鋼の王朝に挑む“運命”のロイヤルズ 1勝1敗で舞台は敵地サンフランシスコへ

杉浦大介

強力3枚クローザーを擁するロイヤルズ

ライトスタンド後方にサンフランシスコ湾を望むAT&Tパーク。第3戦からはここがワールドシリーズの舞台となる(写真は2012年のワールドシリーズ) 【写真:ロイター/アフロ】

 06年以降、ア・リーグのチームはナ・リーグの本拠地で開催されたワールドシリーズ戦で通算7勝15敗。特にジャイアンツが絶対の自信を持つAT&Tパークでは、10年のレンジャーズ、12年のタイガースは合計4連敗を喫している。アウェーの3連戦で勝ち越すどころか、最低1勝を挙げてカンザスに戻って来ることすらもロイヤルズにとってそれほど簡単ではないはずだ。

 ただ……こうやって一部のライターに訳知り顔で低評価されることも、ロイヤルズにとっては望むところなのかもしれない。アスレチックス、エンゼルス、オリオールズと、今年のプレーオフではどのチームとの対戦でも、大方のメディアから形勢不利と指摘されてきた。そんな逆風の中でも、日替わりヒーローと、何より強力ブルペンの活躍で前に進んできた。

「先発投手は6回までリードを守るか、同点で抑えてくれれば、仕事を果たしたことになる。第2戦でもまだ同点だった6回の時点で、次の得点を挙げたチームが勝者になると確信していたよ」

 ロイヤルズのネッド・ヨスト監督の言葉からは、ケルビン・ヘレラ(Kelvin Herrera)、ウェード・デービス(Wade Davis)、グレグ・ホランド(Greg Holland)の“HDH”を中心とするブルペンへの絶対の自信が透けて見える。

 リーグ優勝決定シリーズではオリオールズ打線を被打率1割7分2厘に抑えた“HDH”は、第2戦でも6回表1アウト以降にジャイアンツを12打数1安打6三振に封じて零封。100マイル(約160キロ)前後の速球を連投する3枚クローザーの攻略はさすがのジャイアンツにも難しく、今後も6回までの戦いがポイントとなるはずだ。

勝負を決するサンフランシスコへ

 特にDH制なしでより守備的になる第3〜5戦は、これまで以上にロースコアでのせめぎ合いが濃厚。今季のワールドシリーズは、そして2014年のMLBは、ここでついにクライマックスを迎えることになるのだろう。

「敵地でやることはもう慣れているし、そのへんはハンディにならない」

 自信に満ちた青木の言葉通り、ロイヤルズは“運命のチーム”らしいたくましさをアウェーでもう一度発揮できるか。それとも、一時代を築き上げるジャイアンツが鋼の強さを再びアピールするのか。

 決戦の地はサンフランシスコ―――。終盤イニングにはジャーニーの“ドント・ストップ・ビリービング(信じることをやめるな)”が大音量で流れるAT&Tパークは、ワールドシリーズ開催にふさわしい美しいスタジアムである。ここでの3試合が終わるころには、王朝か、運命か、どちらを信じるべきかがはっきりと見えてきているに違いない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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