最強女王、久光製薬を退けたNECの勢い 細かな戦術変更と柳田、古賀ら若手の躍動

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3連覇ならず、肩を落とす久光製薬

3連覇を目指す久光製薬を破り、NECが10シーズンぶり5回目の優勝を果たした 【坂本清】

 バレーボールの日本一を決めるV・プレミアリーグ女子大会の優勝決定戦が4日に行われ、NECが久光製薬に3−1で勝利し、10シーズンぶり5回目の優勝を果たした。NECは第1セットを久光に奪われたものの、その後の3セットを連取して逆転勝ちを収めた。

 MVPを獲得した近江あかりが「個人の能力を見ても、久光のほうが上というのは承知の上でした」と語ったように、戦前はファイナル6を1位で通過した“久光有利”と見る声が多かった。久光は中田久美監督が就任以降、Vリーグを連覇しており、全日本メンバーを多数擁している。3連覇を目指す“最強女王”の敗戦が近づくと、会場ではまさかの番狂わせにざわつく様子が感じられた。

 会見で、石井優希が涙ながらに「私たちにとっては通過点に過ぎなかったんですけれど、大事な試合ということでこの試合に懸けていた」というように、5月にスイスで行われる世界クラブ選手権に出場する久光は、勝って勢いをつけたいところだった。しかし、キャプテンの座安琴希が「勢いのあるチームに対して、後手に回ってしまった」と話したように、3月22日のファイナル6・日立戦から2週間空いた久光は、3月28日のファイナル3を勝ち抜いたNECの勢いを止めることができなかった。

 中田監督も「NECはうちを研究してきたし、どんどん戦術を変えてきた。その中でだんだんと的を絞りきれなくなって焦りが出たんだと思います」と素直に負けを認めていた。

戦術変更を可能にした“チーム力”

最優秀新人賞を獲得した柳田ら、NECは若手が躍動した 【坂本清】

 前述の中田監督のコメントどおり、NECは流れを見ながら選手たちが細かく戦術を変更することによって勝利をつかんだ。NECの山田晃豊監督は相手の得点源の一人である石井対策として、コーチ陣の事前のデータ分析に加え、リベロの岩崎紗也加の声掛けにより、ブロックとレーシーバーのポジションを修正していたと明かしている。その他にも、ローテーションの組み換えやサーブで石井を狙い続けた結果、スパイク決定率を17.8%まで抑えることに成功した。

 さらに、チーム最多の21得点を挙げ、最優秀新人賞を獲得した柳田光綺は、チームメートの声掛けによりスパイクをクロス、フェイント、ブロックアウト狙いと次々に戦術を変えていった。

 そうした細かな戦術変更を可能にしたのは、NECキャプテンの秋山美幸が「どこにも負けない」と語る“チーム力”。昨年多くの選手が引退し、シーズン当初は連敗も喫したが、柳田ら若い選手が力を付け、チーム力が底上げされた。今年2月には、先日熊本信愛女学院高校を卒業したばかりの古賀紗理那が加入。ファイナルでも13得点を挙げる活躍を見せた。

「うちには大砲がいるわけではない」と近江が語ったように、この日33得点を挙げた久光・長岡望悠のように爆発的な得点力を秘めた選手はいない。しかし、みんなで点を取り、状況に応じてチーム全体の戦い方を変更できるのが今のNECの強みだ。

 試合後、秋山は「NECの時代を作る」と語った。19歳の柳田や18歳の古賀など、若い選手が躍動して優勝を果たしたNEC。来シーズンはどんなプレーを見せるのか、今から楽しみだ。

(取材・文 豊田真大/スポーツナビ)
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