ハリルホジッチ「メッセージを伝える」 日本代表候補合宿前のメディア対応

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武藤はプレーできるクラブを考えるべき

欧州視察では多くの日本人選手と対面。直接、情報交換ができたことを収穫に挙げた 【スポーツナビ】

──先ほど「プレーできるクラブに」という話をしていたが、武藤にチェルシーからオファーが来ていることについてどう考えるか?

 まず選手と話をしたいし、いろんなことを意見交換したい。チェルシーからのオファーがどのようなものかは知らないが、多くの選手を確保して他のクラブに貸し出す方針のクラブだ。今も27人くらいレンタルされていると思う。武藤の現状を考えると、もし向上したいのであれば欧州でプレーできるクラブを考えるべきだ。欧州のやり方は日本と何もかも違うので、もっと向上させないといけないし修正も必要だろう。海外に移籍するからには、スタメンに入るべきだ。簡単なことではないが、そのために彼と話をして私のアイデアを伝えたい。最後に(移籍するかどうかを)決めるのは彼自身だ。

──欧州視察での収穫や印象に残ったことがあれば教えてほしい。

 私が訪れたことを選手は喜んでくれた。確かに疲れたが、イタリアやドイツやベルギーやイングランドでプレーしている選手たちにも会った。試合は2試合見て、その後はみんなでいろんなことを話した。確かに良い時間を過ごすことができたが、ちょっと高いワインを2本も購入することになった(苦笑)。それなりにお金を使ったので、彼らはきっと今後も勝利に貢献してくれるだろう(笑)。プレーできていない選手に対しては、勇気を与えたかったし、もっとトレーニングをするように伝えた。現地で会えなかった選手についても、さまざまな情報を得ることができた。(視察を通じて)信頼関係を築くことは大切だ。また、話すことで、彼らのプレースタイルも向上すると思う。短い時間だったが、ダイレクトに話すことができたのは、とても良かったと思う。

──どの選手に欧州で会ったのか? また、今回の合宿では3回練習があるが、公開されるのか?

 向こうで会ったのは、ドイツでプレーするほぼすべての選手、吉田(麻也)と川島(永嗣)も来てくれた。内田(篤人)は残念ながらけがをして治療中だったので来ることができなかった。内田に関してはちょっと心配している。パリにいる知人のドクターからもアドバイスさせたいのだが、残念ながら彼のクラブ(シャルケ)がパリ行きを認めてくれない。最終的には、彼自身が決めることだと思う。それから直接プレーは見ていないが、何人かのドイツでプレーする選手のことも理解できたし、ルーマニアやポルトガルでプレーする選手の情報も得られた。良い選手がいれば、どこにいようと見てみたいと思う。

 2つ目の質問だが、3回のトレーニングのうち、水曜日の午前中がクローズだったと思う。オープンかクローズかはそんなに問題ではないが、タクティクスのトレーニングの場合、多くのギャラリーがいると選手の集中が保てなくなるのが問題だ。ピッチ内外でのトレーニングもある。日本に来てからは、テクニカルスタッフがたくさんの視察をして、毎日のようにディスカッションを繰り返している。われわれの力で、どれだけチームを向上させることができるかについてだ。また(今回選ばれていない)より多くの選手にも、日本代表に興味を持ってほしいし、それぞれが日本代表を目指すようになってほしい。可能であれば、もう少し長い合宿もオーガナイズしたい。日程的に難しいことはもちろん承知しているが。

日本のフットボールはまだまだ向上する

──欧州組の選手がより向上するために、出場機会が得られるクラブに移籍したほうがいいということだが、彼らがより欧州で表現できるようになるには何が必要だと考えるか?(田村修一/フリーランス)

 誤解してほしくないのだが、私は選手を移籍させるためにいるわけではない。もし選手が、クラブを変えたい、(プレーする)国を変えたいというのであれば、直接会って私の意見を伝える。ビッグクラブに移籍するというのであれば、向こうのプロフェッショナリズムはかなり高いので、かなりの準備が必要になる。私は意見を伝えるだけ。決めるのは選手だ。いくつかのクラブが日本の選手に興味を抱いているが、彼らに何をできるか考えたい。

 皆さんもご覧になったと思うが、チャンピオンズリーグ(CL)準決勝のバルセロナ対バイエルンはトップ・オブ・トップのゲームだった。彼らの戦う姿勢を見ただろうか? タクティクスを見ただろうか? スピードを見ただろうか? その中にひとり天才がいた。天才がいると、タクティクスは存在しなくなる。ただし、(リオネル・)メッシは世界にひとりしかいない。いずれにせよ(CL準決勝の試合は)日本よりもスピードがあって、強さがあって、タクティクスがしっかりしている。日本の選手は、能力もテクニックもあるが、そこにスピードが加わらないと難しい。この合宿でも、そういうメッセージを伝えたい。何人かの国内の選手は、それに気付いて向上しているし、それを表現する選手もいる。理解してほしいのは、私は彼らを批判はしないということだ。勇気付けて、向上させることで、うまくいくと思う。

