代表合宿から見えたハリルホジッチの志向 厳しい守備と縦に速いスピーディーな攻撃
随所に見られた独特なチームマネジメント
チュニジア戦に挑む日本代表。直前の代表合宿からハリルホジッチ監督の志向を読み解く 【写真は共同】
新体制初陣となる27日のチュニジア戦に向け、前日会見でこんな意欲を口にしたヴァイッド・ハリルホジッチ新監督。彼が目指す「球際や寄せの厳しい守備、縦に速い攻め」という方向性は極めて明確だ。それを選手たちにたたき込むべく、23日からスタートした大分合宿では、百戦錬磨のベテラン指揮官らしい独特なチームマネジメントが随所に見られた。
守備の課題を映像で明示
合宿ではロープを使った選手の距離感の確認など、守備面での細かな修正も行われた 【写真は共同】
けれども、このアプローチはあくまで表向きなもの。ハリルホジッチ新監督はピッチ外の時間をフル活用しようとしていた。「監督はたくさんのメッセージを伝えると言っている。ミーティングも全体、グループ、個別とやっていくと思います」と日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長が説明したように、その晩から選手たちはミーティング漬けとなった。
初日は時間厳守、外出禁止などチーム内の規律や約束事を徹底する程度だったが、2日目の午前中からは本格的に改革に乗り出した。2014年のワールドカップ(W杯)ブラジル大会や1月のアジアカップで露呈した守備の課題を映像で明示し、選手たちに改善を促したのである。
「例えば、自分たちが寄せていると思っていたレベルがまだまだ寄せきれていないとか、失点している部分はだいたいそういうところ。簡単にマークを外しているとか、ボールを奪われてやられていたりとか、そういう場面(の映像)をチョイスしてこれはダメと。監督は世界で戦っていくレベルの最低ラインをこれからずっと言い続けると思う。自分も同じようなことを考えていたし、それに応えられれば上に行ける」と岡崎慎司が納得の表情で語っていたように、選手自身も腑に落ちるところが大いにあったという。それを踏まえた25日の練習では、非公開で守備面を再確認。マーカーやロープも使いながら選手同士の距離感や寄せの間合いなどを事細かく確認した模様だ。
縦に速い攻撃を意識
「真ん中では良いボール回しがたくさんできているけれど、試合を決めるところのスペース、ペナ(ルティーエリア)の中とかが攻守ともに物足りないという話はありました。監督も言っていたけれど、奪った後のボールを速く縦につけるのは非常に有効だと思うし、そこがもっとうまくならないといけない。遅攻ももちろん改善しなければいけないけれど、速攻の方はまだまだこれから取り組んでいかないといけないし、そこの伸びしろはかなりあるかな」と吉田麻也も強調していた。イングランドという伝統的に縦に速いリーグに身を投じている彼には、新指揮官の言わんとするところがよく分かったはずだ。
彼のみならず、新戦力の永井謙佑も「縦の速さだったり、今までのチームに無かったものをしっかり出したい。自分は守備からリズムを作るタイプだし、追いかけて相手があたふたするのも好きだし」と献身的な守備が素早い攻めに直結することを今一度、頭にたたき込んだ様子だった。