【第10節レビュー】過去2勝2敗の因縁の対決、勝ち点5獲得で今季3勝目!
「充実のセットプレー」と「粘り強さを取り戻したディフェンス」で掴んだ勝利
前半に失点を重ねた前節からの修正を果たし、試合開始直後からキレのある動きを見せたBR東京は前半4分、好調・WTBセミシ・トゥポウが右コーナーを突く。タッチラインにわずかに足がかかりトライは認められなかったものの、手応えを感じさせる立ち上がりに。スコアまでにはやや時間を要したものの、ハーフウェイ付近のスクラムをドミネートするとそこから一気に攻め、こちらも状態のいいNO8ファカタヴァアマトがトライを奪い5-0(17分)。直後にはWTBトゥポウが自陣の深い位置からの大胆なランを仕掛けてビッグゲインを果たすと、WTBネタニ・ヴァカヤリアが仕留めて10-0とする(19分)。
その後は相模原DBにチャンスを与えながらも、自陣で粘り強いディフェンスを見せてトライを阻むと、相手がこぼした球に反応したSO中楠一期が抜け出し、90m強を走りきってトライを奪い17-0(36分)。終了間際には、SO中楠からWTBトゥポウへのキックパスが通ってさらにトライを奪い(39分)、22-0で前半を終える。
後半はギアを上げてきた相模原DBの攻撃を冷静にディフェンスし、前半から保っていたスクラムやラインアウトでの優位を活かしながら、安定感のある戦いをみせる。モールディフェンスなどでのハードワークも光った。
リーグワンでの初先発となったルーキーのCTB PJ・ラトゥは、前半から確実に前に出るキャリーを見せていたが、14分に敵陣深い位置でブレイク。トライエリアに持ち込み映像判定となったが、グラウンディングが確認できずリーグワン初トライは次回に持ち越しに。ラトゥは19分にもトライアシストとなる突破を見せたが、前段のプレーで反則がありこちらも幻に終わった。
タッチを狙ったペナルティキックのミスからのアタックで後手に回り、1トライを許したものの(23分)、主導権を相手に渡すことなく最後まで戦いきったBR東京がそのまま勝利。プレーヤー・オブ・ザ・マッチには、NO8ファカタヴァアマトが選出された。3トライ差の勝利で得られるボーナスポイントも確保し、勝ち点5を上乗せ。総勝ち点は16となり、順位を10位から9位へと今週も1つ上げた。プレーオフ圏内の6位のチーム(コベルコ神戸スティーラーズ)との勝ち点差は2つ縮まり8となっている。
試合経過
WTBネタニ・ヴァカヤリアがハイボールキャッチ。直後の攻防でスクラム獲得。ハーフウェイ付近から押し反則を奪って継続。スクラム左のショートサイドからSH TJ・ペレナラ→ヴァカヤリアと繋ぎ、フォローしたNO8ファカタヴァアマトがボールをもらって左隅にトライ。FBメイン平が蹴ったCVは不成功も5-0。
前半19分[BR東京]
再開のキックをキャッチしたWTBセミシ・トゥポウがステップでディフェンスを交わし抜け出しビッグゲイン。敵陣中央22m付近まで走りポイントをつくると、左に展開。CTB PJ・ラトゥのキャリーでさらに前に出ると、またポイントから左へに出し、FLリアム・ギル→WTBネタニ・ヴァカヤリアと繋ぎ左隅にトライ。CVは不成功も10-0。
前半36分[BR東京]
相手のキックカウンターからのアタックで後退しゴールを背負う。しかしパスを弾いたボールに反応したSO中楠一期がボールを確保。即座に裏へ抜け出すと走りきり敵陣の中央トライエリアまで運ぶ。パスが乱れた場面でのBR東京の関与の映像確認が行われたが、トライが認められる。FBメイン平がCVを成功させ17-0。
前半39分[BR東京]
自陣での相模原DBスクラムからショートサイドを攻められたが、SH TJ・ペレナラとWTBセミシ・トゥポウが対応。22m付近でNO8ファカタヴァアマトがボールを奪うとアタックに転じ、パスを繋ぎ敵陣まで前進。22m内でSO中楠一期がキックパス。これがWTBセミシ・トゥポウに入り4つめのトライ。CV不成功も22-0として試合を折り返す。
後半0分[BR東京]
PR大山祥平をパディー・ライアンに入れ替えて後半へ。
