中嶋一貴の事故に考えるレース車の安全 赤井邦彦の「エフワン見聞録」第42回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

ル・マンの代役に可夢偉の噂も…

フォーミュラカーと違って屋根付きとなるWECのマシン。だが、一見事故に対して安全そうだが、それゆえのリスクも存在する 【Getty Images】

 見舞いに行ったのは事故から3日目。背中はコルセットで固定されて動かないが、体調は至って元気だ。「問題はトイレです。起きられないのでベッドの上で自分で。それだけが嫌ですね」と笑う。「食事は朝、夜はパンと飲み物だけ、昼間はしっかりした食事が出ます」とのこと。診断では完治までに少し時間がかかりそうなので、残念ながらル・マンは欠場の可能性もある。ただ、中嶋を見舞ったトヨタ自動車の嵯峨宏英専務が、「来年は勝てるクルマを用意するから今年はゆっくり休んで早く治してくれ」と、約束していた。

 ところで、中嶋の事故を受けてTMG(トヨタ・モータースポーツ)の外国人幹部が、ル・マンへの小林可夢偉の出走を口にしたそうだが、実際には未定だ(5月4日時点)。すでに世界中のメディアでそのことがささやかれているが、トヨタ関係者の話では、「そう簡単には物事は進みませんよ」とのこと。病院のベッドで自分の代役の話を聞く中嶋の心中は複雑なものがあるだろうが、今は1日も早く治すことに専念してほしい。近々ニースの病院に移って手術をするという(編集部注:7日に手術し、8日に退院したことを自身のブログで発表)。

 レースの事故は外から内から、思いもよらぬところから襲ってくる。可能な限りの可能性を考えて安全対策を取るが、その隙間を事故は狙ってくる。まだまだ練らなければならない対策は山積みだ。

『AUTOSPORTweb』

【AUTOSPORTweb】

F1やスーパーGTの最新情報をリアルタイムでお届けするモータースポーツ専門サイト

2/2ページ

著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント