花より実を取った松本山雅FC 3つの課題克服でJ1定着を目指す
J1を戦う陣容は整った
新加入選手発表記者会見を行った松本山雅。限られた予算をやりくりして戦力を整えた 【写真は共同】
新シーズンを前に周囲の熱は高まる一方だが、過去の例を挙げるまでもなく、新参クラブにとってJ1元年が“いばらの道”となることは間違いない。予算規模では間違いなく16位以下のプロビンチャ(地方の中小クラブ)がいかにしてJ1残留、そして定着するのか。容易ならざるミッションを果たすために何が必要なのか――。
1月20日、松本市内で行われた新加入選手発表記者会見で、目指す方向性の一端が見て取れた。加藤善之GMは今オフの補強ポイントについて、「一.J1で戦える守備組織の構築、二.FW2名(船山貴之と山本大貴)が抜けた穴を埋める補強、三.競争力のあるメンバーによるチーム力の底上げ」の3点に重点を置いた、と述べた。まさにその3点こそ今季の松本が直面する課題で、その克服こそミッションを達成するための必須条件となる。そして、新加入選手の顔ぶれを見る限り、それが果たせるだけの陣容は整ったと感じた。J1経験者こそ少ないものの、昨季は所属先のチームで主力を張っていた選手ばかり。試合勘という意味でも問題はなく、限られた予算をやりくりしながら、花よりも実を取ったチーム作りを敢行したと言える。
期待を集める坂井達弥
アギーレジャパンで日本代表に選出された坂井達弥を獲得 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
リーグ2位の失点の少なさを誇った最終ラインから、このオフには期限付き移籍だった犬飼智也が清水エスパルスに復帰し、多々良敦斗はベガルタ仙台へ完全移籍。両名の抜けた穴は小さくないが、質量ともその穴を埋めて余りあるだけの補強に成功した。ファジアーノ岡山から後藤圭太、京都サンガF.C.から酒井隆介を完全移籍で獲得。そして、昨秋の日本代表入りで一躍注目を浴びた坂井達弥がサガン鳥栖から期限付き移籍で加入した。なかでも注目が集まるのは、日本でも数少ない左利きの大型センターバック(CB)の坂井。松本に加入して以来、「(契約の関係上、出場不可の鳥栖戦以外)全試合に出場するつもりで来た」という強い決意を繰り返し述べている。代表に選出されたとはいえ、昨季はリーグ戦出場9試合にとどまるなど不完全燃焼に終わり、今季に懸ける思いは強い。クラブもまた、坂井については代表入り以前から調査していた経緯があり、大きな期待を寄せている。彼のストロングポイントである空中戦の強さと左足からのフィードは、まさに松本のスタイルに合致しているからだ。1次キャンプでは右膝痛で無念の別メニュー調整となったが、まだ時間に猶予はある。「試合を観て早くサッカーがしたいと思った。100パーセントの状態でチームに復帰したい」と2次キャンプ以降の巻き返しを目指して、捲土(けんど)重来を期している。