後半18分[BR東京]
HO大内真を大西将史に入替。
後半19分[BR東京]
CTB PJ・ラトゥを礒田凌平に入替。
後半23分[相模原DB]
BR東京のノータッチになったPKを確保してアタック。BR東京のディフェンスが後手に回ったところを突いて、ワイドに振って前進。ディフェンスが偏ると外に振り、13番がポスト右にトライ。CV成功で22-7。
後半26分[BR東京]
SO中楠一期を伊藤耕太郎に入替。
後半36分[BR東京]
PR津村大志を中村公星に入替(今季初出場)。
後半39分[BR東京]
反則が続き自陣侵入を許しトライラインに迫られるが、FLマイケル・ストーバーグがボールに仕掛けノットリリースザボール。SH TJ・ペレナラはゴール至近の位置ながらスクラムを選択。ここでも反則を獲りながらボールを出し、SO伊藤耕太郎がキックアウトしてノーサイド。
インタビュー
まずは、自分たちのパフォーマンスと、先週から続くコンシステンシー(一貫性)という部分は誇りに思っています。このリーグの中で自分たちにとって5点、このボーナスポイントというのはすごく大切なものかなと思います。コンプリートしきれないプレーもたくさんあり、少し(プレーの)精度は高くなかったんですけど、それでもやめずに戦い続けた。いいディフェンスを見せて相手を止めることもできたので、いいパフォーマンスだったかなと。(パフォーマンスに対して)必要な結果だったと思います。
SH TJ・ペレナラゲームキャプテン
僕もアグリーです。今までに比べるとアタックの部分の精度は少し低かったとは思います。その中でディフェンスでしっかりと相手を7点に抑えた。それができるとやっぱり勝ちやすいですよね。先週は44点を獲って負けていたので、今日のディフェンスはすごく誇りに思います。まだまだやらなきゃいけないことがあるのは理解しています。自分たちとしてはやっぱり毎週いいコンシステンシーでプレーしたいなと思うので。でもこの5点、今日の勝利というものをしっかり楽しみたいと思います。次の試合(の週)までは1週間空くので、ファミリーとの時間をつくったり身体を整えたりして、また次に向けて準備していきたいなと思います。
質疑応答
— このチームでゲームキャプテンを務める上でのフォーカスポイントは
SHペレナラ:プレー自体、僕のゲームは変わらないので、僕のラグビーは変わらないので、フォーカスは変わらないです。でもペナルティをもらったときなどのディシジョンメイキングの役割があるので、ラインアウトがどうなのか、スクラムがどうなのか、各エリアのリーダーと話し合うことはしています。今日も60m(自陣10m)のところでペナルティをもらった場面がありましたが(後半35分)、PRパディー(・ライアン)からスクラムでいけるという言葉があったので、それを信じました。そこでまたペナルティをもらえて、時間を使うことができたのでよかったです。ディシジョンメイキング(意思決定)のところは重要なのかなと思います。
あとはレフリーとの関係性もすごく大事なのかな。もっと頑張って日本語を勉強したいと思います。レフリーの方ともう少しカジュアルな感じでトークできれば。それができるようになると、もっといいコミュニケーションがとれると思います。今はまだ、そこは欠けているのかなとも思います。
— 前半終わり(39分)に相手のスクラムから、持ち出したSHを止めたシーンがあったが
SHペレナラ:(スクラムの)調子はよかったのですが左側がアップしてしまい、6番が影響を受けていた。僕はWTBを止めようとマークしていたのですが、相手の9番のいいディシジョンだったと思います。(後方から上がってきた)WTBセミシ(・トゥポウ)がいいリアクションをしてくれたことで止めることができた。スクランブルディフェンスをしなければいけないシーンでした。
— スクラムの強さと接点周りの激しさについて、一貫性が出せている要因は
