苦しむドルトムントに訪れた安堵感 悲しみを過去のものに変えるのは勝ち点3

街の空気が変わるもう一つの理由

最下位を脱出したフライブルク戦は、クロップ監督の戦術変更が特に効いた 【写真:ロイター/アフロ】

 この状況を修復できるのは、勝利だけだった。ドルトムントにとって、結果がすべてになっていた。プレーのコンセプト? 関係ない。体のこと? 気にしない。チャンピオンズリーグ? どうでもいい。目の前のフライブルクを倒すことしか、頭にはなかった。だからこそ、ドルトムントは成し遂げたのだ。ようやく最下位を脱出して、ファンに胸をなでおろさせた。

 特に効いたのが、クロップの戦術変更だった。「不運なチロ・インモービレの代わりに、オーバメヤンがFWを務めた。ロイスはウイングだ。プレーメーカーの役割は、香川真司が引き継いだ」。そう分析した『西ドイツ新聞』の記者セバスティアン・バイスリンクは、「スピードあるオーバメヤンを入れたことが、最も意味ある変更だった」と。

『ルールナハリヒテン紙』のディルク・クランペは、こうコメントした。「順位のことを考えれば、フライブルクでのドルトムントの勝利は大きい。傷ついた心に、大事な意味を持つ。長らく忘れられてきた感覚を取り戻したのだ。試合に勝つというのはどういうものか、ということを」。順位を上げたドルトムントに、安堵の感情が広がった。

 このポジティブな感情は先週火曜日、あるニュースによって爆発的に膨らんだ。ドルトムントのスーパースターであり、世界中のトップクラブの補強リストに名を連ねるロイスが2019年まで契約を延長したのだ。買い取られる場合の条項も、「もし」という一言も入っていない。「強いシグナルだ。内部的にも、外部的にも」。『西ドイツ新聞』のバイスリンク記者はそう評する。特にこのような状況下では、こうしたニュースの影響力は計り知れない。勝利とロイスの契約が、クラブの団結力を再び高めた。確かに、街の空気は変わったのだ。

今見すえているのは勝ち点3のみ

 ただし、その安堵の雰囲気というのは、壊れやすいものでもある。また急に冷え込めば、氷のようにもろくも崩れ去る。勝ち点3を積み上げていけば、ドルトムントにまつわるニュースは、前向きなものばかりになるだろう。「僕たちは順位表の地下室から一刻も早く抜け出すために、本当にハードワークしています」。そう説いたのは香川だ。ドルトムントは今、目の前の試合のことしか考えていない。シーズン当初の目標にたどりつけないことは承知の上だ。拭い切れない最悪のシナリオへの恐怖がある。降格という言葉は、あまりに重い。

 フライブルク戦の勝利は、大事な一歩だった。次の一歩も踏み出せた。スコアは関係ない。また前進することができれば、悲しみを過去のものに変えることができるだろう。安全な位置まで浮上して、初めてフロントは来季のことを考え始められる。

 ドルトムントとともに進撃するのは、誰になるのか。今のところ、ロイスがその一員になることは確かだ。イルカイ・ギュンドアンとフンメルスも残るだろう。香川も未来のドルトムントを支えていたいと思っている。ブンデスリーガの1シーズン日本人最多得点記録(13得点)を、岡崎慎司から取り戻さなければならないのだ。

 第21節マインツとの「シンジ対決」は勝利(4−2)した。自身のゴールはならなかったが、香川の目は3ポイントだけに注がれている。ドルトムントというチームの一員であるために。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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