア、立石諒(ミキハウス)は国内でトレーニングを行うなど、代表選手全員が一緒に行動するわけではない。

「途中のプロセスはそれぞれだと思うんですけれど、最後はたくさんのメダルが取れるように、一致団結して頑張っていきたいと思います」(平井監督)

 ジャパンオープンで見つかった収穫と課題を胸に、ここからはそれぞれの調整方法で世界選手権に向けて照準を合わせていく。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)

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