──前回の合宿では、フィジカルを高めてほしいという意味で、フィジカルのメニューを選手の所属クラブに送ったそうだが、フィジカル強化についてクラブとどう連携していこうと考えているのか?(元川悦子/フリーランス)

 それは難しい質問だが、この2日間でのフィジカル面の向上は難しい。選手には、ある程度のことをもっとやってくれというメッセージはすでに伝えている。筋力トレーニングもそうだ。それはJクラブと連携をとってやらないといけないが、クラブに対してもリクペクトをするべきなので注意深く進めていく必要ある。われわれのスタッフも、いい雰囲気作りを心がけながら多くの仕事をしてきたし、彼らとも意見交換しながら、全員で成し遂げようとしている。だがそのためには時間が必要だ。前回の合宿では、選手たちに「また会いたいと強く願っている」と言った。そうしたことも含めて、クラブとの関係は大事だと思う。いずれにせよ、日本のフットボールはまだまだ向上すると確信している。

多くのディテールが違いを生む

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──この2カ月で好きになった日本食は何か? またもうすぐ誕生日(5月15日)だが、プレゼントはどんなものを希望しているか?

 正直に言うが、日本料理のクオリティーに本当に驚いているし満足している。ただ個人的な好みでいえば、今でも生魚は苦手だ。焼き魚は問題ない(笑)。誕生日については、先日ボスニア大使館に招かれて、高貴な方々にもお会いできた。ただ私だけでなく、ここで働いているスタッフのためにも食事会をオーガナイズしたい。しっかりいい仕事をすれば、食事もおいしくなる。われわれには多くの野心があり、そのためには皆さんから見えにくい仕事もしている。視察、分析、ディスカッション。すべての勝利は、準備段階から始まっている。人間関係の構築は非常に重要だ。選手とより良い人間関係を作ることで、グラウンド上でより良いことが起こる。(その意味で)最初の合宿は素晴らしかった。

 日本サッカー協会の(大仁邦彌)会長は「少し休んでくれ」と言ってくれたが、着任したばかりなので、しばらく(このペースで)続けると申し上げた。私はW杯もCLも経験してきた。そして日本代表とも何かを成し遂げたい。そしてスタッフと一体となって、多くの仕事が実を結ぶことを期待している。時折、疲れることもあるが、勝つことで疲労は吹き飛ぶ。眠れない時があっても、本田の試合を見て満足できた。私は疲労を忘れている。それくらい私は、フットボールに情熱を持ち、フットボールを愛している。そして日本代表のクオリティーは高いので、そのために何かをトライしたいと思っている。

──GKはもっと向上できるということだが、どこかに問題があるということか?

 問題かどうかは分からないが、たくさんの試合を見て分析はしたので、それを選手に伝えることで、いろんなことを向上させたい。フィールドプレーヤーにしろGKにしろ向上は必要だが、まずはしっかりした観察と分析から始まる、その上で、自分の考えを反映させる。一例だけ挙げると、空中戦のボールに対してGKは存在感を出してほしい。アグレッシブにしっかりしゃべってほしい。他にも課題はあるが、そういったことをトレーニングしたい。また、これは日本だけではないが、GKはフィジカルトレーニングをしない傾向がある。これは大きな問題だ。何人かのGKと話をしたが、フィジカルトレーニングの習慣がないそうだ。だが、フィジカルが向上すれば、けがのリスクは回避できるし、疲労回復も早くなる。

 多くのディテールが(結果として)違いを生むことになる。まずは細かいところからトレーニングしていきたい。またコミュニケーションについても同様だ。何試合か見たが、失点をした時のコミュニケーションが足りていない。特にGKにはそれが求められるので、どんどん要求していきたい。これは批判ではない。あるレベルに到達しようと思ったら、それだけの向上が必要となる。アグレッシブさについてもそうだ。バイエルンとバルセロナの試合での、インテンシティー(プレー強度)、タクティクス、そして戦う姿勢というものを見てほしい。ハイレベルな試合ではディテールからして違う。彼ら(日本の選手)が望めば、それは向上できる。今回の合宿ではそういうことを伝えていければと思う。

 明日からほとんどの選手が集まるが、森重(真人)や槙野(智章)に何を言うかはもう考えてある。他のプレーヤーについても同様だ。ACL(AFCチャンピオンズリーグ)の試合を見たが、槙野のための映像も20日前から用意している(笑)。彼とは本当にいいディスカッションができると思う。

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