マットソンHC:いくつかあって、今はPR大山(祥平)の調子がよくて、その上でパディー(・ライアン)が出たら彼がまたスクラムにそのコンシステンシーをもたらしてくれています。タイトヘッド(3番)の2人がいいパフォーマンスを見せてくれているとやはりスクラムでの自信が生まれる。ただ、三菱(相模原DB)さんは残念ながらベストプロップの2人が欠けていたので、そういったところも(影響した)。今日のような日はアタックするいいチャンスだった。
SHペレナラ:試合でよかったところ、改善できるところを正直に話しあって、トレーニングウィークでハードにやれているから、そこのコンシステンシーがあるのかと思います。自分たちの中での期待値っていうのもすごく高く、接戦を落としてしまったゲームは本当に悔しく思っています。その悔しさが存在するということがすごく大事だなと。
— 先週の試合がいい反省材料になった面はあるか
マットソンHC:東芝(BL東京)戦のパフォーマンスをしっかり今日に繋げることにフォーカスしていました。いいパフォーマンスをした次の週に悪くなる傾向があったので、今週は本当に同じくらいのレベルでプレーするところにフォーカスした。ラグビーはやっぱりフィジカルがベースにあると思うので。44点を獲ったとはいえ、個々のタックルであったり、ディフェンスシステムにも悪いところがあったりして、ディフェンスはよくなかった。テクニカルな部分ではそういったところにフォーカスしていました。
— もし話しづらければノーコメントでも結構だが、日本のラグビーはTMO(映像の確認)が少し多い感じもする。どう思うか
SHペレナラ:正しいコールに繋がるのなら使っていいのかなと思います。今日も(レシーバーが)ラインアウトに早く参加してしまい問題になってしまった場面がありましたが(後半19分)、正しいコールだとは思うので、使われて正しいコールになるのであれば、(現状に)アグリーです。日本のラグビーに限ったことではないですが、TMOが使われず、使うべきだったというシーンもあるので。そこに一貫性さえあれば。
HO大西将史
— 試合を通して80分間、クオリティを保ってある意味でフラットに戦った
80分間一貫して、リザーブが入ってからも質を落とさずという課題だったところ。そこは徐々にそうですね。練習の中でもリザーブが入って流れが悪くなるっていうところもあったんですが、チーム全体として誰がいつ入ってもいいパフォーマンスができるように。
— 試合の途中から入るにあたって考えていたことは
スクラム、セットピースの部分は質を落とさず継続してこうと。フィールドプレーに関してはディフェンスの時間が長く続いていたので、粘り強く、ペナルティを出さずにということをチーム全体に鼓舞していこうかなと。
— 押すスクラム、確実にボールを出すスクラム、自在に組んだ。
試合を通して80分間スクラムはこちらがコントロールできたかなっていう印象を持っています。
— TJもスクラムを意識したかのようにも見えるキックを蹴っていた。後半最後のプレーも、自陣深くだったがスクラムを組んで終わらせた
そうですね、スクラムで優位に立っていたのでミスを恐れず(キャッチにいき)、ミスしたとしてもまたスクラムから再開できる。そういう状況はあったと思います。最後はボーナスポイントも取れていたので(攻める必要はなく)、ラインアウトよりはスクラムをしっかりキープしてタッチに出そうっていう。そこは意思統一もできていたかなと思います。
— トライキャンセルになったラインアウトからのアタックがあった
ハーフの位置にいる選手が、(密集に)入るのが早いっていうことだったようです。
— 今日はスタンドのノンメンバーの声援もすごかった
はい、聞こえていました。すごかったですね。僕たちはノンメンバーをパイナップルズって呼んでいるんですけど、彼らが僕たちに1週間いい準備をさせてくれました。チームはいい雰囲気です。後半戦も自分たちの持っている力を100%信じてやりきれれば、おのずと結果がついてくると思っています。
FLリアム・ギル
