F1王者争い、ダブルポイントの影響は? 17ポイント差も逆転の可能性十分

田口浩次

ロズベルグ優勝、ハミルトン3位以下なら逆転

最終戦ダブルポイント制の影響で現在1位のハミルトンも気が抜けない。ロズベルグ(手前)優勝なら逆転Vの可能性も 【Getty Images】

 ところが、今季はポイント計算ルールに改訂が加えられ、最終戦のみポイントが2倍になることとなった。つまり、優勝の25ポイントは50ポイントとなり、2位の18ポイントは36ポイント……以下もそれに続いて2倍となる。この改訂ルールにのっとって再計算すると、もしロズベルグが優勝すると50ポイントが加算され、ハミルトンに33ポイントの差をつけることができる。これをひっくり返すには、2位に入り18ポイントの倍である36ポイントを獲得しなければならない。つまり、ハミルトンは3位以下だとチャンピオンの座を奪われてしまうのだ。こう聞くと、がぜんチャンピオン争いが熱いと言われている理由が理解できるはずだ。

 しかも、今シーズンのメルセデスのマシンは同じメルセデス・エンジンを搭載するライバルチームたちと比較しても、一歩も二歩も抜きんでている状態で、普通に考えればハミルトンは楽に2位が狙えるようにも見える。しかし、メルセデス以外に唯一今シーズン3勝を挙げているレッドブルのダニエル・リチャルドとセバスチャン・ベッテルの絡み方によっては、ハミルトンとて気を抜くことはできない。

 この最終戦のみポイントを2倍にするルール改定は酷評されていたのだが、このように実際に影響があるとなると、きっとテレビ関係者と導入を促進したと言われているF1界のドン、バーニー・エクレストンには追い風と言えるのかもしれない……。しかし、最終戦を前に、エクレストン自ら、このポイント2倍は今年だけでやめると言い出した。もともとエクレストンは、終盤3戦をポイント2倍にすることを推奨しており、最終戦だけのポイント2倍は茶番劇になってしまうと捉えているようだ。つまり、いつの時代もポイント計算ルールで演出できるのはチャンピオンシップのほんの一部でしかない。それよりも、すべての競争者のレベルが近くなることが、一番の妙薬だ。

思い出される2010年アブダビGPの大逆転劇

2010年アブダビGPは本命のアロンソ、ウェバーが沈み、ベッテル(写真)が3位から逆転でワールドチャンピオンに輝いた 【Getty Images】

 さらに言えば、アブダビGPが開催されるヤス・マリーナ・サーキットは、専用サーキットなのだが、そのレイアウトはストリートコースのようでもあり、過去に大逆転のドラマを生んでいる。

 2010年のことだ。最終戦は同じくアブダビGP。18戦を終えてのランキング1位はフェラーリのフェルナンド・アロンソで246ポイント、2位はレッドブルのマーク・ウェバーで238ポイント、3位が同じくレッドブルのベッテルで231ポイント、4位がマクラーレンのハミルトンで222ポイントと、4人のドライバーにチャンスがあった。誰もがアロンソとウェバーによる争いかと予想したが、アブダビGPに勝利したのはベッテルで、25ポイントを加算して256ポイントとした。ここでアロンソが4位以内に入れば、アロンソがチャンピオンだったが、ウェバーの取るレース戦略を意識し過ぎたためにピットインのタイミングなどを失敗し、7位で合計252ポイント。同じく、ウェバーは予選5位スタートだったことと、タイヤに苦しみ8位の合計242ポイントに終わった。チャンピオン争い大本命の2人が沈む大逆転でベッテルは初のワールドチャンピオンを獲得したのだ。

 このように、何が起こるのか分からないのがレース。しかも最終戦でロズベルグには失うモノがない。一方のハミルトンは1つのミスも許されない。きっと金曜日のフリー走行以前から2人の戦いは始まるだろう。子どものころに同じカートチームで戦い、そしてともにF1ドライバーとなり、再びチームメートとなった。どちらが同じスペックのマシンでワールドチャンピオンになるのか、子どものころからの夢がついに1つの決着を見る。F1最終戦、ぜひともテレビなどにかぶりついて見てほしい。

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