- WOWOW
- 2015年4月2日(木) 13:30
08年全米オープンのフェレール戦

錦織圭選手のグランドスラムでの戦いを振り返ると、2014年全米オープンで準優勝したとき以外にも、ターニングポイントとなった試合や大会がいくつか思い浮かびます。
最初に挙げておきたいのは、08年の全米オープン。3回戦のダビド・フェレール選手(スペイン)を破った試合です。
この全米オープンは、錦織選手がブレークスルーした大会です。すでに日本では期待の存在でしたが、ベスト16入りしたことで、初めて「ヤングスター」として世界に認知されたことでしょう。
特にこの大会では、米国のファンが彼を後押ししていました。錦織選手がフロリダ州に拠点を置いていること、そして、彼がそれだけ魅力的なテニスを見せてくれたからだと思います。
それにしても、当時世界ランキング4位のフェレール選手に18歳の錦織選手が勝つとは! テニス界に強烈なインパクトを与える試合でした。
私も当時は現役だったので、ダブルスの試合が終わったあとにスタジアムへ見に行き、のどが張り裂けんばかりに応援しました。勝ったときは感動しましたね。
上位選手のフェレール選手のほうが少し受け身になっていたのですが、錦織選手は若さの勢いもあって、アグレッシブに、攻めのテニスで勝ったという感じでした。グランドスラムという大きな舞台で初の4回戦進出。まさに大きなステップを踏めた試合だったと思います。
ナダルに「勝てる日が近い」と感じた14年全豪
もう一つは14年の全豪オープンです。この大会で彼のプレーをひと目見たとき、私が感じたのは「今までのテニスとは違う!」ということでした。グラウンドストロークの一つ一つのショットのクオリティーが、前の年と全然違っていたのです。
1回戦から3回戦でもそれを感じていましたが、特にラファエル・ナダル選手(スペイン)との4回戦ですね。
トップ選手の中でも、ここまで一度も勝ちがなく、一番苦戦していた相手がナダル選手でした。相手のボールに押されて、なかなか錦織選手本来のストローク戦をさせてもらえていなかったのです。
ところが、この試合はストレート負けに終わったとはいえ、「あ、勝てる日が近いな」と初めて感じることができた試合でした。超トップレベルのグラウンドストローク力だと感じました。そんなふうに感じたのは、この時が初めてです。もう、鳥肌が立ちましたね。
新たにコーチに招いた「マイケル・チャン効果」と言うべきなのか、オフの間のトレーニングとフォーム作りがベースにあって、そこにメンタル面もついてきて、すごく充実した1年のスタートとなりました。
昨年のシーズン末には彼もこの全豪での手応えを語っていましたが、彼はあの試合で相当大きな自信をつかんだと思います。見ている私たちにもそのことが手にとるように分かりましたよね。
以前にもノバック・ジョコビッチ選手(セルビア)にインドアコートで勝つなど、大きな勝利もありましたが、さらに違うレベルに到達したなと感じました。だから、この1年はどうなるんだろうと本当に楽しみにしていたのですが、その通りの1年になりましたね。私たちはあの全豪で、彼の才能が花開く瞬間を見たのだと思います。
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