U−22日本代表に期待する「伸びしろ」 “ぬるい”ミャンマー戦から見えたもの

川端暁彦

前後半でパフォーマンスの差が生じた要因

鈴木(9番)と中島(10番)の関係性は最初からうまくいっていたわけではない。招集歴の浅い後半のメンバーと差があるのは当然だ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 さて、このミャンマー戦。内容的には圧倒しているように見えただろうし、実際に26対2というシュート数の格差が生じた試合なのだが、日本のボール支配率は56.6%とそれほど突出したものではない。これはボールを奪ったらまずキープではなく、シンプルにフィニッシュまで行き切るスタイルが浸透している裏返しと言える。

 興味深いのは、7点を奪った前半の支配率が53.8%とより低く、2点にとどまった後半の支配率が59.2%と上がっていること。もちろん相手の士気低下といった要因もあるが(サッカーは常に相手ありきのスポーツである)、後半のほうがより手数がかかり、フィニッシュまで行くペースが落ちていたことも確かだろう。ハーフタイムに5人を入れ替えたことで、チームとしての練度が落ちたのも否めない。

 そして手倉森監督は、前後半でパフォーマンスに差が生じたことを「伸びしろ」という言葉で形容する。1年間の積み上げがある選手と、招集歴の浅い選手の間に差が生まれているのは、ある意味で健全な状況だ。たとえば、共に4得点を記録した鈴木と中島の関係性は、昨年のアジア大会を戦う中で確立された感もあるが、決して最初からうまくいっていたわけではない。ゴールへのイメージが共有されたと感じるようなシーンも、チーム結成当初に比べて格段に増えている。逆に後半のメンバーについて言えば、そうした関係性を増やす「余地がある」ということなのだろう。

伸びしろは、競争の中にこそある

海外組に「負けたくない気持ちはある」と語った鈴木。チームの伸びしろは選手間競争の中にある 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 今月27日からのAFC U−23選手権予選(リオ五輪アジア1次予選)では、そんなチームに“海外組”のFW久保裕也(ヤングボーイズ/スイス)と南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)の2人が加わる。共に過去1度招集されただけの選手であり、連係面で難があるのは想像に難くない。が、チームにとっての「伸びしろ」であることも、また確かだ。鈴木が「負けたくない気持ちはある」と率直に語ったように、選手間競争を激化させる起爆剤としての効用も当然あるだろう。

 もちろん、すでに形になっているチームに個性の強い材料が加わることで、マイナスに作用する部分も出てくるだろうが、そこは指揮官の「料理の腕」に期待したい。マカオ、ベトナム、マレーシアと同居したこの1次予選。1位にならねば確実に抜けられないレギュレーションであることを考えれば、決して楽な戦いにはならないだろう。ただ、彼らの目的は予選突破ではなく、あくまでも「リオまで行って、日本の歴史を変える」(手倉森監督)こと。そして、その先にあるA代表での飛躍だ。

 ここまでほぼメンバーを固めてきた指揮官だが「(予選を)勝ち抜いたあとに強化期間をしっかり作りながら、もっともっと高みを目指す」として、3月の予選終了後には、さらに新たな選手を加えてチームを再編していくことも匂わせた。伸びしろは、競争の中にこそある。ただし「その先」のためにも、まずは3月のAFC U−23選手権予選だ。アジア大会で戦いながら、チームとしての完成度を高めていったように、ここでも競争しながらチーム力が上がっていく。そんな戦いを期待したい。もちろん、勝利は大前提として。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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