川淵チェアマン「解決できないはずない」 第1回タスクフォース会議 報告記者会見

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バスケットボールはみんなが気軽に楽しめる

ドイツ協会の会長を務めるバイスチェアマンは「ドイツでの経験を生かしたい」と意気込みを語った 【スポーツナビ】

――川淵チェアマンのバスケに対するビジョンは?

川淵 僕の孫は、女の子ですけれど、バスケットボールを小学校から6年間やっていたんです。ずっと補欠で、なぜ試合に出さないか、僕は不満がありました。でも最近は、どんな下手な子でも試合に出させる仕組みになっています。これこそが本当にスポーツをエンジョイさせるためのキーポイントだと思っています。

 バスケットボールは手を使って、誰もが気軽にやれるスポーツです。日本の子どもたちの運動能力低下は、恐ろしいくらいです。そういった中で手軽にやれるバスケットボールは、一流選手を目指すことでなくても、一緒に身体を動かしてスポーツすることの楽しさを覚えやすいスポーツです。そういった意味でもっと発展してほしい。3×3もこれから発展していくでしょうけれど、例えば点の取れない子に取らせてあげようと一生懸命ボールを回してあげて、点を入れたときの仲間の興奮や、点を入れた子の興奮を見ると僕は涙が出てきましたね。

 バスケットボールにはみんなが気軽に楽しめるスポーツとしての良さがあるんです。そういうスポーツであるバスケットボールが発展していけば良いと思っています。

――バイス氏はドイツ協会の会長をされている。東西ドイツ統合の経験が日本でも参考になるのではないか?

バイス 川淵チェアマンの話に少し補足する。バスケットボールマンではない川淵さんが、すごく素敵な説明をしてくれた。バスケットボールというのは1人でもプレーし、達成感を味わえるスポーツだ。魅力は誰でもプレーができることだ。団体競技としても、友達が何人か集まり、ゴールがあるところまで行けば、学校でも気軽にプレーできる。

 ドイツについての質問に答えると、ドイツの経験をそのまま日本に移すつもりはない。もちろん、過去の経験を一つのアイデア、アドバイスとしては提示させてもらう。

 我々は協会の組織変革を行った。その中でカギになったのが、専属の職員に対してより大きな責任を持たせたことだ。我々の理事会は専任職で、こちらはボランティア職。ドイツがそこまで移行するのには、時間がかかった。でもその結果として、ドイツのバスケットボール協会はモダンで活気があるものになっている。

 私たちはリーグ改革を行い、連盟を会社組織にした。協会に、各チームから参加してもらう形を取ることで、バスケットボールに関わる人たちが連帯感を持つようにしたわけだ。当然、摩擦は各所に起こるけれど、それぞれが共通のビジョン、一つの目標を持つことで、1部から3部までの組織を作り上げている。1部リーグは協会から支援もしているが、独立して活動している。テレビとの放映権契約や財政に関しても独立した経営を行っているのだ。独立しているとはいえ、1部リーグでも、代表選手がリーグや協会のけん引力であることを承知している。若手の育成も協会と連携しており、一緒にバスケットボールを盛り立てている。

 実はサッカーで有名なバイエルン・ミュンヘンが、3年前にバスケチームを設立し、昨年はドイツチャンピオンになっている。新しいチームでありながら、ほぼ全試合で約1万枚のチケットを売っていて、年間予算も1400〜1500万ユーロ(約19〜20億円)になっている。他チームの経営も安定しており、観客数は年々増加傾向にある。私としてはドイツでの経験を生かし、日本への提案として、議論のベースになればと思っている。

東京五輪は目標ではなく通過点

――新リーグの開幕時期は計画通り16年の秋で進めるのか? 新たな協会の執行部はゼロから作り直すのか?

川淵 開幕まで2年間はどうしても時間がかかると言いました。とりあえずの目標は16年の10月からやれればと考えています。あまり遅れると、新しいトップリーグの盛り上がりも期待できません。一気呵成(かせい)に行く必要があると思います。それを目標に、僕としてはやりたいと思っています。

 組織改革については、正直に言うと分かりません。どういう人材がいるかも知らない。議論を通じて、良いやり方が見つかればと思っています。僕なりのアイデアは、現時点でありません。

――日本は新しいプロリーグを、過去に何度も立ち上げようとして失敗している。今回も案をまとめたときに賛成できないチームが出てきたらどう対処するのか?

川淵 初めにbjリーグ、NBL、その他下部リーグのチームに対して、今回の決定に従うという誓約書みたいなものが取れるかどうか。bjリーグがスタートしたときは、協会がそういうことをやってはいけないという中、除名された中でスタートをしています。そういう形で、地方協会や関連アリーナとの結びつきなどをしっかりすることで、予想外のクラブが出てこないよう、周辺整備が必要だと思っています。

 もっと言えば、バスケットボールに関係ない奴が決めて、守っていられるかとなった場合、誰がどう担保するんだという不安がありました。それは協会の梅野(哲雄)会長代行以下が順守していくということです。やはり文科省、JOC、体協(日本体育協会)、トップリーグ連携機構を含めて、これを無視したらバスケ界は成り立たない。初めはそれがすごく心配でしたけれど、心配しなくて良いということです。

――タスクフォースの名称について、2024の意味は?

バウマン 2024とは、単純に10年後ということだ。FIBAとしては、誰がこのタスクフォースに関わるにしても、10年という長期のスパンで計画を立ててほしいということで設定した。20年には東京五輪もあるし、22年のワールドカップ、24年の五輪も来る。そういった大会に日本が予選を突破して、参加できるようなベース作りをしていけるよう、長期のスパンを設定させてもらった。

 20年の東京五輪を目標、終点にするのでなく、一つの通過点にして、バスケットボールをステップアップさせる起点にしてほしいと思う。

――タスクフォースの話し合いの進め方は?

川淵 僕のスケジュールは1週間に1回時間を持って、意見を聞いたり、各クラブの人に来てもらう日を取っています。これはさらに増えていくでしょう。できるだけ多くの人に会い、できるだけ多くの議論を重ね、会議のときに、煮詰まったものをいかに出していくかが勝負です。そこでいろいろな話をしていては、スピード感がまったく足りないし、そういうことは考えていません。次の会議までの間に、どれだけ内容が詰まった議論ができて、それを提案できるかが勝負だと思います。

 こういう議論は、同じような話の繰り返しになるんです。政治の世界でもそうですが、こういう話はいつも堂々巡りですよ。堂々巡りをさせないところで、きちんとどう切るかが勝負だと思っています。

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