岩田ドンキが仕掛けた魔の桜花賞ペース ルージュバックがハマった超スローの泥沼

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青ざめた戸崎「もう少し前で……」

敗れたルージュバック、戸崎は「もう少し前で競馬をすれば」と絞り出すのがやっとだった 【スポーツナビ】

 レッツゴードンキが繰り出したラスト3ハロンの数字は33秒5。単騎で逃げた馬にこれだけの脚を使われては後続は何もすることができない。それはルージュバックがいくら“怪物”級の素質を持っていたとしても同じだ。

「馬の感じは前走から変わらず良かったんですが、もう少し前で競馬をすれば良かった。思ったよりもペースが遅かったですね……」

 ルージュバックの主戦・戸崎は青ざめた表情を浮かべながら、レース後にこう絞り出すのがやっとという雰囲気だった。やはりこれだけの人気を背負うとマークが厳しい。スタートから最初のコーナーに差しかかるまでに、前後左右とガッチリと囲まれてしまい、ズルズルと番手を失ってしまった。それでも“普通”のペースならば挽回もできただろうが、今回ばかりはすべてが想定外だった。気がつけば岩田が作った超スローペースの泥沼にどっぷりとハマり、抜け出せなくなってしまったのである。

 これもある意味、“魔の桜花賞ペース”というべきなのかもしれない。

次なる進軍は牝馬二冠か、マイル二冠か

レッツゴードンキの次なる進軍はオークスか、それともNHKマイルカップか 【スポーツナビ】

 ここで改めて、1勝馬レッツゴードンキと、3戦無敗ルージュバックを比較すると、歩んできた道のりは対照的だ。片や惜敗を繰り返しながらも地道に大舞台を目指してきた馬と、ポンポンポンとスター街道に乗った馬と――。梅田調教師は愛馬の道程を振り返り、こんなことを言っていた。

「“負けて強くなる”ということがありますからね。負けることは、強くなるための1つのポイント。なぜ負けたのかをよく考えて、次のレースへの糧としますから」

 あと一歩のところで勝利を逃し続けても、その敗戦を“次”への栄養素としてレッツゴードンキはしっかりとその身に蓄えていた。最たる好例が今回の逃げの一手だろう。「前回ハナに行ってなかったら、今回逃げることはできなかったかも」と岩田。前走のチューリップ賞は、レッツゴードンキにとって初めて逃げる形となったが、それでも見せ場十分の3着。この経験がレッツゴードンキ自身にどんなレースでも対応できる脚質の幅を持たせ、岩田の選択肢を広げることにもつながった。

 そうして無敗馬にはない逞しさを手に入れ、桜の大輪を見事に咲かせたレッツゴードンキ。さあ、次に向かうは二冠がかかるオークスか、それとも距離適性に合わせたNHKマイルカップか。

 梅田調教師は「気性的にも血統的にも、もともと長い距離はあんまりかなと思っていましたので、オーナーやジョッキーと相談した上で決めたい」としているが、岩田は「前回、今回と逃げましたけど、我慢すべきところはできる馬なので、距離は心配ないと思います」と、オークスへも前向きに語っている。

 王道の牝馬クラシック二冠、マイル変則二冠――いずれにしても、レッツゴードンキの次なる進軍が楽しみだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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