女子代表主将が制裁問題に立ち向かう理由 大神雄子から見た日本バスケ界<前編>

大島和人

女子日本代表として活躍する大神は、FIBAの制裁問題に対して、積極的に声を発している 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本の女子バスケは2014年の世界選手権に出場するなど、男子に比べて“世界”との距離が近い。仮にFIBA(国際バスケットボール連盟)の制裁処分がこの6月までに解除されなければ、リオデジャネイロ五輪出場の決して低くない可能性を、戦わずして消されることになる。

 大神雄子は21歳でアテネ五輪に出場し、トッププレーヤーとして長く日本を引っ張ってきた女子バスケ界の象徴的存在だ。FIBAの制裁問題が出された前後から精力的に取材を受け、声を発してきた。パトリック・バウマンFIBA事務総長や川淵三郎・タスクフォースチェアマンとの会談にも参加し、選手を代表して主張を伝える役目も担った。

「女子は男子のリーグ分裂による被害者」という声はあるだろう。しかし大神は今回の制裁を男子のリーグ分裂問題のみに起因するものとは考えていない。確かにJBA(日本バスケットボール協会)の“ガバナンス”における至らない部分は、女子でも見て取れる。そしてそれは男子の諸問題とともに解決されなければならないはずだ。

 今回のインタビューでは日本の女子バスケが置かれた状況と、解決が必要な問題について、大神に率直に語ってもらった。

「女子にも少なからず問題がある」

大神は時にメディア向けの会見会場にも足を運び、選手目線での発言を積極的に届けようと活動している 【写真:アフロスポーツ】

――大神選手は本当に多くの取材に応じて、強くメッセージを発信している印象があります。

 バスケットを盛り上げたい、知ってもらいたいという想いからです。積極的に発信しているつもりだし、発信していかなければならない。それは今選手のできることだし、責務だと感じています。若いときはプレーでも他のことでも、いつも先輩に「思い切ってやってこいよ」と背中を押してもらっていました。そういう中で04年のアテネ五輪も、21歳で経験させてもらいました。でも今は、私よりも年下の選手が多い中で、私が駅伝でいうタスキをつなぐ番なのかなと思います。

――NBL(日本バスケットボールリーグ)とbjリーグ(ターキッシュエアラインズbjリーグ)の統合問題は男子の問題で、女子は“巻き添え”でFIBAの資格停止処分を受けたともいえます。大神選手はどうお考えですか?

 確かに男子の統合問題は大きく取り上げられています。でも“協会のガバナンス問題”や“日本代表の強化と若手の育成”も含めてFIBAは処分を下しています。決して2つのリーグがあるから制裁を科されたというだけの問題ではないと理解しています。

 男子の話にかき消されていますけれど、私は女子にも少なからず問題があると思っています。

 それが協会マターなのか、リーグマターなのかというのはありますけれど、(2月25日の意見交換で)川淵さんにもお話しした、登録の問題があります。JBAがリーグを盛り上げて、代表の強化につなげていくというのであれば、この問題も男子と同様の問題だと思います。

 問題は男女の両方にあるし、もちろん選手の責任もあります。バスケットに携わっている人みんながそう受け止めて欲しい。だからこそ今、ファンの皆さんも含めて声を挙げてほしい。私も「つなげたいな」という想いから、責任はしっかり持って、思うことをしっかり言おうと思います。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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