金子大樹が世界戦線返り咲きを狙う大一番=1月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

井上尚がMVPの年間表彰式は一般公開

2014年は3戦3勝3KOの井上尚がMVP。年末のナルバエス戦の衝撃KO劇は世界からも注目を集めた 【花田裕次郎】

 2014年の年間表彰選手が6日に都内で開かれた選考会で決まり、プロ・アマ合同で開かれる恒例の表彰式が23日(金)に後楽園ホールで行われる。この表彰式が今年から入場無料で一般公開されることになった(18時開会。先着順で入場制限あり)。当代を代表するボクサーが一堂に介する光景は壮観そのもの。プロの表彰選手は以下のように決まった。

 14年の最優秀選手賞(MVP)はWBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥(大橋)が文句なしで受賞。昨年末の東京体育館で名王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)を2回KOで粉砕した一戦が決め手となった。4月に国内最短記録となる6戦目でWBC世界ライトフライ級王者となるなど、恐るべき21歳は世界戦3戦3勝3KOの大活躍。KO賞、年間最高試合賞(ナルバエス戦)も受賞し、計3冠を獲得した。

 そして、その衝撃波は海も越えた。アメリカの有力ボクシングサイト『ボクシング・シーン』『ファイト・ニュース』が井上を「ファイター・オブ・ジ・イヤー」に選出したのだ。普段は軽量級に関心を寄せないアメリカでは異例とも言える。今年の年末にも対戦の可能性があるWBC世界フライ級王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との一戦が実現すれば、海外からも熱い視線を浴びることになるだろう。

 今回、井上はライトフライ級から一気に2階級上げ、適正階級で戦ったことで、われわれの想像をはるかに超える井上尚弥“本来の力”が発揮された。だが、井上自身「まだスーパーフライ級の身体ではない」と話すように、まだ転級後、初めての試合だったに過ぎない。今後、この階級に順応していくことで、まだまだパフォーマンスが上がるとすれば……。15年もわれわれを驚かせてくれるのは間違いなさそうだ。

リゴンドー善戦の天笠は敢闘賞

昨年末、世界でも名だたる強豪リゴンドーから2度のダウンを奪うなど大健闘を見せた天笠が敢闘賞を受賞した 【写真は共同】

 技能賞はWBC世界バンタム級王者の山中慎介(帝拳)が受賞した。10月の7度目の防衛戦で連続KO防衛記録こそ「5」で止まったが、世界戦2戦で合計7つものダウンを奪った“神の左”の猛威はとどまるところを知らない。15年は他団体との統一戦、海外遠征など、もう一段階上のステージでの活躍も期待される。

 殊勲賞には大みそかの大阪で大平剛(花形)との王座決定戦を制してIBF、WBO統一世界ミニマム級王者となり、ミニマム級だけで国内史上初の4団体完全制覇を果たした高山勝成(仲里)が選ばれた。2つのベルトが王座決定戦で争われたことには正直、首を傾げざるを得ないのだが、8月に敵地メキシコでフランシスコ・ロドリゲスJrと戦ったIBF・WBO世界ミニマム級王座統一戦(高山が判定負け)がアメリカの有名スポーツ誌『スポーツ・イラストレイテッド』で年間最高試合に選ばれ、高山も海外からの栄誉に浴している。

 敢闘賞は3名。内山は大みそかの1試合のみだったが、国内連続防衛記録が3位タイとなるなど、存在感を示した格好だ。結果的に1勝2敗と負け越した八重樫東(大橋)だが、年間最高試合賞の次点にもなったロマゴンとの激闘が高く評価された。もうひとりは圧倒的不利の下馬評のなか、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)から2度ダウンを奪い、爪痕を残した天笠尚(山上)。思い出されるのは10月の東洋太平洋フェザー級タイトルの防衛戦だ。11回までポイントビハインドで「王者でいられるのもあと3分間か」と覚悟して迎えた最終12回に天笠が大逆転KO勝利を収めたのだが、その頃には想像すらできなかった受賞だろう。

5戦目での世界戦目論む新鋭賞・田中

ここまでプロ4戦4勝のホープ田中が新鋭賞。井上尚を超える5戦目での世界挑戦を目論む 【船橋真二郎】

 努力賞には大みそかに初挑戦でWBA世界ライトフライ級王者となった田口良一(ワタナベ)、2月のマカオ遠征から4戦4勝のWBC世界ミドル級9位、村田諒太(帝拳)が選ばれている。昨年、井上尚弥が受賞した新鋭賞は名古屋の大型ホープ田中恒成(畑中)が受賞。今年から新設された日本、東洋太平洋戦の年間最高試合賞には、その田中が4戦目で新王者となった原隆二(大橋)との東洋太平洋ミニマム級タイトルマッチが選出された(田中が10回TKO勝ち)。19歳の田中は今春にも井上の6戦目を抜く5戦目での世界王座獲得を目論んでいる。

 そのほか、女子のMVPにはWBC女子世界アトム級王者の小関桃(青木)が女子世界最多タイ記録となる14連続防衛が認められて受賞。女子の年間最高試合賞はWBA女子世界スーパーフライ級タイトルマッチ、王者の藤岡奈穂子(竹原慎二&畑山隆則)vs.川西友子(大阪帝拳)が選ばれた(藤岡が判定勝ち)。特別賞は元WBA世界スーパーフライ級王者の名城信男氏、元WBA世界スーパーバンタム級王者の李冽理氏、また選手としてはファイティング原田氏以来となる国際ボクシング殿堂入りを決めた元WBA世界フライ級王者の故・大場政夫氏、元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅用高氏が受賞した。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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