湘南にとって不可欠な三村ロンド<後編> Jを支えるプロフェッショナル 第1回
4年間鳥取でメインナビゲーターを経験
湘南のスタジアムナビゲーターを務めるロンドは、鳥取でのメインナビゲーターも4年間経験した 【写真提供:湘南ベルマーレ】
「正直、あぜんとしました」と、ロンドは振り返る。
「まずはゴール裏を集めなければいけないと思い、声を掛けて応援練習を行なった。最終的に50人を超えるぐらいに増え、試合にも勝ってすごく盛り上がりました。いつかここをいっぱいにしましょうと、サポーターさんに話したことを覚えています」
湘南の仕事を継続しながら鳥取のスタジアムナビゲーターを引き受けたロンドは、ホームゲームのたび、東京から通った。人員はかけられないため、スピーカーを設置するところから機材の操作も喋りもすべて一人で担った。コンパクトなスタジアムの特性を生かし、試合前にはゴール裏へと走って、スタンドの真ん中でマイク片手に選手紹介を行なった。取り組む姿勢は湘南でのそれと変わらず、知らないことがあってはならないと、アウェーゲームにもすべて足を運んだ。
いつしか抱いたチーム愛
「やっぱりベルマーレが好きだし、僕はその愛情を取りました。もちろんガイナーレに対する愛もあります。ただ、番組に最終回があるように、いずれ離れなければいけないと思っていたし、鳥取にゆかりのない自分ではなく、いつかは鳥取の人に託したいなという思いがあった。ガイナーレがJに上がるまでと、心のどこかで決めていたんです」
10年、鳥取のホーム最終戦の試合後、セレモニーもすべて終えた後にゴール裏から「三村ロンド」コールが起こり、サポーターの手書きのメッセージがしたためられた横断幕を贈られた。「まっとうしたんだ」。視界がぼやけるなかでこみ上げてきた感慨は、役者として最後の収録を終え、花束をもらった時に似ていた。
湘南に欠かせない存在に
湘南を盛り上げるロンドのアイデアは数多い。そんな演出の充実の一方で、ナレーターのキャリアも10年を超え、次第に多忙になってきたことも否めなかった。先行きのことを考えたときにナレーターとして精進しなければいけない時期ではないかとも考えた。もともと求められてスタジアムナビゲーターのサポートに就いたわけではないといういきさつを思っても、自分の役割は潮時ではないかと考えるようになった。
クラブに胸中を伝えたところ、「会おう」と連絡をくれたのは湘南の大倉智GM(現社長)だった。「ロンドがいままでやってきたことは見てきたつもりだ。これからの10年を考えたときに、ロンドというピースがいなくなるのは考えられない」と、大倉GMは言った。
「見てくれている人は必ずいるんだと、隊員役を演じた時と同様、その時もまた思いました。大倉さんにそこまで言っていただき、『お世話になります』と僕自身も決断した」