ハリルホジッチが得た「リスク」の対価 指揮官の非凡さを感じさせた3つの要素
このタイミングでなぜアジア勢と対戦?
チュニジア戦からスタメン総入れ替えとなった日本だが、ウズベキスタンに5−1と圧勝した 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
今回、ウズベキスタンとの対戦成績を調べてみて気付いたのだが、過去9試合のうち8試合は、いずれもW杯予選やアジアカップでの対戦、つまり公式戦となっている。唯一のフレンドリーマッチは、96年9月11日に東京・国立競技場で「日本サッカー協会75周年記念大会」と銘打たれ、この時は日本が1−0で勝利している(これが両国の初顔合わせ)。それから実に19年ぶりとなる今回の親善試合。これまでなかなか実現しなかったのは、おそらく興行的な意味合いもあったのだろう。
では、このタイミングで日本がアジア勢と対戦するのはなぜかと言うと、言うまでもなく6月から始まるW杯アジア2次予選をにらんでのことである。組み合わせはまだ決まっていないが、予選のシードは4月9日に発表されるFIFAランキングをもとに振り分けられる。アジアでのランキングの序列は、イラン、日本、韓国、オーストラリア、UAE、ウズベキスタン、中国、オマーンとなっており(上位8チームが第1シード)、今のところウズベキスタンと2次予選で同組になる可能性は低い。おそらく前任者のハビエル・アギーレは、そこまで考えた上で今回のカードをリクエストしたものと思われる。
対戦相手は、集客のアピール度ではあまり期待できないアジア勢。しかもハリルホジッチは、先のチュニジア戦(2−0)で出番のなかった選手を多数起用することを明言している。スタメンの顔ぶれによっては、興行的には度外視となりかねない、東京スタジアムでのウズベキスタン戦。だがフタを開けてみたら、なかなかどうして、いろいろ見どころの多い試合展開となった。
5点のうち3点が「代表初ゴール」
宇佐美(写真)ら3選手が代表初ゴールを挙げるなど、新戦力の活躍が目立った 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
まずは得点経過を中心に、試合のハイライトを振り返ることにしたい。日本の先制ゴールが生まれたのは、開始早々の6分。乾の左からのCKはいったん相手GKのパンチングでクリアされるも、後方で待ち構えていた青山が迷うことなく右足ボレーを繰り出す。弾道は、およそ30メートル先のウズベキスタンのゴール右隅に突き刺さり、青山にとっては代表8試合目にしてうれしい初ゴールとなった。だが、その後はウズベキスタンの献身的な守備に阻まれて追加点を奪うには至らず。前半は日本の1点リードで終了する。
後半、日本ベンチは積極的な選手交代を行い、いずれも面白いように的中した。9分、香川からのパスを受けた乾が一気にバイタルエリアに侵入。いったんはDFがブロックされたものの、左サイドを駆け上がった太田宏介(後半開始時に内田と交代)がこぼれ球を折り返し、これを岡崎がヘディングで決めて追加点とした。後半35分には、相手FKのルーズボールを柴崎岳(後半24分に香川と交代)がハーフライン付近で拾うと、ペナルティーエリアを飛び出していた相手GKの背後に大胆なループシュートを放つ。このボールを岡崎が必死で追いかけ、背後を走る相手選手をブロックしながら自らはボールに触れることなく、しっかりゴールインまで見届けた。ハリルホジッチは、この珍しいゴールシーンについて「彼はチームのために、そうした行動をとった。実に素晴らしいことだ」と岡崎を絶賛している。
その後、ウズベキスタンは後半37分にトゥフタフジャエフのゴールで2点差とするも、わずか1分後に日本がダメ押しの4点目。後半18分に乾と交代した宇佐美貴史が、得意のドリブルで抜け出して右足を振り抜き、ゴール左隅に鮮烈な代表初ゴールをたたき込む。さらに終了間際の45分には、右CKから混戦となり、最後は森重からの浮き球パスを川又堅碁(後半38分に岡崎と交代)が頭でねじ込んで、これまた代表初ゴールとなった。結局、5−1という派手なスコアで日本がウズベキスタンに完勝。特筆すべきは、日本の5得点のうち実に3点が代表初ゴールだったことだ。そして岡崎を除く4人の得点者が、いずれもJリーガーだったことも、個人的にはうれしく感じられた。