トップ4に返り咲いたユナイテッド 任務を遂行したファン・ハールの評価
戦力外と思われていた男たちの蘇生
序盤は戦力外と思われていたフェライニ。フィジカルを生かしたプレーで、指揮官にとって外せない選手となった 【写真:ロイター/アフロ】
同時に、アレックス・ファーガソン監督時代から「補強失敗例」に挙げられていたアシュリー・ヤングと、今冬の売却がうわさされていたファン・マタも左右のクロス供給源として戦力視されるようになった。その意味では、トップ4内が確定した第36節クリスタルパレス戦(5月9日、2−1)、ヤングのクロスをフェライニが頭で決めた勝ち越し点は今季のマンチェスター・ユナイテッドを象徴する1点だ。
デ・ヘア頼みで内容に説得力が乏しい
MVP級の働きを見せたデ・ヘア。レアル・マドリーへの移籍もうわさされるが…… 【写真:ロイター/アフロ】
しかも、結果を手にした試合でも内容に説得力が乏しい。いざシーズンが始まってみると、記者陣の間で「良い」と評判になったのは、ファン・ハールの「腕」ではなく「運」だった。事実、今季マンチェスター・ユナイテッドの最優秀選手を選べば、のらりくらりとポイントを重ねるシーズンを可能にしたGKのダビド・デ・ヘアになる。3バックの基本化が裏目に出た序盤戦はもちろん、後半戦でも相手監督のサム・アラダイスに「ロングボール・ユナイテッド」と嫌みを言われた第24節ウェストハム戦(2月8日、1−1)などは、守護神の5セーブがなければ負けていた。前述のクリスタルパレス戦も、勝ち越しへの気運を高めたのは1−1とされた後でデ・ヘアが披露した3度の好セーブだった。
2年目はフロントの要求がさらに高まる
既に獲得を決めたデパイ(手前)のほかにも大型補強が予想されるマンチェスター・ユナイテッド。ファン・ハールはフロントの高い要求に応えることができるか 【写真:ロイター/アフロ】
攻撃面では既にメンフィス・デパイ獲得が決まり、うわさの候補にはトーマス・ミュラー、エディンソン・カバーニ、ガレス・ベイルといったビッグネームも挙がっている。最終ラインの要には昨夏からマッツ・フンメルスの獲得説が絶えない。そうそうたる顔ぶれで、プレミア最大の収益力を誇るマンチェスター・ユナイテッドには手を出す資金力もあるが、獲得後にチームとして機能させなければならない指揮官のプレッシャーは今季を上回る。
そうでなくとも、来季はCLと両立した上でプレミアリーグの優勝争いに絡むシーズンをフロントに要求されるはずだ。「モイーズ体制以下」と騒がれたスタートでの失敗を繰り返せば、今度は「解雇」もささやかれる。表向きは「さすがの目標達成」と言える就任1年目を経て、ファン・ハールは実質的に「さすがは名将」と言われる2年目を送らなければならない。