“If”の多いヤンキースを待つ運命は? 早期の低迷か、それとも優勝争いか
それでも「優勝争いに食い込む力ある」
早い時期から低迷するか、上位進出か、近年にない注目度の低さも不気味なヤンキース 【Getty Images】
「優勝争いに食い込める力はあるが、多くの誤算があったときに耐えられるほどの底力はない。現時点では良い感じだが、明日にどうなるか分からない」
基本的に『ニューヨーク・ポスト』紙のジョエル・シャーマン記者の記述に同意する。給料総額に約2億ドル(約239億円)が費やされたチームとしては層が薄く、ケガ人が出たときの不安は否定できない。かつて“悪の帝国”と言われたころの派手さや豪華さも奇麗に消えうせた。ただその一方で、救援投手陣、内野守備といった地味ながら重要なエリアが良くなった。
アンドルー・ミラー、デリン・ベタンセス、デービッド・カーペンター、ジャスティン・ウィルソンらの本格派がそろって力を出せば、ブルペンは強力な武器になり得る。ジーター不在の影響が語られているものの、昨季後半は打率2割3分5厘に終わった“キャプテン”より、身体能力の高いグレゴリアスの方が遊撃手としてチームを助けるかもしれない。
キーマンはピネダと田中の二枚看板
11年のメジャーデビュー時から“怪物”と呼ばれた右腕は、今春のプレシーズンゲームでも支配的な姿を垣間見せてきた。このピネダが今年中に一気にエースの座を受け継ぎ、オールスター、サイ・ヤング賞の候補になっても筆者はまったく驚かない。そして、ピネダと田中が先発の1、2番手として確立し、ブルペンのミラー、ベタンセスと強力カルテットを形成すれば、ヤンキースの上位進出も見えてくるはずである。
もちろん、それ以外の不確定要素も無視はできないが、ただア・リーグ東地区で不安材料が多いのはヤンキースだけではない。レッドソックスはエース不在、ブルージェイズはマーカス・ストローマンの故障離脱で先発が弱まり、オリオールズはネルソン・クルーズ(マリナーズ)、ニック・マーケイキス(ブレーブス)といった主力が移籍し、レイズからもジョー・マドン監督とアンドリュー・フリーマンGMが抜け……。
一時期と比べて明らかに弱体化した地区内で、ヤンキースがサバイブしていく可能性がないとは思わない。前述の通り、層が薄いだけに負け越し成績もあり得るが、逆に90近くの勝ち星を挙げても不思議ではない。
いずれにしても、「If」の多いチームのシーズンはドラマチックになりがちである。前述したピネダ、田中の2枚看板、さらにはベルトラン、マキャンらの一部の主力打者が4月に波に乗れば面白くなる。開幕前の評判、注目度は近年になく低くとも、劇的に勝ち始めさえすれば、この街の人々はすぐに手のひらを返してスタンディングオベーションを送るはずである。