佐藤真海が伝える“スポーツのチカラ” 皆が尊重し合える社会を残すために

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

最終プレゼンに込めた思い

東京五輪・パラリンピック招致活動では英語でのプレゼンも経験。本番さながらのリハーサルを何度も重ねたという 【スポーツナビ】

深山 2013年シーズンは世界選手権で表彰台に上ったり、招致活動で大変忙しいシーズンになりました。

佐藤 3月に東京にIOC(国際オリンピック委員会)の委員が視察に来るときにプレゼンテーションをしたのが最初でしたね。英語が流暢じゃなかったので本当に大変だったんですけど、自分の自己紹介から東京のプランまで英語で話せるように覚えたり練習したりして臨みました。アスリートだから偉い人の陰に隠れてっていうこともできたと思うのですが、私とフェンシングの太田(雄貴)選手がメーンでやっていて、自分たちが思い切ってやらないとアスリートのパッションが伝わらないわけですよね。なので、一回一回の機会をすごく大事にして意識するようにしました。

深山 そして(9月にアルゼンチン・ブエノスアイレスにて)最終プレゼンテーションを迎えるわけです。ここで主張したメッセージについて教えてください。

佐藤 パラリンピックを通じて、大切なものは私が失ったものではなくて、私が今持っているものであるということを、そのスピーチの中に込めました。4分間のスピーチが皆さんに共感していただけるものになったとしたら、一言たりともうそ・偽りはないというか、自分の心の中の思いと経験をすべて訴えた感じですね。

深山 だから人の心を打ったという。IPC(国際パラリンピック委員会)のフィリップ(・クレイバン)会長が後に、「日本人は感情を表すのが得意ではない。しかし、佐藤真海のプレゼンテーションは感動的で、IOC委員の気持ちを一気に引き寄せた」と記者会見で語っていました。

佐藤 うれしいですね。確かにこのスピーチの練習は1週間しかなかったのですが、何をしていたかというと、恥ずかしさを捨てて覚え切る作業です。本番さながらにライトを受けてステージに立って話すというリハーサルを何度も繰り返し、その中で恥ずかしさを捨てていって、ものにしていきました。

深山 競技と一緒ですよ。(佐藤さんは)本番に強いんだから。

佐藤 でもこの経験は初めてでしたし、競技で緊張して大崩れすることはなかったので、「この緊張は自分にとっていいものだ」と言い聞かせて考えましたね。

深山 まさにそれが“スポーツのチカラ”ということになりました。

パラリンピック会場を満員にするためには?

深山 ロンドンパラリンピックで佐藤真海が感じたこととは?

佐藤 ロンドンでは(観客が)純粋にスポーツを見に、応援しに来ていたんです。子どもたちが親の手を引っ張って連れてきて、選手の名前を呼んで応援している姿が見られました。多分、日本の子どもたちに、誰かパラリンピックの選手の名前を知っているか尋ねたら知らないですよね。それくらい、トップアスリートとして、オリンピアンとパラリンピアンが並んでいたという状況だったのかなと。

深山 ということは、急にそうなったわけではなくて、いろんな理由があったはずなんです。その1つが「Meet the Superhumans」というテレビCMです。これはイギリスの特徴ある編成をしている「Channel 4」という放送局でずいぶん放送されていたようですね。

佐藤 もう純粋にアスリートの肉体美というか力強さですよね。パラリンピックの要素に障害を持つことがありますが、それが例えば車のクラッシュ、戦争、妊婦さんのおなかの中のエコーという映像で一瞬一瞬に挟まれていました。まさか自分から障害を持つわけではないじゃないですか。私も含めて、ある日突然このような運命を受けて、それでも不安や葛藤を吹っ切って前に進んでいくというのをシンプルに表していると思います。日本ではまだまだこういったものは見られないですよね。どうしても感動ストーリー、障害を乗り越えて頑張って走っていますみたいなところで終わっちゃうんです。なので、このように一歩上にステージを上げていかないと、この満員のスタジアムというのは日本ではできないのかなと思います。

 またパラリンピックに3大会出ましたけれど、ボランティアの存在感もすごく大きいんですね。ボランティアと言っても日本で持っていたイメージと違って、大会を作っている。ロンドンの場合は「ゲームスメーカー」という呼び方をしていましたし、実際に大会を盛り上げて作っていく人たちという感じだったんです。

深山 ボランティアの応募が24万人いたというのがすごいですよね。

佐藤 そうなんですよ。日本もそのくらい応募があるといいですね。今、英語が話せなくても、5年間あれば日常会話くらいできるんじゃないかなと。

深山 みなとスポーツフォーラムは今日がちょうど50回で折り返しですが、目指すものは“見るスポーツ”、“するスポーツ”、“支えるスポーツ”と考えています。これはまさにね、こうやってみんなで支えていこうということではないでしょうか。

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