ドネアを倒したジャマイカの豪腕 フェザー級統一を狙うウォータース

WOWOW

ジャマイカから誕生した新たなスター

5階級制覇王者ドネアを破りジャマイカのニュースターとなったニコラス・ウォータース 【(C)NAOKI FUKUDA】

 去る10月18日、WBA世界フェザー級王者だったニコラス・ウォータースは、アメリカはカリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターで5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)から2度のダウンを奪って6回TKO勝ち。自力で「スーパー王者」の地位に駆け上った。この勝利により他団体王者たちとの統一戦プランが浮上するなど、ウォータースの視界は大きく開けてきた。

 ジャマイカと聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、五輪連覇の短距離走者ウサイン・ボルトであろう。ボクシングファンならば73年1月に首都キングストンで行われたジョージ・フォアマン(米国)対ジョー・フレージャー(米国)の世界ヘビー級戦や、マイク・タイソン(米国)に王座を明け渡したトレバー・バービック(ヘビー級)や3階級制覇のマイク・マッカラムらの出身地として記憶しているはずだ。

 ウォータースは、そのジャマイカから誕生した新たなスターといっていいだろう。身長こそフェザー級では平均的な170センチだが、両手を広げたリーチは185センチもある。その体格を利して自身の急所をブロックし、攻めては「斧」と呼ばれる強打で相手を豪快に倒しまくっている。中量級の核になる可能性を秘めた逸材だ。
 ウォータースは1986年1月4日、ジャマイカの北西部モンテゴベイで生まれた。父親のジョブ・ウォータースは86年〜91年にかけて19戦12勝(3KO)7敗の戦績を残したフェザー級の元プロボクサーだった。タイトルには縁がなかったが、元世界王者のベルナルド・ピニャンゴ(ベネズエラ)や、六車卓也(大阪帝拳)と世界王座決定戦で拳を交えたアサエル・モラン(パナマ)らに勝った実績を持っている。敗れはしたものの、のちの世界王者ラファエル・ルエラス(米国)やケビン・ケリー(米国)とも拳を交えている。そんな環境下で育ったウォータースがボクシングに興味を抱いたのは4歳のときだった。ジュースの紙コップをグローブに見立てて小さな拳に着けて遊んでいたのだという。

 のちの世界王者が本格的にボクシングにのめり込むようになったのは、十代の半ば過ぎのことだった。16歳のとき、父親とクリケット観戦に行ったウォータースは、ひとりの男が路上で対戦者を募っている場面に出くわした。血気盛んなティーンエイジャーはその男に挑戦し、相手のパンチをことごとく空転させてみせたという逸話が残っている。前後してウォータースは弟とボクシングで遊んでいる際に声をかけられ、それを機にジムに通い始めることになる。ウォータースはふたりの弟と一緒にトレーニングを積むことになるが、当時は弟のオレインの方がセンスで上を行っていたと父親のジョブは回顧している。

2度のダウンを奪ってドネアに6回TKO勝ち

ドネアに6回TKO勝ちしたウォータースはフェザー級王座統一を狙う 【(C)NAOKI FUKUDA】

 16歳で本格的にボクシングを始めたウォータースは、トレーニングを開始してからわずか4カ月でジャマイカ代表として海外遠征することになった。ここで勝利を収めたウォータースは「自分がボクシングをすることの意味を発見したんだ。世界を駆け巡り裕福な生活を手に入れるために必要なことだったんだ」と話している。
 ウォータースは05年、06年と連続してカリブの大会で優勝。その前後から国際大会にも出場するようになり、06年には中米&カリブ大会で銅メダルを獲得している。07年にはトリニダードトバゴで開催されたパンナム大会決勝でヘスス・アンドレス・クェジャル(アルゼンチン=現WBA暫定世界フェザー級王者)に競り勝って優勝を収めた。また、上位進出はならなかったが、その年の世界選手権にも出場している。

 こうしたアマチュア実績を引っ提げてプロ転向を果たしたのは08年8月のことだった。デビュー戦こそ4回判定勝ちだったが、以後、ウォータースは持ち前の強打を武器にKOの山を築いていく。危ない試合もあった。初陣から4カ月後、プロ7戦目のことだ。3回まで快調に飛ばしていたが、4回に不覚のダウンを喫したのだ。それでもウォータースは5回には逆にダウンを奪って文句なしの6回判定勝ちを収めている。デビューの翌年にはWBAの中米王座を獲得し、11年10月には元世界ランカーのイルビン・ベリー(パナマ)を6回TKOで下すなど4度の防衛を果たしている。

 徐々に世界ランクを上げていったウォータースは12年12月、自国にダウリス・プレスコット(コロンビア)を招いて空位のWBA世界フェザー級王座決定戦に臨み、7回TKO勝ちを収めて戴冠を果たした。このときの戦績は22戦全勝(18KO)という見事なものだったが、その評価は定まっていなかった。しかも、マネージメントの力が弱いこともあって試合が組めず、その後11カ月も実戦から遠ざかってしまう。
 これを救ったのがトップランク社のボブ・アラム・プロモーターだった。軽量級にも数々のトップ選手を抱えているアラム氏は、13年11月、14年5月と続けてノニト・ドネア(フィリピン)と同じイベントにウォータースを起用。前契機を煽ったうえで今年10月に両者の直接対決をプロモートしたのである。ここでウォータースが2度のダウンを奪って衝撃的な6回TKO勝ちを収めたことは周知のとおりである。
 ウォータースは言う。「私はモハメド・アリ(米国=元世界ヘビー級王者)のように美しいボクシングを目指しているんだ。鮮やかなKOが究極の目標さ」
 その視線の先にはWBO王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、WBC王者ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)、IBF王者イブゲニー・グラドビッチ(ロシア)らフェザー級のライバル王者たちがいる。

Written by ボクシングライター原功

↓↓↓最新情報はこちらから↓↓↓

■エキサイトマッチ〜世界プロボクシング 番組オフィシャルサイト(wowow.co.jp/excite)
2014年総集編ベストマッチランキング投票受付中!(締切:12/16)
http://www.wowow.co.jp/sports/excite/

◆◆◆WOWOW番組情報◆◆◆

★エキサイトマッチ〜世界プロボクシング
全勝スター候補“ハンター”クロフォード、2度目の防衛戦!
12月15日(月)夜9:00[WOWOWライブ]

<WBO世界ライト級タイトルマッチ>
テレンス・クロフォード(米国/WBO世界ライト級チャンピオン)
レイムンド・ベルトラン(メキシコ/WBO世界ライト級1位)

<IBF世界フェザー級タイトルマッチ>
イブゲニー・グラドビッチ(ロシア/IBF世界フェザー級チャンピオン)
ジェイソン・ベレス(プエルトリコ)


★エキサイトマッチ〜世界プロボクシング 
2014年総集編!ベストマッチランキング&KO集
12月22日(月)夜9:00[WOWOWライブ]
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント