ビジョンが見えないオランダ代表に危機 早くも予選2敗目でユーロ出場に暗雲漂う

中田徹

ヒディンクのアイデアは「時代遅れ」

就任後1勝3敗。後任候補がささやかれるなど、ヒディンク監督は早くもがけっぷちに立たされている。 【Getty Images】

 アイスランド戦の後半、オランダはクラース・ヤン・フンテラールとファン・ペルシを前線に置いてゴールを奪いに行こうとしたものの、それをプレーで表現しきれなかった。

 守備固めに入ったアイスランドは、数少ないカウンターの機会でしっかりオランダを攻め崩そうとした。アイスランドはコンディション、戦術・戦略、メンタルでオランダを凌駕し、テクニックも決して悪くなかった。彼らはまさに一つのチームだった。

 アイスランドの人口はわずか32万。オランダ人からすれば、4番目の都市ユトレヒトほどの大きさの国だけにショックは大きい。オランイェ(オランダ代表の愛称)・サポーターズクラブは、一番活躍した選手を投票で選んでいるが、アイスランド戦後、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは、ベンチに座っていたサブキーパー、ケネト・フェルメールだった。そんな皮肉な行為をしたくなるほど、オランダ代表はさえず、迷走していた。就任2カ月目で、ヒディンクは早くも危機を迎えているのだ。

 イギリスの放送局『スカイスポーツ』で解説者を務めたロナルド・デ・ブールは、「予選はあと7試合もあるし、11月にはチェコとアイスランドが勝ち点をつぶし合う。オランダはまだ大丈夫」と分析しながらも、「今のオランダにはガイドがいない。アイスランド戦のヒディンクからはプランが見えてこなかった。ヒディンクは選手たちにどうするか示せなかった。例えば(ストライカーの)ファン・ペルシをMFがいかにサポートするかといったことだ。ヒディンクに対するプレッシャーはとてつもなく大きくなった。彼はもう67歳。私の目からすると、彼のアイデアはもう時代遅れ」と厳しく批判した。

後任候補はフランク・デ・ブール?

 10月15日付けの全国紙『アルヘメーン・ダッハブラット』は、ヒディンクの更迭を促している。大見出しは「我々のアドバイス、それは『ヒディンク、辞めろ』」、小見出しに「オランイェは道を踏み外した」「フットボールのビジョンが見えない」「ユーロが危うい」と箇条書きで批判の理由を記している。

 フェイエノールトのロナルド・クーマンがオランダ代表監督に立候補したのは今から1年前だが、KNVB(オランダサッカー協会)はヒディンクに信頼を置いた。今、クーマンはサウサンプトンで素晴らしい仕事をしている。

「クーマンを監督にしておけば」とオランダメディアに悔やんだロナルド・デ・ブールは、「コーチのブリントを昇格させて、若い指導者に託すべき」と言う。しかし、『アルヘメーン・ダッハブラット』は「ブリントではあまりに心もとない」とバッサリ。「候補はアムステルダムにいる。それはアヤックスのフランク・デ・ブールだ」と推す。

 11月、オランダはメキシコと親善試合、ラトビアとユーロ予選を戦うが、このときまでヒディンクは監督に居続けることができるのだろうか。KNVBのプロサッカー・ディレクターを務めるファン・オーストフェーンは今週、もしくは来週、ヒディンク監督、ダニー・ブリントコーチと話し合いを行う。

2/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント