秋田ノーザンハピネッツは県民とともに 1年前の「忘れ物」を取りに有明へ

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ブザービーターで「有明」行きをつかむ

新潟アルビレックスBBとの死闘を制し、有明進出を決めた秋田 【写真提供/bjリーグ】

 プレーオフ・ファーストラウンドで、8位の群馬クレインサンダーズを一蹴すると、カンファレンス・セミファイナルの相手は4位の新潟アルビレックスBB。レギュラーシーズンでも2勝2敗という難敵に苦戦した。

 初戦を落とし(74−79)、翌日の第2戦を取り返し(82−63)1勝1敗。「有明」行きの切符は5分ハーフ、合計10分間の最終決定戦にもつれ込んだ。前半は4−11と7点のビハインド。後半開始から猛然と追い上げるが、逆転できないまま残り5.5秒。1点差で新潟リードの場面。

 秋田ボールのスローインから、ルーベン・ボイキンのシュートは外れたが、リバウンドを取った田口がゴール下からねじ込み逆転。この瞬間に試合終了のブザーが響き、会場の秋田市立体育館は歓喜の地鳴りで揺れた。

 1年前は涙に暮れた田口だが、今回は歓喜の中、仲間やチームマスコットにまで上にのしかかられ、見えなくなってしまった。興奮冷めない中、アリーナのブースターは「秋田県民歌」を歌って、勝利を祝った。

クレイジーピンクの夢

秋田県庁前に掲げられた有明進出を祝う看板 【写真提供/bjリーグ】

 秋田のブースターは「クレイジーピンク」と呼ばれる。ピンクを纏(まと)い、県内だけでなく、アウェーにも多くの人が駆けつける。昨年のファイナルでは3000人が東京に押し寄せ、新幹線、飛行機、高速バスとあらゆる交通機関が満員だった。

 もちろん県内での人気は高く、今季は1試合平均2580人を集めた。雪国だけに冬場の観戦は厳しいが、それでも開場前には氷点下や吹雪の日でも行列ができている。

 また、ホームの試合前には「秋田県民歌」を会場全体で合唱する。最近は学校で歌うことは少なくなったそうだが、試合に来たことで、歌えるようになった子どもたちも増えたという。

 地元マスコミの注目も大きい。有明進出を決めた翌日の地元テレビ局ではトップニュース。地元紙『秋田魁新報』でも1面にプレーオフ進出の記事が載る。能代工業高校があり、バスケ王国を自認する秋田県にとって、バスケで他の県に負けるわけにはいかないのだ。

 決戦を前に地元の雰囲気は盛り上がっている。秋田港にあるポートタワーはピンクにライトアップされ、秋田郵便局員はピンクのTシャツ、そして秋田県庁、秋田市役所、秋田銀行本店の前には「祝、有明進出」の看板が掲出されている。

 忘れ物を取り戻すまで、もう2試合。秋田ノーザンハピネッツの夢はチームだけにとどまらず、もはや秋田県民の夢と言ってもいい状態なのである。

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