錦織、4強逃すも実感した頂点への過程 全豪オープンテニス

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序盤から勝負を仕掛けたワウリンカ

準々決勝敗退が決まり、がっくりと肩を落とした錦織 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 テニスの四大大会初戦、全豪オープン(オーストラリア・メルボルン)は28日、男子シングルス準々決勝が行われ、第5シードの錦織圭(日清食品)は、昨年の優勝者で第4シードのスタン・ワウリンカ(スイス)にセットカウント0−3のストレートで敗れ、全豪オープン初のベスト4進出はならなかった。

 錦織はワウリンカとこれまで1勝2敗。昨年の全米オープン準々決勝での鮮やかな逆転勝ちが好印象として残る対戦だったが、この日のワウリンカは目の色が違った。立ち上がりから果敢なサービスゲームを展開。錦織がリズムをつかむのを警戒したのだろう、リターンからの長い打ち合いを避けて、積極的に勝負を仕掛けてきた。ショットが左右ともに強い。打ち合いになれば、持ち味の片手打ちバックハンドからのカウンターで脅かし、第4ゲームにサービスブレークしてプレッシャーをかけた。

 一方、錦織も第8ゲームのサービスゲームで15−40と追い込まれながらもキープして反撃をうかがったが、第1セットはそのままワウリンカが奪った。

最後まで諦めなかった錦織

 この試合のカギは第2セットにあった。ワウリンカは昨年の全米オープンでも第1セットを奪ったが、そこから守りに入り、打ち合いに持ち込んで墓穴を掘っていた。一方の錦織は、第2セットを奪い返して長丁場に持ち込めれば、逆にプレッシャーをかけることもできた。
 ただ、このハイレベルの戦いでは、さすがにワウリンカも同じ轍(てつ)は踏まない。第2セットの第2ゲーム、いきなりダブルフォルトをもらった錦織は、バックハンドのリターンエースでつなぎ30−0と迫った。ワウリンカはここから、時速210キロのサービスウイナー、さらにサービスエースを2本を続けて反撃を許さなかった。ワウリンカはこう振り返る。

「きょうは最初の2セットでよく集中できていた。積極的な姿勢をキープできたし、圭のバックを攻め続けることで、彼を守りに追い込むことができた。ストレートで締めくくれたのが良かった。第4セットまでもつれれば、それはまた別の流れになっていた」

 その意味で第2セット、ゲームカウント2−2で迎えた錦織のサービスゲーム(第5ゲーム)がポイントになったかもしれない。15−30からこの試合で最も長い24本のラリーの応酬。その22本目、ワウリンカのバックハンドが鋭い角度でクロスに走った。追いすがる錦織のラケットがすっぽ抜けて15−40にされ、ここをブレークされた。
 錦織は第7ゲームで3本のブレークポイントをかわし、第10ゲームには2本の長いラリー戦に勝ってブレークバック・ポイントまで迫ったものの、あと一歩、ワウリンカの集中力に逃げ切れられた。

 錦織は、これまでグランドスラムで2セットダウンからの逆転勝ちを収めたことが2度ある。この日もその粘りを見せた。第3セット、サービスブレークを1度ずつかわして入ったタイブレークでも諦めなかった。1−6とリードされながら6−6まで追いつく。もしかしたら……スタンドにそんな気を起させたのが、錦織圭の現在の力だ。ただ、第3セットの12ゲームのうち、9ゲームがラブゲームという流れは、打ち合いながらリズムを刻み試合を作り上げたい錦織好みのものではなかった。サーブ&ボレーで何とか突破口を開こうとし、実際にそれは12回中11回と成功しているのだが、決定的な流れを得るまでには至らなかった。

3年前と濃さが違うベスト8

試合後、錦織(左)はワウリンカと健闘をたたえあった 【Getty Images】

 この大会のベスト8は3年前に続いて2度目だが、今年の8強にはまったく違う中身の濃さがある。初めての第5シード、すなわち1週目に挑戦される立場を味わってから、頂点に向かうプロセスを実感した結果だ。大きな自信になるはずだ。

「きょうはサーブが良くなかったので、リズムがつかめなかった。相手は最後まで攻撃的で、素晴らしいテニスをしていた。見事としか言いようがない。勝ちたかったけれど、(この大会は)全体的には良かったと思う。いままでにないくらい、警戒された中で勝つことができた。違う経験を次のグランドスラムに生かし、ベスト4、決勝まで入りたい」(錦織)

 テニスのグランドスラムは、4年に1度の五輪とは違い、1年間に4度ある。もっと先まで見たかった気持ちはやまやまだが、今季、上々のスタートを切ったと言ってもいいのではないだろうか。

(文:武田薫)
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