有馬でラストランを迎える名馬たち=引退戦にかけるそれぞれの思い
ジャスタウェイら有馬記念で引退レースを迎える馬たち、陣営それぞれの思いを聞いた 【netkeiba.com】
ベストでない条件でも状態面はすごくいい
「全てを跳ね返してくれるだけの状態の良さ」と福永 【netkeiba.com】
3歳時にアーリントンCを勝ち、重賞ウィナーの仲間入りを果たしたが、僚馬にはゴールドシップというスターがいた。確かな実力を持ちながらも、スターの影に隠れがちだったジャスタウェイは、2013年の天皇賞・秋でその力をいかんなく見せつけた。
前年の年度代表馬ジェンティルドンナを相手に4馬身差の圧勝劇。父ハーツクライから受け継いだ成長力も後押しし、スター街道を一気に駆け上がった。この勝利は、大和屋暁オーナーにとっても、初めて所有した愛馬での初GI制覇という非常に思い入れの深いものとなった。
そうして挑んだ今春のドバイDF。6馬身1/4差、レコードでの圧勝劇には、国内のみならず世界からも評価され、日本調教馬では初となるワールドベストホースランキング単独1位を獲得した。「海外GIも勝てたのは、応援してくださったファンのみなさんのおかげだと思っています」と須貝尚介調教師は感謝を口にする。
世界一の馬のラストランが刻一刻と近づいてきた。凱旋門賞からの帰国初戦となった前走ジャパンCを振り返り、福永祐一騎手は「良化途上にありながら、馬は大変がんばりました」と讃える。世界最高峰の厳しい戦いと、長時間の飛行機輸送を経て帰国してから2か月弱。2着で、世界一の意地を見せた。須貝調教師も「ジェンティルドンナから離れずレースを、という指示を出していました。2400mの距離が持つことも分かりましたね」と話す。
国内とは馬場など条件が異なる凱旋門賞を除き、ジャスタウェイが2400m以上のレースに出走したのは先日のジャパンカップと日本ダービー(11着)の2回のみ。2500mとなる有馬記念。
「距離が延びてプラスになるか? と言われれば、プラスにはならないと思います。競馬場も、中山か東京かだったら、東京のほうがいい。でも、そんなベストでない条件でも、状態面はすごくいいです。ジャパンCよりも馬体にハリが戻り、追い切りでいい感触を持てました。全てを跳ね返してくれるだけの状態の良さです」と、福永騎手は胸を張る。
須貝調教師も「ジャパンカップの後、様子を見るため少しラクをさせましたが、馬は具合が良くなっています。それで距離延長などをカバーできれば」と話す。
有馬記念でラストランを迎えた後、1月4日に京都競馬場で引退式を迎える。世界一の馬に、距離やコースといった条件は関係ないのかもしれない。
例年なら中山は使いたくなかったが
戸崎は「いいパフォーマンスを見せないと」と気合をこめる 【netkeiba.com】
「迫力のあるフットワークで、安心ですね。初めてレースで跨った天皇賞・秋よりも前向きさが出てきました」と、戸崎騎手は順調さを語る。
最終追い切りは「軽く気合をつける併せ馬」と石坂正調教師。「この秋は3走目ですし、このくらいで十分です。タイムもこんなものでしょう。順調です」と続ける。
前人未到の3連覇を目指した前走ジャパンCは4着。発表こそ良馬場だったが、雨の影響が残っていた。「馬場が緩かったのが、悔いが残りますね」(石坂師)
かつては、三冠馬オルフェーヴルと馬体がぶつかり合う接戦の末、下した舞台。この馬の力は、こんなものではない。
石坂調教師は「あと1回、ジェンティルドンナを見てほしい、という思いがあった」という。「去年までの暮れの中山は馬場が悪く、有馬記念はトリッキーなコースなので、正直ジェンティルドンナは使いたくないなと思っていました。でも、今年は馬場も良さそうですね」(石坂師)と、スタンド改修により例年秋の開催がなかったことで、いいイメージを抱く。
牝馬は中山で走る機会が少なく、ジェンティルドンナもラストランにして、初めての中山となる。しかし、今年のリーディングをほぼ手中に収めた戸崎騎手は「乗りやすくて賢い馬なので、不安はありません」と前を見つめる。
2度目の騎乗にして、名牝のラストランの手綱を握る戸崎騎手は「有馬記念は、普段競馬を見ない人も見て、一番盛り上がる大一番。依頼をいただき幸せです。いいパフォーマンスを見せないと、という責任感がありますね。有名馬ですから、無事に帰ってきたいとも思います」(戸崎騎手)
「たくさん応援していただき、ファン投票も選んでいただきありがとうございます。最後のレースなので、中山(有馬記念)に行こうと決めました。精一杯走れる状態にあります。レース後には引退式もあります。ぜひ、見てやってください」と、石坂調教師は海外GIを含め6勝を飾った愛馬への思いを締めくくった。
有馬記念当日に引退式を行い、お母さんになるため故郷に帰る。