「レースで優勝」への低評価に疑問 世界陸上マラソン代表選考

加藤康博

男子は順当な選考

8月の世界陸上に出場するマラソン日本代表選手が日本陸連から発表された 【スポーツナビ】

 日本陸上競技連盟(以下、日本陸連)は11日、都内で世界選手権(8月22日開幕、中国・北京)のマラソン代表選手を発表し、男子は今井正人(トヨタ自動車九州)、前田和浩(九電工)、藤原正和(Honda)、女子は前田彩里(ダイハツ)、伊藤舞(大塚製薬)、重友梨佐(天満屋)を選出した。

 男子に関してはほぼ順当な選考と言えるだろう。2月の東京マラソンで日本人として3年ぶりの2時間7分台を出した今井は、30キロ以降の落ち込みを最小限にとどめたレース内容も高く評価され、初の代表の座を手にした。

 また前田は、3月のびわ湖毎日マラソンでの日本人トップ。タイムは2時間11分46秒にとどまったが、豪雨低気温の中のレースでフィニッシュ時には体温が33度台まで落ちていたこと、また昨年12月の福岡国際マラソンを2時間8分50秒で走っていたセルオド・バトオチル(モンゴル)もびわ湖では2時間11分18秒だったことを見れば、ここでタイムが出なかったことは仕方がないとの判断だ。
 今回の選考基準に「選考競技会で日本人3位以内」、「原則ナショナルマラソンチームの競技者」とあるため、その要件は十分に満たした。

 3人目は福岡で日本人トップの4位となった藤原。レース内容は後半の積極性に欠いた面もあったが、東京で日本人2位となった後輩の佐野広明(Honda)より順位、タイムで上回ったこともあり、3度目の世界選手権代表となった。

優勝も「積極性を欠き」落選

横浜国際女子で優勝した田中(左手前)は落選となった 【写真は共同】

 記者会見で多くの質問が飛んだのが女子の選考についてである。こちらも3月の名古屋ウィメンズで2時間22分48秒と日本歴代8位の好記録で日本人トップになった前田、同2位で2時間24分42秒の伊藤はタイムで抜け出ており、順当と言える。

 だが昨年11月の横浜国際女子マラソンで優勝を果たした田中智美(第一生命)が落選し、1月の大阪国際女子マラソンで3位だった重友が代表入りしたことに対し、スポーツジャーナリストの増田明美氏がその理由を問いただした。これについてはすでにニュースになっており、目にした方も多いのではないだろうか。

 日本陸連の酒井勝充強化副委員長の回答は概ね、以下のとおりだ。
「選ばれた3名はナショナルチームの立ち上げに際し設けた設定記録2時間22分30秒を目指すレース内容だった。田中選手の優勝は素晴らしいが、世界と戦う上でレース内容が少し物足りなかった。また(他の選考レースである)大阪、名古屋と比べると、横浜は参加していた選手のレベルが少し劣っていた。その横浜も決してペースが速かったわけではないが、(田中は)そこで遅れている」

 田中の走った横浜はペースメーカーがうまく機能しなかった。最初の5キロ(16分56秒)こそ設定に近かったが、そこから暴走気味にペースアップ。10キロまでの5キロは16分35秒まで上がっている。田中はそれにつかず先頭集団から離れ、追い上げる形で中盤から先頭集団に復帰。ラストスパートで優勝を決めたが、その前半の失速が「積極性を欠いた走り」と見られた。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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