「世界」で活躍する田中史朗と堀江翔太 ラグビーW杯ベスト8への挑戦

斉藤健仁

ジョーンズHC「田中と堀江は日本で一番の選手」

身長166センチと小柄だが、強気なプレーが光る田中 【斉藤健仁】

 決勝も当然、2人が際立つ展開になれば、パナソニックが優勢に進めるはずだ。一方のヤマハ発動機は、田中の中学時代からのライバルで今シーズン好調のSH矢富勇毅が控える。突破力と長いパスが武器の矢富が田中を上回るようなプレーができるかが勝負の鍵を握る。また武器とするセットプレーで、パナソニックFW陣、特にHO堀江にプレッシャーを与えたい。

 決勝が終われば2人は南半球に飛び、田中はハイランダーズ(ニュージーランド)、堀江はレベルズ(オーストラリア)で、スーパーラグビーで3年目のシーズンを迎える。ラグビー日本代表を率いるエディー・ジョーンズHCは「田中と堀江はプレーの質が高く自分というものを持っている、日本で一番の選手。だからスーパーラグビーでプレーできる」と信頼は厚い。彼らは当然、2015年のワールドカップでベスト8を目指す日本代表でも中軸だ。シーズンが終了した6月以降に、日本代表に合流する予定となっている。

W杯のベストフィフティーン選出に向けて

W杯のベスト8進出を「本気で目指したい」と語る堀江 【斉藤健仁】

 最後に2度目となるワールドカップへの思いを聞いた。まず堀江はいう。「僕はあまり大きな目標は立てません。選手としては目の前の試合を戦っていきたい。今回は、最低一勝はしたい。またエディーさんが『ベスト8』が目標と言っているので、本気で目指したい。壁が出てくると思いますが、ファンの応援を力にして、一緒に乗り越えていきたい」。

 田中も続ける。「『やっときたな』という思いもありますが、先を見ずに一戦一戦して、その先にワールドカップがあるというイメージです。ワールドカップではどの相手でも少しは勝算があると思います。予選プールで3勝しないとエディーさんが言う『ベスト8』は少し難しくなりますが、信じてやっていきたい」。

 ジョーンズHCはワールドカップに向けて「フミ(田中)はもっと速く走れるようにならないといけない。ショータ(堀江)はもっと体を大きくしてほしい」と要求する。それでも名将は大きな期待もかける。「2人のうちどちらか1人でもワールドカップのベストフィフティーンに選出されるようなことがあれば、日本代表も目標(=ベスト8)を達成することになるでしょう」。

 日本代表は、ワールドカップにおいて過去7大会で通算1勝21敗2分と大きく負け越している。だが「3足のわらじ」を履き、スーパーラグビーでも戦う2人のさらなる成長と経験が、新しい扉を開く大きな力となるはずだ。世界を知る2人の「野武士」こそ「ブレイブブロッサムズ(勇敢な桜の戦士たち)」に欠かせない大きな存在である。

【書籍紹介】

「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由〜最強ジャパン・戦術分析〜」 【ガイドワークス】

「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由〜最強ジャパン・戦術分析〜」
斉藤健仁著
ガイドワークス
定価1,650円+税

 日本のラグビー界を牽引する二人の男、SH田中史朗(たなか・ふみあき)とHO堀江翔太(ほりえ・しょうた)。

 彼らはなぜ、現在のラグビー日本代表に必要不可欠な存在なのか。
そして、日本代表を指揮するエディー・ジョーンズ ヘッドコーチが標榜する戦術において、具体的にどのような役割を果たしているのか。

 過去の試合における二人のプレーを振り返り分析しつつ、本人たちへのロングインタビュー、これまでの彼らの歩み、周辺取材などを通じて、史上最強のラグビー日本代表が体現しているラグビー像を描き切る。

 2015年のラグビーワールドカップ観戦、ひいては、日本で開催される2019年のラグビーワールドカップに向けて、必読の一冊! 

■目次

第1章
日本で一番の“パイオニア”
―エディー・ジョーンズが語るフミとショータ―

第2章
“判断”のタクト SH田中史朗
―ファースト・サムライの飽くなき挑戦と進化―

第3章
献身のフリーマン HO堀江翔太
―不可能を可能にした日本人FWの世界進出―

第4章
“もっと”を目指すアティテュード
 ̄トニー・ブラウンが語るフミとショータ ̄

第5章
エディー・ジャパンの戦術分析
―モーション・シェイプ・リンケージからディフェンスシステムまで―

第6章
ポジションは違えどライバル
―対談・田中史朗×堀江翔太―

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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