「センターコートに立つことが大好き」 シャラポワが抱き続けるテニスへの情熱

構成:スポーツナビ

今季のツアー最終戦を終え、「シュガポワ」のプロモーションで来日したシャラポワ 【スポーツナビ】

 世界の頂点に立ったのは17歳のとき、2004年の全英オープンテニスだった。初のグランドスラム優勝を成し遂げ、一躍トップ選手に上り詰めたマリア・シャラポワ(ロシア)は、4大大会では06年に全米、08年に全豪、12年に全仏を制し、生涯グランドスラムを達成。世界ランク1の座にも就いた。

 コートを離れれば、その美貌と抜群のプロポーションを生かしてファッションモデルとしても活躍。国連開発計画(UNDP)親善大使を務め、12年からはスイーツブランド「シュガポワ」のプロデュースも行っている。

 08年秋に右肩を手術して約9カ月間戦列を離れ、その後も肩の痛みに悩まされてきたが、それでも常に世界のトップを走り続けてきた。14年は全仏で2年ぶりに4大大会優勝を果たし、今シーズンで4勝、ツアー通算33勝を挙げている。

 それでも本人は「ちょうどキャリアの半分に来たところ」だと言う。その勝利への飽くなきモチベーションはどこから来るのか。今季ツアー最終戦を終え、「シュガポワ」のプロモーションで来日したシャラポワに話を聞いた。(取材日:2014年10月28日)

大きなゴールを設定し、自分を制限しない

シャラポワは「センターコートへの情熱がある限り、テニスをやり続けたい」と語る 【Getty Images】

――この10年トップレベルのパフォーマンスを維持できている理由を、自身ではどう考えていますか?

 テニス選手として、パッション(情熱)を持ち続けられているからだと思います。元々、テニスというスポーツが大好きでしたし、けがをしていた時期もありましたが、そんなときでも、子供の頃からのパッションを持ち続けました。センターコートに立つということに対するパッションがある限り、その機会がある限りは、テニスをやり続けたいと思います。

――普通は、情熱を維持すること自体が難しいのではないかと思いますが……。

 もちろん、そうです。でもテニスに限らず、どんな人でもつらい時期があったり、がっかりすることがあったり、期待が高すぎてその期待に応えられなかったり……そういうことは、どんな選手でもどんなスポーツでもあります。

 落ち込むことは簡単ですが、私の場合は大きなゴールを設定します。そうすると、今日、そのゴールが達成できなくても、「仕方がない。こんなに大きな目標なんだから」と思えますし、反対に少しでも達成できたら「良かったんじゃない?」と思えます。あえて、ゴールによって自分を制限しないようにしています。

――生涯グラウンドスラムを達成し、世界ランク1位に上り詰めてもなお、その先にある目標は何ですか?

 再び1位になりたいというゴールがあります(※今季終了時は2位)。1位になるのは大変ですし、そこに居続けるのも簡単なことではありません。そして、またグラウンドスラムで勝ちたいです。

――試合をすることが楽しいから、情熱を維持できているのでしょうか?

 もっとも楽しいのは試合ですね。なぜ子供の頃からテニスを続けてきたかというと、試合中に自分一人ですべてを考え、対戦相手に勝とうとする、その部分が好きだからです。

 センターコートに立つことが大好きなんです。そこに至るまでには、皆さんの目に触れないカーテンの陰で、自分は努力をしています。センターコートは自分のやってきたことの結果を見せられる場所、だから大好きです。

小さなことが違いを生むことは分かっている

今季は全仏で優勝。経験を積んだ今、小さなことの積み重ねが重要だと語る 【写真:ロイター/アフロ】

――会見の場で「キャリアはまだ半分くらい」とおっしゃっていましたが、この10年で最高の瞬間と、一番辛かった瞬間はいつですか?

 一番辛かったのは、21歳というテニス選手としてはまだ若いときに、肩の手術をしたことです。その時点ではプロとして復帰できるのかも分からなかったですし、1年近く試合を休業するというのは辛かったです。一番うれしい瞬間は、これから来ると信じています。

――女子は若手世代が台頭してきていますが、ライバル動向は気になりますか?

 男子、女子を含めてほかの選手の試合は見ます。自分は若いころからプロとしてスタートして、今ちょうどキャリアの半分くらいに来たと思います。ですから、どんどん下の世代が出てくるのは当然だと思います。

――今、ご自身が考える課題はありますか?

 プロの高いレベルになると、大きなことを改善するというより、小さなことの積み重ねが重要だと思います。27歳の自分は試合の経験もたくさんありますし、知識もあります。小さなことが違いを生むことは分かっています。

――トップのプロ選手として活躍するかたわら、モデル業やプロデュース業もされています。テニス以外の仕事はいい意味で気分転換になっているのでしょうか? どのようにバランスを取られていますか?

 この「シュガポワ」もそうですが、自分が知らないことを学び、多くの方からいろいろなことを教えてもらいながらモノをゼロから形にしていく経験、商品開発に関わるクリエイティブなプロセスというのはとても楽しかったです。
 ただ試合が終わってホテルでゆったりするだけでなく、ツアーの間に自分がいろいろなことをクリエイティブにできていることがすごく楽しいです。

――引退された後のことを考えることはありますか?

 健康でいられる限り、引退は先のことだと信じています。それでも、けががあったときは「もしかしたらこのままテニスができなくなるかも」と思うことがなかったわけではありません。実際、いつくらいに辞めるか、辞めざるを得ないかを考えることも、もちろんあります。

 テニス選手として世界中を回ってきましたが、いつも試合や他の用事があるため、なかなかその街を見ることができません。今はテニスのために犠牲にしていることがたくさんありますので、引退した後はゆっくり世界を旅して、その街を体験することができたらと思います。
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