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代表合宿から見えたハリルホジッチの志向
厳しい守備と縦に速いスピーディーな攻撃

随所に見られた独特なチームマネジメント

チュニジア戦に挑む日本代表。直前の代表合宿からハリルホジッチ監督の志向を読み解く
チュニジア戦に挑む日本代表。直前の代表合宿からハリルホジッチ監督の志向を読み解く【写真は共同】

「この3〜4日間、選手とは本当にたくさんの話をしてきた。戦術トレーニングによって2つのこと(攻撃と守備)を向上させた。選手たちは規律を持ってトレーニングし、良い雰囲気を作ってくれた。明日は新しい選手、これまであまりプレーしていない選手をプレーさせたい。明日はFIFAランク25位(2015年3月12日発表時点で)のチュニジアと対戦する。(日本は53位で)われわれより高いところにいる相手だが、心の底から勝利を願っている。出場するであろう9人は185センチ以上。空中戦ではわれわれを支配するだろう。それに対し、こちらはグラウンダーの速いパスを使って背後を狙いたい。そして守備のプレッシャーをアグレッシブに正確にやっていきたい」


 新体制初陣となる27日のチュニジア戦に向け、前日会見でこんな意欲を口にしたヴァイッド・ハリルホジッチ新監督。彼が目指す「球際や寄せの厳しい守備、縦に速い攻め」という方向性は極めて明確だ。それを選手たちにたたき込むべく、23日からスタートした大分合宿では、百戦錬磨のベテラン指揮官らしい独特なチームマネジメントが随所に見られた。

守備の課題を映像で明示

合宿ではロープを使った選手の距離感の確認など、守備面での細かな修正も行われた
合宿ではロープを使った選手の距離感の確認など、守備面での細かな修正も行われた【写真は共同】

 まず1日目。全員そろって練習場に到着したかと思いきや、トレーニングはわずか25分間のランニングだけで終了した。長谷部誠は「昨日試合をしている選手もいますし、長い距離移動してきた選手もいるので、今日の練習に関しては僕はそんなにビックリはしていないです」と淡々としていたが、新チーム発足当日の練習がランニングだけというのはやはり前代未聞。見る者を驚かせた。


 けれども、このアプローチはあくまで表向きなもの。ハリルホジッチ新監督はピッチ外の時間をフル活用しようとしていた。「監督はたくさんのメッセージを伝えると言っている。ミーティングも全体、グループ、個別とやっていくと思います」と日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長が説明したように、その晩から選手たちはミーティング漬けとなった。


 初日は時間厳守、外出禁止などチーム内の規律や約束事を徹底する程度だったが、2日目の午前中からは本格的に改革に乗り出した。2014年のワールドカップ(W杯)ブラジル大会や1月のアジアカップで露呈した守備の課題を映像で明示し、選手たちに改善を促したのである。


「例えば、自分たちが寄せていると思っていたレベルがまだまだ寄せきれていないとか、失点している部分はだいたいそういうところ。簡単にマークを外しているとか、ボールを奪われてやられていたりとか、そういう場面(の映像)をチョイスしてこれはダメと。監督は世界で戦っていくレベルの最低ラインをこれからずっと言い続けると思う。自分も同じようなことを考えていたし、それに応えられれば上に行ける」と岡崎慎司が納得の表情で語っていたように、選手自身も腑に落ちるところが大いにあったという。それを踏まえた25日の練習では、非公開で守備面を再確認。マーカーやロープも使いながら選手同士の距離感や寄せの間合いなどを事細かく確認した模様だ。

縦に速い攻撃を意識

 3日目の26日は攻撃面にフォーカス。W杯のギリシャ戦(0−0)、アジアカップ準々決勝のUAE戦(1−1、PK4−5)に象徴されるように、ボールは支配しながらも肝心なゴール前で得点に直結する効果的な攻めができないという日本サッカー界全体の大きな課題にズバッと斬りこんだのだ。


「真ん中では良いボール回しがたくさんできているけれど、試合を決めるところのスペース、ペナ(ルティーエリア)の中とかが攻守ともに物足りないという話はありました。監督も言っていたけれど、奪った後のボールを速く縦につけるのは非常に有効だと思うし、そこがもっとうまくならないといけない。遅攻ももちろん改善しなければいけないけれど、速攻の方はまだまだこれから取り組んでいかないといけないし、そこの伸びしろはかなりあるかな」と吉田麻也も強調していた。イングランドという伝統的に縦に速いリーグに身を投じている彼には、新指揮官の言わんとするところがよく分かったはずだ。


 彼のみならず、新戦力の永井謙佑も「縦の速さだったり、今までのチームに無かったものをしっかり出したい。自分は守備からリズムを作るタイプだし、追いかけて相手があたふたするのも好きだし」と献身的な守備が素早い攻めに直結することを今一度、頭にたたき込んだ様子だった。

元川悦子
元川悦子
1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を4月に汐文社から上梓した

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