中井貴一を支えるスポーツの力 オヤジ甲子園と39度猛暑ノック

しべ超二

【写真:中原義史】

中年を迎え再び聖地を目指す元高校球児

 中学・高校ではひたすらテニスボールを追い、インターハイ出場の経験も持つ中井貴一。1月17日(土)全国公開の映画『アゲイン 28年目の甲子園』では中年を迎え再び聖地を目指す元高校球児に扮したが、テニスと野球、競技は違っても自身の青春期が思われ、共感する部分も大きかったという。爽やかなイメージで泥臭さとは縁遠い中井だが、テニスで培った精神=根性は今も自らの支えとなっている。テニス時代を振り返り、仲間の涙で実感した甲子園、そしてスポーツの力を語る。

テニスで培われた“誰にも負けない根性”

【写真:中原義史】

「この作品は46歳の設定で、このぐらいの世代は非科学的なことから少し逃れつつあったんですよね。でも、僕らの時はもう“非科学的ど真ん中”でしたから、水を飲んじゃいけない、ウサギ跳びをやれ、ストレッチより腹筋・腕立てだ、ってそういう時代でした」

 体にいいことなんて何もないんですよ、と苦笑いする中井だが、次のようにも続ける。

「でも、その逆で言えば根性がつくんです。水を飲まず、日中の炎天下で合宿をやっていましたから。今ほど暑くはなかったけど、それでも30度ぐらいの中、テニスは練習時間が長いので、朝9時から夜の8時ぐらいまでずっと練習があるっていう状況にいました。そういう意味では、誰にも負けない根性っていうのはその中で得たと思います」
 中学からテニスを開始した中井だが、最初の1年はラケットを持たせてもらえずひたすらボールボーイ。50人近く入った新入部員は2年になる時には9人程に。ようやく2年生からラケットを握っても、先輩たちはライバルでもあるため手取り足取り教えてくれるようなことはなく、壁打ちや“見て覚える”中で技術を磨く日々だったという。だが、中井はそんな毎日を「学校に通ってるというより、テニス学校へ通っているみたいな感じでした」と笑って振り返る。

「身についたのは根性だけだったかもしれないけど、それが培われたのは確実にスポーツでした。俳優っていう仕事も、歯を食いしばらなきゃならない時ってたくさんあるんです。日本男児としても歯を食いしばることは多いと思うんですけど、他国へ行って仕事をすると、日本人に比べ、歯を食いしばらない人が多いというか、それをよしとする風潮があるんです。こっちにしたら“もうちょっと頑張ってからスタントにしろよ”って思うんですけど、もう最初から『スタント!』って言えるというか。でも日本人はギリギリまで自分でやって、落馬してやっとスタントに代わるとか、それはある意味バカなのかもしれないけど、僕は日本人のよさでもあると思っています」

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著者プロフィール

映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。日本のキング・オブ・カルト、石井輝男監督にも少しだけ師事。プロフィール画は芸人ネゴシックスの手によるもの。

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