橋口師とワンアンドオンリー父子2代の夢=菊花賞は“世界”への通過点に

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ダービー当日に身に付けていたネクタイ

橋口師自ら「伝説」とかたる2005年有馬記念のハーツクライ 【netkeiba.com】

 念願のダービー制覇を、自身が管理していたハーツクライの子供で成し遂げた橋口調教師。その二重の喜びは、ダービー当日に身に付けていたネクタイにも伺える。

「ハーツクライは世界に連れて行ってもらった馬で、一生忘れられない存在です。そのハーツが、有馬記念を勝った時にしていたネクタイなんですよ。フランスに行って凱旋門賞を見た時に、GI用にと勝ったもので、その後ドバイでも付けてそれも勝ったし、イギリスでも着けていい競馬をしてくれました。その後何回か着けたんですけどあんまりご利益がなくて、ちょっとやめていたんです。でも今回はハーツの仔だから、一緒に応援しようっていう気持ちで締めて行きました」

 ハーツクライが勝った有馬記念――と同時に、ディープインパクトが負けた有馬記念という印象が強い。その後の活躍を知れば、ディープを負かすことも十分に納得だけれど、当時はディープインパクトの勝利を確信していた人が多かったはずだ。

「僕自身も、勝ってびっくりしました。わずかに頭にあったのは、ジャパンCレコードという速いタイムで走って、負けはしたけれど、そんなに差はないのかもしれないという気持ち。もしかしたら、付け入るスキはチラッとはあるのかもしれないと。ただ、あの馬を負かすのは至難の業だと思っていました。勝った時は、ボーっとしてましたね。周りもシーンとしていて、声も出なかったです。あれはもうずっと伝説になるレース、ディープを語る上で必ずうちのハーツが出て来ますよね」

 種牡馬になってからは、ディープインパクト産駒の活躍が圧倒的だったけれど、ジャスタウェイを筆頭に、今年の春はハーツクライ産駒が席巻した。オークス、ダービー、安田記念と3週連続でGIを勝ち、種牡馬としての実力を見せつけたのである。今後ワンアンドオンリーは、常にその偉大な父と比較されることになるだろう。

「ハーツに似てますけど、体はハーツの方がひと回り大きかったですね。でも、今の時点での完成度はワンアンドオンリーの方が上です。なんといってもダービーを勝ったわけですから。3歳の頃のハーツは、まだ素質だけで頑張っていた感じでした」

一緒に世界へ行けたら、僕の競馬人生は最高の締め括り

ワンアンドオンリーとともに再び世界へ――そのためにも菊花賞では結果を出したい 【netkeiba.com】

 世界で活躍したハーツクライと比較しても、現段階での完成度は上というワンアンドオンリー。次なる目標である菊花賞では、ダービー馬としての結果が求められている。

「神戸新聞杯は厳しいレースでしたけど、レース後も舐めるようにキレイに食べて、食欲が落ちないですし、変わりないですよ。本当にタフな馬ですよね。追い切りも順調にこなしていて、今は何の不安もないです。今回の舞台は、マイナスにはならないと思いますよ。道中掛かる面もないだろうし、マイナスになるところは見当たらないです。マイナスを言ってと言われても、思い浮かばないんですよ。
 あの馬自身、体調に関しては問題がないので、あとは伏兵くらいしかないですね。まぁ未知の距離ですから、終わってみて、やっぱりこの馬の仔かっていうこともあるでしょう。例えばダンスインザダークの仔とかね。うちのザッツザプレンティがネオユニヴァースを負かした時がそうでしたから。そういう存在が怖いです」

 今回の菊花賞は、大きな夢への通過点になって欲しいという。大きな夢とは、父ハーツクライと共に戦った世界の舞台だ。

「まだ菊花賞が終わらないと何とも言えないですけど、そういうプランは持ってます。しかし、みんなが認めてくれるような成績でないと、実現は出来ないです。夢は持ってますから、そのためにもここはクリアしていかないとね」

 そう前置きしながらも、ハーツクライと共に参戦したイギリスでの想い出を話してくれた。

「レース後にパドックに帰って来た時に、拍手をもらったんです。いい競馬をしたなって称えてもらって。それで、『ようし来年も来よう』って思ったら、故障でリタイアしてしまって、本当に残念でした。次は子供でと思っていましたけど、自分自身の引退も近いですし、もう半ば諦めかけていたんですよ。そうしたらワンアンドオンリーの出現でしょう。もしもまた一緒に世界へ行けたら、僕の競馬人生は最高の締め括りですね」

 夢を口に出すということは、大人になればなるほど勇気が必要なのではないだろうか。長年夢を公言し続けて来た橋口調教師が、見事に掴んだダービートレーナーの称号。次なる目標――ワンアンドオンリーと共に世界へ挑むためには、まず目の前にある菊花賞をクリアすることが求められている。(了、文中敬称略)

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