バルサのクラシコ勝利を支えた2つの個 対照的だったのは指揮官の柔軟性

工藤拓

勝敗を分けた両エリア内の質

守備のタスクはこなしたベイル(白)だったが、攻撃では何もできず 【写真:ロイター/アフロ】

 攻撃面でバルセロナを救ったのがスアレスなら、守備のそれはジェラール・ピケだった。前回のクラシコでは痛恨のハンドでPKを献上し、戦犯の1人にも挙げられたが、ベンチ生活が続いたシーズン前半の屈辱をバネに調子を上げてきた最近のパフォーマンスは全盛期のそれに近いものだ。

 攻撃と同様、守備でもチームとして高い位置でのプレスが効かず、押し込まれた状態からベンゼマやC・ロナウド、イスコ、モドリッチらの個人技に翻弄(ほんろう)される選手が多かった中、ピケだけは1対1の局面をほぼ全て制し、最後のところで相手の猛攻をせき止めていた。

 スアレスのフィットとピケの復活。2つの個が苦しむチームに勝利をもたらしたバルセロナとは対照的に、レアル・マドリーはチームとして良い試合をしながら両ゴール前のプレーの質で及ばなかったために勝利を逃した印象だ。ラモスの復帰により安定感を取り戻すと期待されていた守備陣は、セットプレーと縦パス1本で2失点を献上。攻めてはベンゼマが孤軍奮闘の活躍を見せた傍ら、主役となるべきC・ロナウドは1ゴールを決めたものの精彩を欠いた。何よりベイルは攻撃面で何もできなかった。

 今回のクラシコにおいて、ベイルが何よりも求められたのは守備面でのハードワークだった。ベイルがけがで欠場した前回のクラシコでは、代わりに右サイドでプレーしたハメス・ロドリゲスが90分間守備面でハードワークしながら2ゴールに絡む活躍を見せた。そのためベイルにも同様の活躍が求められたのだが、皮肉にも不安材料だった守備のタスクをよくこなした分、本職の攻撃に労力を割くことができなかったのは残念だ。

 カルロ・アンチェロッティはかたくなにBBC(編注:ベイル、ベンゼマ、C・ロナウドの頭文字)の先発起用にこだわっているが、この日のベイルの役回りならば他にもっと適役はいる。それにベイルをベンチに温存し、ベンゼマに疲れが見えた後半途中に投入された方が、バルセロナとしては嫌だったはずだ。その点、ルイス・エンリケはけが明け直後のセルヒオ・ブスケツを無理に先発起用せず、リードを得た後半半ばに投入して中盤を落ち着かせている。結果論とはいえ、柔軟性という点では後者に軍配が上がった一戦だったと言えよう。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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