岩田ドンキが仕掛けた魔の桜花賞ペース ルージュバックがハマった超スローの泥沼
4馬身差の快勝で一冠!
岩田騎乗のレッツゴードンキが逃げて4馬身差の快勝、牝馬クラシック第一冠・桜花賞を制した 【スポーツナビ】
レッツゴードンキは今回の勝利でJRA通算6戦2勝、重賞は初勝利。騎乗した岩田は2012年ジェンティルドンナ以来となる桜花賞2勝目。同馬を管理する梅田智之調教師はうれしいJRA・GI初勝利となった。
2着には池添謙一騎乗の7番人気クルミナル(牝3=栗東・須貝厩舎)、さらに3/4馬身差の3着にはクリストフ・ルメール騎乗の8番人気コンテッサトゥーレ(牝3=栗東・安田厩舎)が入線。単勝1.6倍の断然の1番人気に支持されていた戸崎圭太騎乗のルージュバック(牝3=美浦・大竹厩舎)は、後方から末脚不発に終わり9着に敗れた。
ルメールもお手上げ「“funny”なレース」
レッツゴードンキ(左)が作った超スローペースにコンテッサトゥーレ騎乗のルメール(中)もお手上げ 【スポーツナビ】
ルージュバックが見せ場なく大敗したのもそうだし、あれだけ詰めの甘かったレッツゴードンキが何かに目覚めたかのように4馬身差もの大勝を収めたのもそう。そして、前半3ハロンが37秒1、5ハロンが62秒5という、マイルGI戦としては超がつくスローペースになってしまったことも含め、レース後はなんだかキツネにつままれたような感覚に陥ってしまった。
「今日はなんだか“面白い”レースだったネ。とてもスローだったし、“funny”なレースだった」
肩をすぼめながら日本語でそう話してくれたのは、コンテッサトゥーレで3着に突っ込んだクリストフ・ルメール。「funny」というのは、日本語の「面白い」というよりは、「おかしな」とか「奇妙な」と言った方が意味が近いだろうか。世界的名手をすら惑わせた今回の桜花賞。ポイントはどこにあったのか?
95%を捨て、5%を取った岩田
当初逃げる形は想定していなかったという岩田、それでも状況に応じた大胆作戦で見事、勝利をモノにした 【スポーツナビ】
「本当は他の馬の後ろで競馬をしようと考えていたんです。でもゲートを切ってみたら、みんな引っ張ってけん制しているし、これならもう行ってしまおうと。咄嗟の判断です。今回は馬の後ろで競馬させようという気持ちの方が95%あったんです」
これに関しては梅田調教師も同じことを話しており、事実、この中間は道中しっかりと脚をタメることを想定した調教を重ね、きょうのパドックでも「しまいを生かす競馬をしよう」と打ち合わせてしていたという。
ただ、誰も前に行かないと見るや、95%固まっていた作戦を捨て、残りの5%にシフトしてしまう――それもクラシックという大舞台で平然とやってのけてしまうところが、岩田が名手たる所以なのだろう。そして、その5%に振り切った作戦変更は見事にハマったのである。
「前回以上にペースが遅くて、自分でも“エッ!?”と思うくらいのペース(笑)」という驚きの前半5ハロンのラップは12秒7−11秒7−12秒7−12秒9−12秒5(62秒5)。いずれも中団より後ろにいた上位人気勢を意識し過ぎてか、2番手以降の馬が競りかけて来なかったという幸運があったにせよ、岩田がここまで落としこんだペースは、外回りマイルコースで行われるようになった2007年以降の桜花賞ではもちろん最遅だ。
「前半を楽に走れたので、最後の直線も真ん中くらいまでタメることができましたし、追い切りでもあれだけ動くので、追い出してからもやっぱり切れがあるなと思いましたね」