宮本慎也氏と伝えた日本野球 元ロッテ・清水直行、NZでの挑戦(2)

清水直行

念願だった野球教室を開催

 子供たちの、ときに真剣で時に楽しそうなまなざしがうれしかった。2015年1月。ニュージーランド・オークランドで、念願だった日本野球での野球教室を開催した。

 さかのぼること、14年3月。元日本代表キャプテンである元東京ヤクルトスワローズの宮本慎也さんを訪ねた。約11年前のアテネ五輪でともに野球代表に選出された時から親しくさせていただいている。もう10年以上だ。現役時代も野球のプレーや戦術面だけでなく、選手会のことなど、さまざまなことで相談にのっていただいたこともある。

「オークランドで野球教室を」と考えた時、真っ先に頭に浮かんだのが慎也さんだった。現役時代に何度もゴールデングラブを獲得し、守備技術では言わずと知れた日本トップ選手だった。そんな選手から指導を受けられれば、どんなに素晴らしいか。自分の思いを慎也さんに伝えると、講演活動などで忙しいにもかかわらず、すぐにスケジュールをおさえる準備をしてくれた。

 実は、この野球教室の開催には、たくさんの現地に住む日本人の皆さんの協力があった。私がツテもなくニュージーランドに踏み込んだ昨年以降、新しく出会った人たちだ。地道にかつ少しずつ広げていった交流の輪。親切にしてくれる皆さんは、現地でかけがえのない財産だ。私がこうして野球振興の活動ができているのは、そんな方々が近くにいてくれているおかげでもある。

 そんな有志の皆さんと意見交換し、新たに発足させた組織が「野球サポーターズクラブ」だ。このクラブを通じて日本から選手やOBを招いて年に1回のペースで野球教室を開催することになった。記念すべき最初の”先生”が慎也さんだった。

宮本氏のフィールディングに大歓声

 約半年間、準備と打ち合わせを重ね、無事に慎也さんがオークランドに到着。野球教室が開催できた。当日は日本人だけでなく、現地の子供たちも合わせて50人ぐらいが白球を追いかけた。保護者らギャラリーも含めると、参加者は総勢100人ぐらいを数えた。慎也さんは丁寧にキャッチボールからゴロの取り方、さらにティーバッティングでスイング軌道やボールのとらえ方などを指導してくれた。

 そして何より、一番の盛り上がりは慎也さんのフィールディングだった。子供たちもそうだが、野球ファンでもあるギャラリーからも大きな歓声があがった。最後に子供たちに「道具の大切さ」を説き、約3時間の野球教室は大成功で幕を閉じた。
 これから、どのぐらいこんな瞬間に出会えるかはまだ分からないが、日本野球を伝えることを、形として残せていっているという確かな実感を手にすることができた。もちろんまだまだ始まったばかりだ。次は、次は、と考えると楽しくなってくる。

※ニュージーランドの野球事情と日本の役割を、元ロッテのエース・清水直行氏による手記から考えるシリーズ企画です。
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著者プロフィール

1975年11月24日生まれ 京都府出身。報徳学園高、日本大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位で千葉ロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回と2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現・横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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