「ファンのリクエストに応えていく」事業会社トップが語る侍ジャパンの今後
世界の野球は日に日にレベルアップしている
開催時期やマッチメークに対し、批判もあった欧州代表との試合だが、侍ジャパンを圧倒する試合内容を見せ、世界の野球の広がりを示す結果になった 【Getty Images】
インターネット動画の試みは入口であって、ここで終了にしてはいけないと思っています。インターネットから入ってテレビを見る、インターネットから入って球場に行くといった行動のきっかけにしたい。1人でも多くの方が野球に接触すること、今後、ファンの層を開拓していく中でのタッチポイントになればと思っています。侍ジャパン公式サイトもその一環です。公式サイトを見れば、アンダー世代を含めた侍ジャパン情報が絶えずあると認識してもらえたらうれしい。そういう接点になる場所として、インターネットは非常に有効だと考えています。
――3月に行われた欧州代表戦は開催時期やマッチメークについて、メディアやファンから厳しい声が聞かれていました。
開催時期については、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が3月に行われるというのが大きな理由です。2017年と言っても、あと2年しかないわけです。3月に試合をするという調整を、実戦に合わせてする良い機会だったと思っています。
また、シーズン開幕前の時期に日本代表である侍ジャパンを招集することは、「今年のトップ選手、スター選手はこの選手たちだよ」と世間にアピールできる絶好の機会だった。プロの世界では目立つこと、話題の中心になることが重要です。野球選手で日の丸を背負うことができる選手は一握りしかいません。それを自覚し、世間にアピールできたことは非常に素晴らしかったと思っています。
――結果的には、多くのファンから格下に見られていた欧州代表が善戦、第2戦では侍ジャパンを破るほどの強さを見せてくれました。
欧州野球が強いということ、野球の世界的な広がりを知る良い機会になりました。多くの野球ファンが驚いたと思います。06年、09年WBCで2連覇を達成してから、6年が経ちます。ファンの皆さんも、いつまでも日本が世界のトップにいるという認識ではダメだと分かったと思います。世界の野球のレベルは日に日に上がっています。
選手のモチベーションの高さに手応え
確かに侍ジャパンが常設化した際の定点観測で、80%くらいの人が「野球の日本代表=侍ジャパン」だと認識してもらっていることが分かっていますが、実はサッカー日本代表と誤解している人も多いことも分かりました。私としては、レギュラーシーズンを通じて、「侍ジャパン」というブランドをもっと出していきたいと考えています。侍ジャパンに選ばれることによる箔(はく)を付けたいですね。そうすることで、絶えず「日本代表のメンバーだ」というプライドを持っていてほしいですし、侍ジャパンに選出された選手をもっと有名にしていかなければならないと思っています。そのためには、地上波のゴールデンタイムに放送されるようにしなくてはいけないし、中継されるような魅力あるコンテンツにしていかなければならないです。そうすれば、選手たちも「代表に選ばれたい」ともっと思ってもらえるのではないでしょうか。
――今年のキャンプでは「侍ジャパンの4番・中田翔」という紹介が新聞記事、テレビニュースなどでもよく見られました。もっとそうなってほしいですか?
そうですね。選手たちにとっても「自分の侍ジャパン」となってほしいですし、ファンの皆さんにとっても「自分の侍ジャパン」という気持ちになってほしい。12球団の共通事業として、そしてプロとアマチュアが結束して取り組んでいる侍ジャパンですので、野球に関係する誰にとっても「自分の侍ジャパン」になれば、もっと結束できると思っています。侍ジャパンが野球界の未来にとって良いものになるよう、さらに推進していきたいですね。
<後編につづく>
(取材・構成:森隆史/スポーツナビ)
今村司(いまむら・つかさ)プロフィール
今年1月に侍ジャパン事業会社「NPBエンタープライズ」社長に就任した今村司氏 【スポーツナビ】