センバツ切符を決めたポイントは? 明暗を分けた「最後の1枠」の理由

松倉雄太

21世紀枠で出場を決めた桐蔭(和歌山)。21世紀枠3枠目の選考では歴史がポイントの一つになった 【写真は共同】

 第87回選抜高校野球大会(3月21日開幕〜兵庫・甲子園球場)を決める選考委員会が23日、毎日新聞社大阪本社で行われ、出場全32校が発表された。

 今回も、1枠の北海道、2枠の東海と北信越を除き、各地区のラスト1枠の選考は激戦になった。選考委員会の議論と、終了後に行われた記者会見から最後の1枠を決めた要素を探る。

投の2枚看板を持つ八戸学院光星に吉報

 仙台育英高(宮城)が明治神宮大会枠を持ちかえり、東北地区の選考枠は「3」に。ベスト4の八戸学院光星高(青森)と鶴岡東高(山形)、延長15回引き分けを2度経験した花巻東高(岩手)が3校目を決める時の対象になったが、優勝した仙台育英高に惜敗した八戸学院光星高の中川優(2年)と呉屋開斗(2年)の投手力が決め手になり甲子園切符をつかんだ。

1年生左腕が二松学舎大付高の決め手

 選考枠「6」の関東・東京地区では、基本数である関東4と東京1を選出した後、関東大会ベスト8の東海大甲府高(山梨)と東京大会準優勝の二松学舎大付高(東京)で最後の1枠が比較、検討された。

「迫力ある攻撃が魅力の東海大甲府高と二松学舎大付高の総合力で意見が分かれた」(磯部史雄・地区別小委員長)と説明があり、二松学舎大付高の左腕・大江竜聖(1年)の落ちついたマウンドさばきや、東京大会で6試合を完投した安定感が最終的に評価された。

兵庫勢0も「やむを得ない」

 最多の選考枠「6」を有する近畿地区。まず実力面での評価で、ベスト8の大阪桐蔭高(大阪)が4番目、ベスト4の奈良大付高(奈良)が5番目で選出された。最後の1校は、近江高(滋賀)、箕島高(和歌山)、北大津高(滋賀)のベスト8組と、近畿大会1回戦敗退ながら兵庫県大会優勝の神戸国際大付高が選考の土俵に残った。

 最終的に近江高が選出される過程で杉中豊・地区別小委員長は、エース小川良憲(2年)が見せた1回戦(PL学園高戦)でのピッチングを高く評価したことを強調。時系列で桐蔭高(和歌山)の21世紀枠選出が先にあったことに対する地域性を含めた影響に関してはきっぱりと否定した。さらに甲子園球場のある兵庫県からの選出が0になることに対してよりも、あくまで実力本位で選考した旨を話した。これに関して、全体の選考委員長でもある奥島孝康・日本高校野球連盟会長は、「(兵庫勢が)今回選出されない苦情が出てくるのはあり得るが、やむを得ないと思います」と記者会見での質問に答えた。

山陰地区の地域性が決め手に

 選考枠「5」の中国・四国地区では、中国大会ベスト4の米子北高(鳥取)と四国大会ベスト4の明徳義塾高(高知)でラスト1枠を決める議論が行われた。

 山下智茂・地区別小委員長は、中国大会で優勝した宇部鴻城高(山口)に0−1で惜敗した試合内容と、山陰地区がなかなか中国大会を勝ち上がれていない点で、地域性をポイントの一つとして挙げた。

 会見では四国大会で当時の監督が不祥事を起こした今治西高(愛媛)についても質問が飛び、大会事務局の大坪康巳・毎日新聞大阪本社スポーツ事業部長は「これまでは(選考規約として)明文化されていなかったが、1月15日の運営委員会で指導者の不祥事があった場合でも、原則としてチームの出場は差し支えない。ただし、社会的に大きな不祥事の場合は別途、運営委員会で協議すると明記した」と説明した。

大敗もエースの投球内容を評価

 4校目として選出された九産大九州高(福岡)が準決勝で九州学院高(熊本)にコールド負けしたことについて記者会見で質問が飛んだ。
 片岡成夫・地区別小委員長は、「九産大九州が先行して、(エースの岩田将貴は)2回まで4三振を奪った。エラーが重なって3回に逆転されたが、点数ほどの差はなかった。トーナメントの怖さ」と回答。岩田の投球内容に魅力を感じた部分も選考のポイントにあったようだ。

21世紀枠は今年も難しい選考に

 21世紀枠は西日本から松山東高(愛媛)、東日本から豊橋工高(愛知)を選出。特別選考委員の作家・あさのあつこ氏は「今回も悩ましい選考会でした」と振り返ったが、3枠目は「高校野球を草創期から支え発展に貢献した学校であり、高校野球100年の節目の年に評価したい」という意見が出され、歴史がポイントの一つになり戦前の名門・旧制和歌山中の流れをくむ桐蔭が選出された。
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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