G大阪、後半の猛追を支えた2ボランチ ブレない遠藤と悩み抜いた今野が舵を握る
誤算だった宇佐美の負傷離脱
大逆転で優勝を飾ったG大阪。後半の猛追を支えたのが遠藤(7番)と今野(15番)の2ボランチだ 【Getty Images】
「やっぱり一番は2人のボランチがはまったのが大きかったね。ヤット(遠藤保仁)と今ちゃん(今野泰幸)をボランチではめて、チームを固めていかないとチームは強くならないと思っていたから」
ポルトガル語で「舵取り」を意味するサッカー用語、ボランチ。ワールドカップ(W杯)による中断期間を16位で終えたG大阪は「船頭」不在のまま迷走の航海を続けていたようなものだった。
「チームとしてもヤットと今ちゃんの良さをボランチで出させたい。あの2人をボランチの軸としてキャンプからやってきたので」と話していた指揮官にとっての、最大の誤算は宇佐美の負傷離脱である。昨年J2リーグで18試合19得点の和製エースを攻撃の軸として考えていた長谷川監督だったが、開幕直前の2月19日に、左腓骨(ひこつ)筋腱脱臼の負傷で全治8週間。前線の軸を失うことになった格好で、当初は戦術的なオプションにしか過ぎなかった「FW遠藤」に頼らざるを得なくなったのである。
「二足のわらじ」に苦しんだ今野
クラブではボランチ、日本代表ではセンターバックという異なる役割に今野は苦しんだ 【写真:アフロスポーツ】
それでも最前線やトップ下など複数のポジションで、一定の役割を果たしていた遠藤とは対照的に、所属クラブではボランチ、W杯ブラジル大会を目指す日本代表ではセンターバックという慣れない「二足のわらじ」を履き続けた今野は、本来の躍動感が皆無に近く、こじんまりとしたプレーに終始する。
そんな悩める今野の象徴的な試合が4月19日の第8節・大宮アルディージャ戦だ。今季初めて先発落ちした今野は後半43分に自ら決勝点をたたき出し、ヒーローになりながらも直前に一度は許した同点弾で自らを過度に責めていた。
「舌を噛んで死にたいと思いました。本当に」。衝撃的なコメントが当時話題を集めたが、やや自虐的に発した言葉は当時の今野のメンタル的な低調さをそのまま反映していたと言えるだろう。
上向かないチーム状態の立て直しと同時に、長谷川監督が配慮したのは今野の完全復活。大宮戦後の練習後、ピッチ上で今野と「青空会談」を行った指揮官は「今ちゃんが中盤の底で躍動してくれないと中盤の守備が締まっていかない。番記者の皆さんもそう思っているかもしれないが、ヤットと今ちゃんがボランチではまってくれるのが一番美しいし、オレ自身も全く悩まずに済むんだけど、そこがなかなかはまってこない」と複雑な胸の内を吐露していた。