嬉しいですね。いいスタートを切るというところにフォーカスしていたので、それはできたかなと思います。特にディフェンス。ハーフタイムでエナジーをいっぱいにしてリスタートしたいっていうこともできた。スコアはなかなか獲れなかったんですけど。あとはゲームコントロールとディフェンスを頼りにやりました。
— 試合を通しての一貫性みたいなものを見せられた
そうですね。ここ3週間は後半の部分がだいぶ成熟したのかな。そこはすごく嬉しいです。タフなゲームで、三菱(相模原DB)も撃ってはきたのですが、その中で戦い続けることができたと思います。
— 今日で10試合。このチームについて、改めて見えてきたことがあるのでは
3週間、4週間ごとに、スキルのようなものの変化は必ず見えるものかなと思います。シーズンの序盤はタフな結果が続いてしまったんですけど、毎週必ずテーマを持って私達の姿勢やエフォート(努力・尽力)ができているかをチェックしてきて、そうした部分は前進できているのかなと思います。厳しい結果が続くと落ち込むものですが、結果は出てないけれどもいいところもあったこと、また目標は何か、そういうことを振り返ったりしてきました。あとは、その週のフォーカスっていうところに集中して、前に進み続けたって感じですかね。ここ3試合で自分たちはいいチームであるっていうこと、いいパフォーマンスができるっていうことも見せ始められているのかなと思います。
— 粗を探すようで申し訳ないが、アタックで精度をやや欠いた場面も。そこについては
クイックボールでプレーしようとしていて、システムも結構新しめなものでもあります。フレッシュなときはいいんですけど、疲れてきたときにはまだ改善すべき点があるのかな。ディシジョンメイキングなども含めてですね。ただそこは毎週フォーカスしてやってきているので、よくなってきているとは思います。今日みたいにセットピースが機能していれば、いいプラットフォームになります。セットプレーのファーストボールからプレーできるので、いいリセットになる。今日はいいベースがありました。
CTB礒田凌平
今日は「ワンショット」というテーマ。この2シーズンは相模原DBと2試合が組まれていたのですが、今季は1試合なので、唯一の倒すチャンスに全力で挑もうと。勝ててよかったです。前半のメンバーがやってくれたことをそのまま後半のメンバーが継続してやる。いつも通りに。そんな感じでした。
— ディフェンスはひとつの託された役割だったかと思うが
そうですね。ただ、相手は少し消耗している感じも見えたので、しっかり前に出てプレッシャーをかけようっていう話をリザーブのメンバーでしていたので、そこはよかったと思います。トライは1本獲られたんですけど、それ以外はよかったのでは。
— 少し試合から離れ、客観的になれたのでは
チームについて考えることも多かったんですけど、どちらかというと自分のプレーについて見直していましたね。タックルの姿勢みたいな基本的なことや、復帰するために何ができるかということを考えていました。
— 直近のBL東京戦ではディフェンスが課題となっていた
今回もディフェンスコーチやヘッドコーチとは個人的にコミュニケーションをとる機会がありました。ディフェンスをよりよいものにしてほしいという話があって、そこが自分の役割だと理解していました。やっぱりBR東京はディフェンスでしっかりシャットダウンするチームだと思うので、ここからはそこをしっかりさせたい。今日は7点に抑えてよかったと思うので、次のキヤノン(横浜E)戦でもBR東京のディフェンスを見せて、ロースコアで抑えて上回る試合にしたいですね。
次節は絶対に負けられない相手・横浜キヤノンイーグルス戦
次回のホストゲームは3月30日(日)に秩父宮ラグビー場で開催される第13節 コベルコ神戸スティーラーズ戦。チケットは、3月7日(金) 12:00からファンクラブ先行販売、3月12日(水) 12:00から一般販売開始。
文:秋山 健一郎、リコーブラックラムズ東京
写真:川本 聖哉、リコーブラックラムズ東京
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