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リオを目指すパラトライアスリート秦
転機はロンドン落選、新競技で再スタート

レースを左右するトランジション

 ウエットスーツや義足の着脱を行うトランジションも、レースを左右するポイントだった。パラトライアスロンの場合、選手に与えられるトランジションスペースは、一般の2倍の広さがある。秦のバイク用義足はトランジションエリアでもスムーズに動けるよう(関節になる部分が)工夫されているという。椅子に座って汗を拭き義足を装着するなど流れを繰り返し練習したという彼女は、そのロスタイムの短縮にも成功した。

1秒でも早く!パラトライアスロン秦のトランジション<ノーカット版>

代表選考に漏れ、トライアスロンに挑戦

 さらにトライアスロンならではの経験も積んだ。スイムでは初めてのバトル(水中でのボディコンタクト)を経験。男子選手にはじき飛ばされながらも、その状況を楽しんだというから、ハートも強い。


 そんな彼女、実は、水泳で12年ロンドンパラリンピックを目指していた。かねてから興味のあったパラトライアスロンの門戸をたたいたのは、水泳の日本代表の選考に漏れたことがきっかけだった。


「ロンドンの年は今後について考えながら、オープンウォーターの大会に出場するなど今後を模索していました。その年の12月、トライアスロンに挑戦するために初めて陸上用の板バネの義足を履いたんです。走るのは苦手だったはずなのに、なんだか夢のような気分になりました」


 秦は13歳で骨肉腫のため右ひざ上を切断。社会人になって、3歳から小3まで取り組んでいた水泳を再開し、障がい者水泳チーム「千葉ミラクルズSC」に入会。そこで競技の楽しさに目覚めてパラリンピックを目指すようになった。ロンドンパラリンピック出場はかなわなかったが、アスリートとしての本能が消えなかったのだろう。昨年の横浜大会でパラトライアスロンの国際大会に初出場。ホームの歓声の中で完走すると、新たな気持ちが湧いてきた。


「パラトライアスロンでリオを目指そう」


 そう心に決めたのである。

パラリンピックへ「ようやくスタートライン」

リオパラリンピック出場を目指し、今後はバイクとランのさらなる強化を図る
リオパラリンピック出場を目指し、今後はバイクとランのさらなる強化を図る【スポーツナビ】

 横浜大会の優勝でリオへの期待も高まる。だが、秦は「パラリンピックはまだまだ手の届かない場所にある。もっとレベルアップしなければつかめない」と言い、まずは9月の世界選手権(米国・シカゴ)に向けて、バイクとランのさらなる強化を図るつもりだ。


 秦の世界ランキングは9位。リオには全カテゴリーで60人が出場できるとされ、2015年7月1日から2016年6月30日までに実施されるポイント対象大会の結果が出場権獲得に直結する。


「ようやくスタートラインに立てました」


 ゴール直後のインタビューで、言葉に力を込めた秦。パラリンピックへの2度目の挑戦がいよいよ始まった。

瀬長あすか

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

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