錦織選手は気持ちを新たにひとつずつ=杉山愛コラム「愛’s EYE」

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今まで経験したことのない境地

全豪オープンでベスト8に入った錦織選手。上々のシーズンインとなった 【写真:テニスジャパン/アフロ】

 2月1日に男子シングルス決勝を終えた全豪オープンテニス。錦織圭選手(日清食品)の優勝を期待していた方には、ベスト8は少し物足りない結果に映るかもしれません。
 でも、グランドスラムで2週目まで勝ち残ること、ベスト8に残ることは決して簡単ではありません。開幕戦のブリスベン国際でもベスト4ですし、今シーズンは好スタートが切れたと言っても良いと思います。

 今年の錦織選手は、相手に向かってこられる立場、研究される立場として、今まで経験したことのない境地に身を置いてツアーを回らなければなりません。また、昨年大活躍した分、ディフェンドするポイントもたくさんあります(注:ランキングポイントは52週間=1年間で失効するため、同等のポイントを新たに獲得=ディフェンドしなければランキングが下がってしまう)。

 それを気にせず自分の力を出しきることができるかどうかで、トップ5にステイできるか、さらに上に行けるかが決まってきます。その意味で、全豪での、特に1回戦から3回戦までのプレーは立派だったと思います。

錦織選手にシード選手の風格

 周りの期待は高まり、良い調整ができて、調子もよかったことで自分自身への期待も高かったでしょう。そういう時こそ、勝ち上がっていくのは案外難しいもの。逆に、昨年の全米オープンのように、けががあって不安を抱えながらの開幕。「できるかな?」というくらいの感じで大会を迎えた時は、自分自身への期待感がない分、(楽に戦えるというと語弊がありますが……)気持ちの中でエクスキューズがあるため、「できるところまでやろう」という考え方に徹することができるのです。

 ところが、今回の全豪のようにすべての準備が整っていると、ワクワクする気持ちが逆にプレッシャーにも感じられ、緊張が高まるというのはよくあることです。

 しかし、錦織選手はそこを上手に整理しながら戦いました。3回戦までの相手はランキングでは格下で、思い切りぶつかってきましたが、それをうまく受け止め、最終的には自分のテニスを見せて、尻上がりに良い形で試合を終えていました。シード選手の風格さえ感じましたよね。

 ダビド・フェレール(スペイン)との4回戦も、上位シード選手を相手に、格の違いを見せたというか、錦織選手の成長を見て取ることができた試合でした。

ラリーに持ち込めば

 1週空いて、次の大会(日本時間2月10日開幕)が米国で行われるメンフィス・オープンです。錦織選手は第1シードですが、選手の顔ぶれを見ても、決して楽に勝てる相手はいません。インドアのハードコートで行う大会ですから、ビッグサーバーが有利なのですが、予想通り、名だたるビッグサーブの持ち主がこぞってエントリーしています。1つ1つが簡単な試合にはならないでしょう。

 ただ、錦織選手にとっても、去年まで2連覇している相性のいい大会です。球足の速いサーフェスですが、相手がビッグサーバーでも、リターンを返してグラウンドストロークのラリーに持ち込んでしまえば……、というところはあると思います。実際、去年もリターンを返してインプレーに持ち込めば錦織選手の優位は明らかでした。相手のサーブをなんとか返してしまえば、錦織選手の攻撃力、展開の速さがものを言うでしょう。

 優勝してポイントをディフェンドしなくてはいけないというプレッシャーもなくはないと思いますが、それより、自分の好きな場所に戻ってくることができたという気持ちの方が大きいでしょう。ディフェンドを考えるより、気持ちを新たに、ひとつずつ、という考え方が大切なのかなと思います。 


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