イチロー去就問題、決着はキャンプ中? 控えでは遠ざかる2つの大記録

杉浦大介

控え外野手の去就は後回しに

ヤンキース移籍後は“理想の控え外野手”としてチームに貢献。日米通算4000本安打などの記録も樹立した 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

「あと2年続けられれば、(メジャー通算)3000本安打に到達するチャンスがある。現在の彼は素晴らしい第4の外野手だ」

 11月に発表された米国『Yahoo! スポーツ』のFA選手ランキングではイチローは80位にランクされ、そんな解説文が寄せられていた。

 筆者もシーズン中から何度も指摘したが、現時点でのイチローは“ほとんど理想的な控え外野手”。外野の全ポジションをハイレベルでこなし、スピードも保持している。週に2、3戦の先発起用なら標準以上の打率を残せることも証明しただけに、特に強豪チームにとっては実に使い勝手の良い便利屋野手に違いない。

 ただ、オフの間、各チームは必然的に主力クラスから補強を進めていくもの。イチローのように控え、あるいはレギュラーの当落戦上にいる選手は後回しになるのが自然な流れである。ダイヤモンドバックス、パドレスなどが移籍先候補として挙げられているものの、“再建状態”にあるこれらのチームが、早い段階で41歳の外野手に触手を伸ばすとは少々考え難い。

早期決着は考えられない

 そしてもう1つ。イチローはメジャー通算3000本安打にあと156本、日米通算でピート・ローズの4256本まで134本に迫っている。本人がこれらのマイルストーン到達に強いこだわりを見せた場合には、話はさらに複雑になりかねない。半レギュラーだった今季は102安打、昨季は136安打だったことを考えても、控え扱いでは15年中の記録達成は難しくなるからだ。

「2つの記録は目の前にある分かりやすい目標。だが、それがプレーし続けたい理由ではない。まだプレーできると思っているので、ただ野球を続けたい」

 上記したコスタスのインタビュー番組の中で、本人も記録への意識を隠さなかった。ニューヨークでのイチローは役割が一定しない中でも黙々と準備を整え、プロ意識の高さで評価された。ただ、キャリアの晩年において個人記録達成が目前に迫り、それをモチベーションの1つとするのは当然である。

 もしもレギュラーに近い役割を望み続けた場合には、去就決定はキャンプイン寸前、あるいはその後に持ち越すこともあり得る。イチローがレギュラーとして獲得されることがあるとすれば、春季キャンプ開始後にケガ人が出たチームが最有力に思えるからである。

 現時点ですべては推測の域を出ないが、実際にどのチームが動くか、どのような役割、条件をオファーされるか、そして、最終的にどこに落ち着くことになるかに興味は注がれる。依然変わらぬそのスター性ゆえ、好奇心を持って推移を眺めているファンは米国にも多いに違いない。

 足、守備でも貢献できる有用な選手だけに、引き取り手がないまま売れ残ることはないはずだ。それでも、早期決着は考えられず、去就問題が長い戦いになることはすでに確実。ニューヨークでの日々を終えた天才打者にとって、ウインターミーティング開始直前の現在は、新天地での最終章開始に向けたプロローグの段階に過ぎないと言ってよさそうである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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