モノ言うダル、米球界での“発言力”確立 実力認めさせたからこそ、声を上げる
「日本とメジャーは違う。メジャーはメジャー」
「また新しい先発投手が来ただけ。俺にとって特別なことは何もない」
「なぜ、彼(田中)に俺のことを聞かない? 俺はメジャーでそれなりにプレーしている人間の一人だ」
「日本の野球を攻撃するつもりはない。日本でプレーしている友達もたくさんいる」
「ただ、日本とメジャーは違う。メジャーはメジャーなんだ」
日本プロ野球とメジャーリーグは、いずれもプロ野球リーグである。しかし、選手が違えば環境も違うし、言語も文化も違う。ダルビッシュもメジャー1年目には「競技自体が違う」とまで口にしている。
日本で積み上げた実績を、尊重はする。しかし、メジャーはまた別の土俵。メジャーでの評価は、メジャーで一から積み上げていくしかない。これが多くのメジャーリーガーの本音なのではないだろうか。
日本での成績が全く無視されるわけではない。ダルビッシュと田中がメジャー移籍時、ポスティングフィーと年俸総額合わせてそれぞれ1億1200万ドル(約86億円、当時のレート)、1億7500万ドル(約182億円、当時のレート)という額がついたのは、彼らが日本で輝かしい実績を残し、その能力が評価されたからだ。
しかし、その金額はあくまで彼らの投資対象としての価値を示すものであり、メジャーで証明された実力ではない。投資額に見合ったパフォーマンスを数年間にわたり発揮して初めて、実力が認められる。
ある世界で勝負して認められるには、まずはその世界の一員にならなければならない。“一点の曇りもない羊の群れの一員”であるためには、まずは何よりも羊でなければならない。
だからダルビッシュは、海を渡ったのだろう。
「プライド、やろうね」
12年4月、メジャーデビュー戦から数日後、ダルビッシュはツイッターにこうつづった。
ダルビッシュはこれまで、少し言いにくそうなことも積極的に発言してきた。時には、日本球界を容赦なく批判もする。オブラートに包まぬ率直な物言いゆえ、傲慢(ごうまん)、不遜といったイメージを持たれてしまうこともある。それでも、影響力ある立場の人間が声を上げれば、議論のキッカケになる。
やはり12年8月、当時「野球人生で初めて」という大スランプに陥っていたダルビッシュは、自身のブログにこうもつづっていた。
「ただ成功するだけじゃなくて、多くの人にいろんな事を伝えられるようにならないと」
ダルビッシュはなぜ、ここまでするのか。「ただ成功するだけじゃなくて、多くの人にいろんな事を伝えられるようにならないと」とまで考える、そのモチベーションの源泉は何なのか。
想像の域を超えないが、この問いのヒントとなりそうなダルビッシュの言葉をひとつ紹介して本文を締めたい。
メジャー移籍前年の11年1月、ツイッターでフォロワーに「ダルビッシュさんは非常にがんばりやさんですが、その源泉はどこから出てくるのでしょうか」と尋ねられたダルビッシュは一言、こう返している。
「プライド、やろうね」